真夜中にそっと寄り添う、音質を底上げしてくれる相棒——RMEが生んだ小さな名機

  • 2025年4月29日
  • Gizmodo Japan

真夜中にそっと寄り添う、音質を底上げしてくれる相棒——RMEが生んだ小さな名機
Source : Synthax Japan

夜がふけるにつれて、音はその輪郭をゆっくりと露わにする。

気がつけば部屋の空気はすっかりひんやりとしていて、入れたばかりのはずのコーヒーもいつの間にか冷めきっている。デスクの上ではRME Babyface Pro FSが、青と銀のアルミ筐体を静かな光で満たしている。その姿はどこかクールで、孤独の気配すら漂わせているようだ。

ドイツのオーディオメーカー「RME」が手がけた名機の一つだが、実際にプロの現場で目にする機会は思ったよりずっと多い。僕自身は普段、据え置き型の「ADI-2/4 Pro SE」を愛用している。

Photo : Kazumi Oda

一方でBabyfaceシリーズはいわば持ち運べる洒落た相棒として、多くの人から密かに支持されている。今回、いまさらながらその評判を確かめたくなり、試しに借りてみたのだった。

音の入り口と出口、その狭間にある繊細な魔法

少しだけ基本をおさらいしておこう。

オーディオ・インターフェイス(以下オーディオIF)は、マイクやギターといったアナログ音源の信号をデジタルに変換し、パソコンやスマホが扱えるようにする装置だ。同時に、パソコンの音源をアナログに戻してスピーカーやヘッドホンから出力することもできる。言ってみれば、録音や再生という音の旅路における入り口であり出口でもある。

外付けの高品質なオーディオIFを使うことで、内蔵サウンドカードでは到底表現しきれないほど繊細でリアルな音を実現できる。最近は宅録や配信で急激に普及したが、もともとプロの現場ではずっと昔から必需品だった。RMEはそうしたプロの要求に、高音質と抜群の安定性で応え続けている。

Image : Synthax Japan image : Synthax Japan

僕が普段ホームリスニングで使っているADI-2/4 Pro SEは据え置き型のモデルだが、Babyface Pro FSは小さくても、しっかりとプロ仕様のスペックを備えている。

photo : Kazumi Oda

108x181mm、約35mmという薄さに、重さは約0.68kg。これならデスクを占領することもない。それでいて、録音・再生性能は24bit/192kHzに対応し、ライン入力で120dB(A)、マイク入力でも117dB(A)の高いS/N比を誇る。これが意味するのは、ノイズが少なく、微細な音のニュアンスまで忠実に捉えられるということだ。

実際にアコースティックギターとボーカルを録音してみると、その微かな息遣いや弦の震えまで鮮明に伝わってくる。24bit/192kHz対応機種は、最近の機種ではけっして珍しい仕様ではない。しかしBabyfaceはそうした数値以上の「音の存在感」がある。

特にRME独自のクロック技術「SteadyClock FS」が働いているからか、定位がぶれず、澄んだサウンドが際立って耳に心地よい。

トップアーティストに支持される、小さな筐体の秘密

Babyface Pro FSが名機と称される理由は、単に高スペックというだけではない。

数多くの現場で積み重ねられてきた実績と信頼性があるからだ。ライブ会場やDJブースの暗がりで、控えめながら存在感を放つ青い筐体を見かけることは案外少なくない。

アナログ4イン4アウトに加えて、ADAT(光デジタル)接続を使えばさらに8イン8アウトを追加でき、合計で最大12イン12アウトという柔軟性も魅力的だ。PCの場合、電源アダプターなしでUSBバスパワー駆動が可能なので、ノートPCと組み合わせればどこでも即席の録音スタジオが完成する。

さらにヘッドフォンはTRSとミニジャックの2つの端子を備え、それぞれに専用のアンプが搭載されているため、どんなヘッドホンやイヤホンでも確実に鳴らし切ってくれる。その万能さゆえに、エレクトロ系のミュージシャンはもちろんのこと、宅録のミュージシャン、配信者、さらには放送局の現場でも愛用されている。

Image : Synthax Japan

ここまでプロ機材としてのポテンシャルを紹介してきたが、パーソナルリスニング用としての用途にも十分おすすめできる。

見た目こそ無骨だが、触れてみるとその操作感はとてもシンプルで直感的だ。RMEのドライバーは極めて安定性が高く、レイテンシーも極めて低いレベルに抑えられている。つまり音楽制作中のストレスを劇的に減らしてくれる。そういう「実際に使ってみて初めて気づく快適さ」こそが、この機材が名機である真の理由かもしれない。

誰にも教えたくない、小さな愉しみをめぐる冒険

実はBabyface Pro FSは、iPadやiPhoneでも使える。

本体の「SELECT」と「DIM」ボタンを同時押ししてクラスコンプライアントモードを有効にすれば、USBケーブルを接続するだけで、iPadやiPhoneといったモバイル端末でもハイエンドなオーディオIFとして動作する(※この場合、バスパワー駆動ができないので別途ACアダプター電源が必要)。

Photo : Kazumi Oda Photo : Kazumi Oda

DJアプリ「djay」やHerculesの小型DJコントローラーを組み合わせれば、iPhone+Babyface Pro FSだけでプロ顔負けのDJセットを構築できるわけだ。出先でパッとセッティングしても、音の解像度は高く、低域もブレずにしっかりした迫力が出る。ここまで手軽に良質なサウンドを得られる装備は、そうそうないと思う。

機材は小さいが音はあくまでもハイファイで、そのギャップが妙に気に入っている。自宅に卓上DJブースを作って、ドナルド・フェイゲンにでもなったつもりで選曲を楽しむ、なんて用途にも適していると思う。

Photo : Kazumi Oda

もちろんリスニング用のヘッドホンアンプとしても抜群の性能を発揮する。

細部までじっくり音を楽しむもよし、気分よくリズムに揺れるもよし。ジャンルを問わず満足度は極めて高い。僕自身、作業の合間に高品質な音で気軽にチェックできるのは実にありがたい。

気がつけば夜はさらに深まり、時計の針は日付をまたごうとしている。こんな夜はLoFi Hip hopでも流して、ゆっくりと身体を音に預けたくなる。

ざらついた音を最高のオーディオIFで再生するのは贅沢すぎるように思えるが、その不均衡さがかえって味わい深い。

窓の外では静かに雨が降りはじめ、Babyface Pro FSのエンクロージャーが淡く静かな光を放つ。どんな音でも最後まで忠実に再現する相棒がそこにあるのは、ひとつの贅沢かもしれない。

Source : Synthax Japan

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