クジラのおしっこって実は超大事。海全体に栄養を運んでた

  • 2025年3月24日
  • Gizmodo Japan

クジラのおしっこって実は超大事。海全体に栄養を運んでた
Image: Shutterstock

クジラは体もデカいけど、生態系へのインパクトはもっとデカい。

2010年にアメリカの2人の研究者が、クジラのフンによって深海から浅い沿岸地域へと極めて重要な量の窒素が再分配されていることを実証しました。

これだけでもすごい話なんですけど、新たな研究結果でクジラの尿も同じような役割を果たしていることがわかったんです。しかも、尿は海洋を水平に横断して栄養を運んでいるみたいなんですよ。クジラって、ただデカいだけじゃなくて、海洋生態系にめちゃくちゃ貢献してるんですね。

クジラの尿が沿岸に大量の栄養素を循環

研究者たちは、クジラが餌場となる寒冷な海域から繁殖期を過ごす暖かい海域へ移動する際に、数千トンもの栄養素を何千kmにもわたって運んでいることを発見しました。

栄養素の大部分は尿に含まれていますが、死んだ皮膚や死骸、胎盤までもが「クジラのベルトコンベア」と呼ばれるプロセスに貢献しているそうです。オープンアクセスの研究成果は、Nature Communicationsに掲載されています。

同研究の共同執筆者で、非営利団体クライメート・セントラルの海洋学者であるAndrew Pershing氏は、バーモント大学の声明の中で次のように述べています。

クジラはその大きさゆえに、ほかの動物ができないことをやってのけます。まさに異次元のスケールで生きているのです。

海洋に運ばれる外部からの栄養素は、川からではなく、回遊する動物によってもたらされています。これはとてもクールで、海洋生態系の考え方を覆すものです。私たちは通常、人間以外の動物が地球規模の影響を与えるとは考えませんが、クジラは本当にそれをやっているんです。

栄養素を運ぶクジラのベルトコンベア

クジラは哺乳類の中で最も長い回遊ルートを持っていて、その距離がまたとんでもないんです。たとえば、南半球のザトウクジラは南極からコスタリカまで8,000km以上、コククジラはロシアからバハ・カリフォルニアまで1万1200kmを移動しちゃうんです。

そして、セミクジラやコククジラ、ザトウクジラなどが繰り広げるこの壮大な移動パターンのおかげで、毎年約4,000トンの窒素と4万5000トンのバイオマスが、栄養不足の沿岸地域に再分配されているとのこと。

バーモント大学の生物学者で、この研究の共同執筆者であるJoe Roman氏はクジラによる栄養素の再分配について次のように説明しています。

これらの沿岸地域は、窒素が少ないことを示す澄んだ水が特徴的で、その多くはサンゴ生態系を有しています。窒素やほかの栄養素の移動は、植物プランクトンや微細藻類の成長にとって重要であり、サメやその他の魚類、多くの無脊椎動物の餌となります。

クジラが繁殖や出産のために移動する暖かい海域は、一般的に広大な餌場よりも狭いそうです。そのため、クジラの尿による栄養素の再分配は、「庭の堆肥を作るために落ち葉を集めるようなもの」とRoman氏は説明します。

たとえば、アラスカ湾からハワイへ回遊するザトウクジラは、ハワイ諸島ザトウクジラ国立海洋保護区において、ほかの物理的プロセスのほぼ2倍の栄養素を供給しているといいます。狭い場所に栄養がギュッと凝縮されている感じですね。

Image: A. Boersma / Roman et al. 2025 クジラのベルトコンベア

Roman氏はこの壮大な栄養循環についてこう述べています。

私たちはこれを『巨大なクジラのベルトコンベア』と呼んでいます。あるいは、広範囲でエサをとるクジラが、繁殖や出産では比較的狭い空間に集まることから、漏斗のようだとも言えます。特に生まれて間もない子クジラは、母クジラのように長距離を移動できるだけのエネルギーがありません。

なお、史上最大級の動物であるシロナガスクジラが再分配する栄養素については、その行動の多くの側面が謎すぎるため、この研究には含まれていません。つまり、世界中に運ばれる栄養素の実際の量は研究者が算出した数値よりもはるかに多い可能性が高いとのことです。

言うまでもありませんが、20世紀の無節操な捕鯨活動によって個体数が激減する以前には、さらに膨大な量の栄養素が再分配されていたはずです。

陸海空でつながる栄養循環システム

Roman氏は、地球の栄養素循環システムにおける動物の重要性について新たな視点を与えてくれます。

多くの人々は、二酸化炭素を吸収して酸素を放出する植物が地球の肺の役割を果たしていると考えています。一方、動物は栄養を移動させるうえで重要な役割を果たしています。海鳥はフンを介して窒素やリンを海から陸へ運び、島々の植物密度を高めます。動物は地球の循環システムを形成しており、クジラはその極端な例と言えるでしょう。

海、陸、空。つながっているんですね。バランスを崩さないようにしないと。

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