E Inkのメモ専用タブレットとして、ニッチながらも好評を博しているreMarkable 2。去年秋、そのアップグレード版となるreMarkable Paper Proが登場しました。米Gizmodoの手書き派、Jorge Jimenez記者がしばらく使ってレビューしてますので、以下どうぞ!
僕は上質な紙のノートが大好きです。メモを取ったり手紙を書いたりノートの隅に落書きしたり、といった感触がたまらなく好きなんです。そんな紙とペンの感触をデジタルに再現しようとしてもおもちゃっぽくなりがちですが、reMarkablePaper Pro(以下Paper Pro)は見事にやりとげています。
ただ、そのクオリティは素晴らしいんですが、お値段も張ります。この値段でいいと思う人が、どれくらいいるのかな?と思うくらいに。
reMarkable Paper Pro
これは何?:カラーE Inkの手書き特化タブレット。
価格:579ドル(約8万9000円)。
評価:★★★☆☆
好きなところ:素晴らしい書き心地、内蔵のライト、メモへのアクセス・共有が簡単。
好きじゃないところ:高すぎる、動作がすごく遅い。
Paper ProはreMarkable 2から半歩アップグレードしたものです。ディスプレイがちょっと大きく(10.3インチから11.8インチへ)、しかもカラーになり、ライトも付いて薄暗い場所で読みやすくなりました。
Paper ProはreMarkable 2より若干厚い5.1mmで、重量も120gちょい増えて525gです。それでも、画面が大きくなって1ページに収まる情報が増えたことはうれしいです。重さはケースを付けていても雑誌とかハードカバーの本と同じくらいで、その分安定感もあるし、そんなに気になりません。
reMarkable 2から最大のアップグレードはカラーディスプレイになったことで、コミックを読んだり、PDFにハイライトを入れられたりするのがすごく快適になりました。ただ、カラーで何か書くときの動作は白黒より若干遅く、最初は一瞬黒で表示され、その後選択した色になります。
Image: Adriano Contreras - Gizmodo USペンの種類はいろいろ選べますが、メモ取りや手書きのときは、僕はボールペンとシャープペンシルにしていました。どのペンのスタイルでも感触が少しずつ違い、たいていの人が自分にあったものを見つけられるようになってます。
僕はPaper Proを1カ月以上使ってみて、会議でメモを取ったり家でToDoリストを作ったり、Google Driveに入れていた電子書籍を何冊か読んだりしました。ぱっと取り上げて書きつけたりできるのが簡単すぎたので、レビューが終わってからもそばに置いて使ってます。
Paper Proで取ったメモは、簡単かつ直感的に整理できます。テキストをハイライトしたりペンで動かしたりサイズを変えたり、プリセットのテンプレートを使ったりするのも簡単です。僕はチェックリストのテンプレートをよく使っています。
Image: Adriano Contreras - Gizmodo US自分の文章の編集も簡単で、たとえば文字を大きくしたり動かしたりするには、ハイライトツールを押して編集したい言葉を囲むだけです。レビュー用端末にはスタイラスの頭に消しゴムが付いたMarker Plusが付いてきたんですが、これまた便利でした。
消しゴム付きの、Marker Plus。(Image: Adriano Contreras - Gizmodo US)手書きとタイプの文字(ソフトウェアキーボードまたは外付けキーボード「Type Folio」で入力)を簡単に混ぜられるのも良いです。PDFを読むときは、随時ハイライトしたり余白に書き込んだりできて、勉強会などで他の人に共有するときに活用できます。
PDFへの書き込みも直感的。(Image: Adriano Contreras - Gizmodo US)Paper Proでの手書きは、reMarkable 2のときと同じく、とにかく気持ち良いです。スタイラスの反応は早く、Marker Plusペンの使い心地も良いです。紙の上にペンを滑らせるのと同じような感覚で画面に書くことができ、今までのデバイスではなかなか実現できてないレベルです。他のタブレットやスマホにスタイラスで何か書くときは、自分の感覚をそれ用に調整しなきゃいけないのが普通ですが、Paper Proではその必要がまったくありませんでした。
