電気自動車といえばテスラのようにケーブルで車載電池を充電する「BEV方式」が一般的ですが、それ以外の形の電気自動車があるのもご存知ですか?
オランダ・アムステルダムで開催されたモーターショー『IAMS 2025』で、Forze Hydrogen Racingが水素で発電する燃料電池レースカーを展示していたので詳しく話を聞いてきました。
展示されていたのは2018年に製作されたForze VIIIというモデルで、最高速度は時速210km、出力は通常時は141馬力、ブースト時は295馬力で、時速0-100km加速は4秒以下となっています。
通常、このような形のレースカーはエンジンをコックピットの後ろに載せていますが、Forze VIIIはその代わりに水素タンクと燃料電池を使って発電し、モーターを回すことで動きます。水素タンクは助手席にも追加で置いてあり、60分のレースに十分な量の水素が積めるようになっています。
電気以外に排出されるのは水と熱だけで、Forze VIIIは熱を使って水を蒸気化した上で、後輪前にある穴から排出します。
トヨタも水素で動くレースカーを開発していますが、トヨタが使っているのは水素をエンジン内に直接噴射する「水素エンジン車」となり、燃料電池とは異なります。水素エンジンはガソリン車と同じく、最終的にはエンジンを動かすことで車の動力としますが、燃料電池車は水素を使って発電した電気を使ってモーターを動かす、電気自動車となります。
Benelux Supercar Challengeに出場したForze VIIIはクラス唯一の非ガソリン車で、水素であることを理由にレース中の燃料補給を認められなかったにも関わらず、2019年のレースではクラス2位でフィニッシュし、そしてオランダのサーキットでは電動スポーツカーのラップ記録を持っています。
オランダ・デルフトに拠点を置くForze Hydrogen Racingは学生が運営しているチームで、毎年30人以上の学生がギャップイヤー(高等学校卒業から大学入学までの期間)を使ってレースカーの設計・開発に携わっています。
現在は9台目になるレースカーを開発中で、タンクを1つにまとめながらも水素貯蔵量、出力共に2倍にし、2輪駆動から4輪駆動にアップグレードする予定だとしています。
レースカーは8月ごろに完成する見込みとのことですが、このようなレースカーの戦績を通じて水素の可能性を証明し、将来的には一般車両にも搭載されるように活動していくと話してくれました。
水素の最大のネックとされているのは水素ステーションなどのインフラや水素価格ですが、トヨタが水素トラックの導入を進めるなど、機運はあります。BEV車への完全移行を諦める自動車メーカーや国が増える中、今後の発展に期待がかかります。
Photo: Kohei K
Source: Forze Hydrogen Racing
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