OpenAIが先週発表した最新AIモデル「GPT-4o(フォー・オー)」。この最新モデルが可能にした話すChatGPTの一部音声が、俳優のスカーレット・ヨハンソンさんに酷似。本人からの抗議をうけ、OpenAIが声を取り下げ一部提供を停止しています。
GPT-4oは、マルチモーダルでより自然な会話ができるのが大きな魅力ですが、発表直後からその“声”自体にも注目が集まりました。そっくりだったからです、俳優のスカーレット・ヨハンソンさんに。
話すChatGPT「Voice Mode」は5つの声が準備されており、ヨハンソンさんにそっくりだと言われたのはその中の1つ、Skyというキャラ。
ヨハンソンさんといえば、映画『her/世界でひとつの彼女』の中でAIのサマンサを演じており、Skyの声を聞いたとたんにこの映画を連想した人は世界中でも少なくありませんでした。
しかし、Skyの声を聞いて1番びっくりしたのはヨハンソンさん本人。だって、OpenAIに自分の声を使わないように事前にお断りを入れていたんですから。
NPRによると、GPT-4o発表後、ヨハンソンさんの弁護代理人はこの件に関する声明を発表。いわく、OpenAIのトップであるサム・アルトマン氏から、昨年9月にChatGPT 4.0のシステムの声のオファーを受けていたのです。しかし、ヨハンソンさんは熟考の末、このオファーを断ることにしました。
そして今月、ヨハンソンさんはSkyの声をきいて大ショック…。
「リリースされたデモを聞いてショックを受けたと同時に腹立たしく、アルトマン氏が私にそっくりな声、近しい友人やメディアが聞き分けられないほどそっくりな声を追い求めていたことに不信感を持ちました」
さらに、声明ではGPT-4oの発表会の2日前に、アルトマン氏から再度お願いがあったこと、その話し合いをする前にシステムが公開されてしまったことも明らかにされています。
結果、ヨハンソンさんは弁護代理人を通じてOpenAIに抗議し、OpenAIはSkyを取り下げるに至りました。
あまりに「声がそっくりだ」と話題になったことが理由なのか、AIの声についてはOpenAIも声明をだしています。
いわく、業界大手のキャスティング&ディレクターのプロと一緒に、400を超える候補者から5つの声を選んだのだと。また、AIの声は故意に有名人の声を真似るべきではないと考えており、Skyの声はスカーレット・ヨハンソンの声真似ではなく別のプロの俳優であり、その俳優の自然な話し方であると。
この声明が出されたのは、ヨハンソンさんが声明を発表する前でした。
Skyの声を担当したのは、ヨハンソンさんのモノマネをしているわけではなく、たまたま声や話し方が似ている別の誰かさんです。つまり、誰かが故意に真似た声ではないというOpenAIの言い分は正しいことになります。
もし、オーディションでヨハンソンさんに似ている声の持ち主を探し、1番似ている人を選んだとしても、それは声真似ではありません。だって、選ばれた俳優Aさんの自然なそのままの声なんですから。
たとえ、過去に第一希望である本人にオファーして断られていても。アルトマン氏が、発表直前に「her」とSNSに意味深ポストしていても。
ヨハンソンさんは、OpenAIがどのようにSkyの声を作ったのか、そのプロセスを詳細まで提供するよう求めています。
「ディープフェイクと取っ組みあい、自分の特徴や仕事、アイデンティティを守らねばならない今の時代において、この問いは確実に明らかにされるべきものだと考えます」
SAG-AFTRA(映画俳優組合・米テレビ・ラジオ芸術家連盟)もこの件に関して声明を出しており、ただちに利用停止したOpenAIの姿勢は評価するとともに、声を挙げたヨハンソンさんを称賛し、彼女の言い分、権利を支持することを明らかにしています。
Source: NPR