Peper Proでは手書きメモをテキストに変換できるんですが、その精度は手書き文字のきれいさに大きく依存します。字がきれいに書けるほど高精度に変換できますが、うまく使える限りはすごく便利で、とくに他の人とメモを共有する場合はありがたいです。僕の文字の変換精度はだいたい50%くらいでしたが、編集部の字のきれいな同僚の場合90%くらい行ってました。だから問題は僕にあるわけで、Paper Pro自体は問題ないんです。
この手書きを変換すると…(Image: Adriano Contreras - Gizmodo US) このテキストに変換されました。(Image: Adriano Contreras - Gizmodo US)ひとつ便利な機能は、他のデバイスで作成したメモの共有です。スマホのreMarkableアプリで取ったメモを簡単に閲覧・編集できます。僕は手伝っていたチャリティイベントの在庫リストをPaper Proで作って、DiscordサーバーにPDFを送りました。ファイルはテキストメッセージやSlack、Threads、などなどのアプリでも送れます。欠点は、クラウドストレージサービスを使うには月3ドル(約450円)、年契約だと30ドル(約4500円)かかることです。
またPDFやEPUBファイルをPaper Proに入れるときはちょっと面倒で、まずファイルをreMarkableアプリかWebサイトからアップロードする必要があります。僕はKindleで持ってる本がまあまあたくさんあるので、同じ本のファイルを探すのはめんどくさく感じます。この問題はreMarkable 2のときと同じですが、もっと他社の電子書籍アプリにアクセスする手段があれば、と思います。
PDFやEPUBを読めるのは便利、だけどひと手間必要。(Image: Adriano Contreras - Gizmodo US)PDFなりEPUBなりで書籍ファイルを入れられれば、Paper Proは完全に普通の電子書籍リーダーとして使えます。調節可能なライトが付いて、暗い場所でも直射日光の下でも快適に読書できるのはうれしいですね。E Ink Galleryディスプレイは目に優しくて、僕は夜に読書するとき、Paper Proならスマホで読むときより最低20分は長く読んでいられました。
Paper Proの問題点は、すべてに時間がかかり過ぎることです。ノートの読み込みとか、単にページをめくるだけでも、想定よりも1秒、または2秒も長くかかります。プロセッサはreMarkable 2より早く、メモリも倍ですが、ページに何か書くこと以外の動きはもたついて感じます。
ただ、非力なプロセッサにもメリットがあって、それはバッテリー持ちがよくなることです。Paper Proの場合、1回充電してから次に充電が必要になるまで、僕の使い方では2週間近く持たせることができました。
たしかにPaper Proを使ってる間はエンジョイできたんですが、余計なものなしで手書きができる対価は高く、本体だけでも579ドル(約8万9000円)です。消しゴム内蔵のMarker Plusを追加すると、50ドル(約7,500円)プラスです。さらに229ドル(約3万5000円)のType Folioキーボードとかも加えるとしたら、総額850ドル(約13万円)以上になります。
僕みたいに手書きが汚い人はキーボードを使うのもいいですが、いっそデジタルタイプライターという手もあるかもしれません。その場合はPaper Proより、Freewrite Alphaみたいなものが良いんじゃないでしょうか。また、一番欲しいのがタブレット機能で、電子書籍や手書き機能は2番目だとしたら、iPad Miniのほうがお勧めです。もしくは、カラーE Inkでもっと小さいものなら、Amazon Kindle ColorSoftがベターかもしれません。
他のアプリも入れられない、Webも見られないのに579ドルというお値段は、なかなかです。Paper Proは、一般的なタブレットとして使われることを想定していません。本やメモを開くだけでもゆっくりした動作なので、これでもしBlueSkyアプリを開いたり、メールを読んだりしたらえらいことになります。でもPaper Proはまさに、余計な機能がないことこそが価値なので、クローズドなのは理解できます。
Paper Proよりシンプルでよければ、reMarkable 2で大丈夫です。画面はカラーじゃないしちょっと小さいですが、330ドル(約5万円)でペンも付いてます。
とはいえ僕自身にとっては、Paper Proの書き心地は本当に素晴らしくて、当面手放せそうにありません。今は毎日何か書く理由を見つけてしまい、スマホもそっちのけで、パソコンを何時間もにらみ続けることも少なくなっています。
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