『すずめの戸締まり』のミミズみたいな…感じ…?
中高生時代に受けた性教育では、異性間の性交後、精子は女性の生殖器内を泳いで、子宮を通過して卵管に入り、卵巣から放出された卵子と受精すると習いました。オタマジャクシのように泳ぐ精子の群れの映像を見せられた記憶があるような、ないような。
しかし、精子はただのんびり泳いでいるわけではなく、回転するコルク抜きのような体液の渦に乗って、女性の生殖器官内を猛スピードで進んでいるのだとか。
モナシュ大学とメルボルン大学の研究チームは、高度な画像処理技術を用いて、泳ぐ精子周辺の3次元流体運動を分析しました。科学誌『Cell Reports Physical Science』に掲載された研究論文によると、泳いでいる1個の精子が作り出す複数のらせん状の渦が精子に付着し、同期して回転することで精子の推進力を高めているそうです。
今回の発見は、らせん状の流れが精子の運動にどんな影響を与えるかに新たな知見を与えるもので、生殖科学に大きく貢献する可能性があるといいます。
研究の共著者で、モナシュ大学機械航空宇宙工学科のReza Nosrati講師は、大学の声明で次のように述べています。
「泳いでいる精子のべん毛(しっぽ)は、むちのようにしなやかな動きで液体を渦状にかき混ぜ、生殖器内での推進力を高めます。この流れによって、生殖器内での推進力が最適化されている可能性があります。
とても興味深いのは、周りの液体の中にできた渦巻きのような流れが精子に付着し、同期して回転することで、さらに強い推進力を生み出していることです」
Image: Akbaridoust et al. 2025 / Cell Reports Physical Science上の画像でなんとなく想像できるとは思うのですが、このユニークな動きがよくわかんないと感じる人のために、Nosrati氏はこう説明しています。
「まっすぐな輪ゴムをひねってらせん状にして、さらにもう一度ひねってみましょう。
すると、『超らせん』という、ぎゅっと巻かれた複雑な形になります。精子の場合、この追加のねじれが流体中に現れ、それが精子の動きに沿って一緒に進むことで、より強い推進力を生み出すのです」
これでもよくわかんない場合は、下のGIF動画でなんとかほんのりとでもイメージしてもらえれば。
Image: Akbaridoust et al. 2025 / Cell Reports Physical ScienceNosrati氏の研究チームは、精子のべん毛の動きと、その周辺にできる3Dの流体構造の同時可視化に世界で初めて成功したと主張しています。
この推進の仕組みは、精子が回りの環境とどのように相互作用するかに影響を与える可能性があり、妊娠や不妊に関する研究にも大きな意味を持つかもしれないそうです。
さらに、こうした「小さなスイマー」の動きを観察する技術は、バクテリアなど他の微生物の動きや環境との関係を理解する手がかりにもなるとのことです
Nosrati氏は
「これらの可視化によって、流体力学と、精子や他の微生物がさまざまな流体を通り抜ける方法をよりよく理解できるようになります」
と説明しています。
結局のところ、懐妊に至るかどうかは、精子の泳ぐ力に左右されちゃうかもなんですね。世の中を上手に泳げない人間の精子でもちゃんと泳げるのでしょうか…。
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