ジェシー・アイゼンバーグの才覚。監督のタクトも冴えわたる『リアル・ペイン〜心の旅〜』

映画『ソーシャル・ネットワーク』でマーク・ザッカーバーグを演じたジェシー・アイゼンバーグが、監督・脚本・製作・主演を担当した新作で第97回アカデミー賞2部門（脚本賞・助演男優賞）にノミネート！

かつては兄弟のように育った、ユダヤ系アメリカ人の従兄弟同士のデヴィッドとベンジー。疎遠になっていた2人が久しぶりに再会を果たし、亡き祖母の故郷ポーランドの史跡ツアーに向かうところから物語は始まります。アイゼンバーグがポーランドを旅した時に、叔母の一家がホロコーストによって追放される前に暮らしていたという家を訪れた体験がインスピレーションとなったそうです。

神経質で真面目、なかなか人の輪に入れないデヴィッドと、ツアーの参加者たちを魅了しつつも時に苛立たせてしまうマイペースなベンジー。地味だけれど堅実な仕事に就き、妻子と幸せに暮らすデヴィッドと、安定した職に就かず、自由奔放に暮らすベンジー。とことん正反対の2人は、ぶつかり合いながらも共に家族の歴史をたどり、いまだに自分たちを定義づけている幼少期の絆を取り戻します。

傑作『僕らの世界が交わるまで』で発揮された監督の実力、ふたたび

監督デビュー作となった前作『僕らの世界が交わるまで』同様、自身が書いた脚本でメガフォンを執ったアイゼンバーグは、デヴィッド役として出演も果たしました。

実は当初、『メディア王 〜華麗なる一族〜』のローマン役でおなじみのキーラン・カルキンが演じたベンジーを演じるつもりだったそうですが、プロデューサーを務めたエマ・ストーンからデヴィッド役を勧められたのだとか。　

「ベンジーのように不安定なキャラクターを、キーランのように美しくのびのびと、エネルギッシュかつクレイジーに演じながら、（監督として）映画の現場も管理するのは無理があるとエマは感じたようです。彼女の考えは正解でした」（アイゼンバーグ）

アイゼンバーグが語るように、カルキンは本作のベンジー役でゴールデングローブ賞を含む数々の賞を受賞。アカデミー賞でも助演男優賞にノミネートされています。

「監督として、そして俳優として、キーランに恋をした」というアイゼンバーグは撮影を振り返って、

「彼はジェスチャーやセリフの言い回しで僕を驚かせたり、飛びかかってきたり、パンチを食らわせたり、刺すふりをしたりして、2人の従兄弟の間の愛憎関係を表現しました。僕の映画のためにすべてを捧げてくれて、毎日素晴らしい演技を見せてくれたんです」（アイゼンバーグ）

一方のカルキンは、初めて脚本を読んだ時に「声を出して笑った」といい、

「脚本にはすべてが詰まっていて、美しく書かれていました。この男のことは読んですぐにわかったし、僕はただ演じただけです」（カルキン）

と話しています。アイゼンバーグは本作でアカデミー賞の脚本賞にノミネートされました。

原題の“A Real Pain”には、“本当に困ったやつ”と“本当の痛み”という2つの意味があります。映画の冒頭、空港のベンチに座るベンジーの顔がアップで映し出され、“A Real Pain”とタイトルが表示されるのですが、ベンジーはデヴィッドにとって、時に“困ったやつ”なのです。その一方で、2人は自分たちのルーツの旅を通して、歴史的なトラウマや深い悲しみを見つめ、それぞれが抱く心の痛みにも向き合っていきます。

「登場人物は現代的な痛みに苦しんでいます。でも、2人とも歴史的なトラウマのツアーに参加している。だから僕は観客に、すべての痛みは妥当なのか、それとも痛みには尺度があるのか、考えるように求めていました」（アイゼンバーグ）

「祖先はもっとひどい目に遭っていたのに、どうして僕らはこんな風に自分を責めることができるのだろう？ 悲しみやトラウマを感じるのは、ただの自己満足ではないのか…。この映画は、僕たちがどのような痛みを“本当の痛み”と考えるのか、問いかけているんです」（アイゼンバーグ）

美しいポーランドの風景とショパンの名曲をバックに描かれる『リアル・ペイン〜心の旅』は全国で公開中。第97回アカデミー賞は3月2日（現地時間）に発表されます。

『リアル・ペイン〜心の旅〜』

原題：A REAL PAIN

監督・脚本：ジェシー・アイゼンバーグ『僕らが世界と交わるまで』

出演：ジェシー・アイゼンバーグ（『ソーシャル・ネットワーク』『ゾンビランド』）、キーラン・カルキン（「メディア王〜華麗なる一族〜』『スコット・ピルグリムVS.ザ・ワールド』）、ウィル・シャープ（「Giri/Haji」）、ジェニファー・グレイ（『ダーティ・ダンシング』『ある朝フェリスは突然に』）

配給：ウォルト・ディズニー・ジャパン　 ©2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.　

TOHOシネマズシャンテほか、全国公開中

Source : リアル・ペイン〜心の旅〜 | Searchlight Pictures Japan