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パナソニックのリファービッシュ事業本格参入で始まる「劇的な市場変化」

  • 2024年5月14日
  • GetNavi web

消費者と社会を巻き込んだ大きな渦となるかーーパナソニックは2024年4月10日からリファービッシュ事業「Panasonic Factory Refresh」をスタートさせている。

リファービッシュとは「整備・修復された」という意味で、出荷・販売されたのちに様々な事情でメーカーに戻ってきた製品を、整備して再び販売することを指す。近年拡大している市場だ。

 

「Panasonic Factory Refresh」の場合は、店頭展示品、初期不良品、Panasonic Store Plusの家電サブスクのアイテムが該当。リファービッシュ品自体の販売は2023年12月から始まっていたが、今回、Panasonic Factory Refreshという名称で本格的に事業としてスタートさせた形だ。

 

リファービッシュ品は消費者にとって、年式の浅い製品を安く買える直接的なメリットがある。しかし、実際に取材してみると、Panasonic Factory Refreshは小売店や家電販売店、地域・自治体を巻き込んだ大きな社会変化を起こす可能性があることがわかってきた。本稿では、Panasonic Factory Refresh(以下PFR)によって起こるメーカーの変化、さらには今後起きると予想される劇的な環境変化を掘り下げていこう。

 

消費者の選択肢が増える

PFRは検査済み再生品ということで、新品価格よりもお得に購入できる。例えば、2023年モデルのドラム式洗濯乾燥機「NA-LX113CL」の場合、新品価格は21万8790円だが、PFRで確認できた製品は17万5100円。約20%も安い。パナソニックによるとあくまで目安だが、この例同様に、20%程度安い価格設定になるという。

↑PFRのラインナップは2024年4月時点で8カテゴリ。2024年9月には電子レンジと炊飯器の追加を予定しており合計10カテゴリになる

 

このほかにも消費者にはメリットがある。環境負荷低減に貢献できる点だ。環境負荷低減を謳う製品は、近年多くのメーカーから登場しており、消費者もそうした製品を選ぶ傾向が高まっている。ただし、その多くは付加価値型製品に位置付けられる。環境負荷を低減した分が価格に上乗せされているケースが多い。一方、リファービッシュ品であれば、廃棄品を削減し、新品を製造する機会を減らせるので、資源の節約、CO2削減につながる。

 

また、新しい選択肢ができる点も魅力だ。特に大型家電の場合、長く使うからワンランク上の機種を買いたいが、新品価格では予算オーバーというケースはよくあるだろう。狙っている機種を購入できる選択肢が増えるのだ。PFRの場合、1年の延長保証が付くため、アフターケアの面も安心だ。

 

家電販売店での取り扱いは?大きな変化は中長期的にやってくる

リファービッシュ品は比較的新しいモデルを安く買えるため、家電販売店の新品販売の機会を損なう可能性がある。同じ型番で2割程度安ければ、たとえ展示品やサブスク終了品だとしても、興味を持つ消費者も多いだろう。

 

こうした軋轢を避ける意味もあり、パナソニックは現段階ではPFRがビジネスであることを強調していない。リファービッシュ品が特性上、上限数が限られること、それゆえ市場規模としては小さいこと、そして、サーキュラーエコノミーを確立するための施策であるとし、計画目標値は公開せずに投資段階であるとしている。

 

現時点でパナソニックのリファービッシュ品は、パナソニック直販サイトでしか購入できない。しかし、中長期的に家電販売店にも卸す可能性も選択肢としてあるだろう。その際は、小売店や家電販売店にもメリットが出てくるはずだ。

 

さらに長期的には家電販売店との「専売モデル」や「共同開発品」が出る可能性も考えられる

この項は筆者のあくまで予測だが、PFRの登場によってパナソニック×家電販売店の専売モデルが、長期的には登場する可能性があるのではないかと考えている。PFRによる軋轢回避という側面が強いが、それ以外にも理由がある。

 

近年、家電販売店はプライベートブランドに力を入れている。自社の販売データから導かれる最適な仕様の商品をパナソニックと共同で開発し、専売品として売り出せるなら、生産管理面でもマーケティング面でも効果が高い。新しいビジネスの共創が期待できるのだ。

 

ユーザーとの関係性が変わる

これまで家電メーカーは「売って終わり」でよかったが、現在は「売ってからが本当のスタート」の時代になっている。そのため、パナソニックではIoT機能を充実させて、購入後に機能をアップデートさせたり、各家庭の使用状況に合わせたお手入れの啓発や、メンテナンスサービスの提供で満足度を高めたり、延長保証期間を延ばしたりなど、買ったあとの体験価値創出に力を入れている。

新品販売ではこうした囲い込みのハードルが高くないが、中古品となると一気に難しくなる。メルカリに代表されるCtoCの市場に加えて、リユースビジネスが大きく拡大するなかで、PFRはこの課題を改善する可能性がある。メーカーがタッチポイントを作りにくい領域に楔を打つ事業として機能していくと、筆者は考えている。

 

地域の電器店のあり方が変わる

この項目は直接的にPFRに関わる部分は少ないが、次に挙げる⑥にも関係してくるので述べたい。パナソニックは早い段階からIoT家電に力を入れていたが、近年それが加速している。収集したデータを分析することで得られる知見をユーザーだけでなく、地域の販売店に還元できる可能性がある。

 

例えば、エアコンの稼働率データを提供することで繁忙期の対策を練れるといったものだ。修理ニーズなどをそこから読み取ることも不可能ではないだろう。還元されるデータが地域の電器店へもたらすメリットは大きい。

 

地域で修理・メンテナンス対応が循環するようになれば、電器店の重要性は増す。地域に密着した販売店との関係性を築いてきたパナソニックの資産が最大化するはずだ。

 

総合的な環境負荷低減にはまだ課題もある

リファービッシュ品は限りある資源を活用する点で効果的だが、課題もある。それが配送の問題だ。再生品とするためには、展示品などを一度整備工場に戻す必要がある。この配送費用や配送トラックから排出されるCO2も無視できない量になる。

 

そのため、整備する工場拠点を全国に分散させたり、地域で再生できたりする仕組みが必要となる。現状はパナソニックの品質基準に基づいて各工場で再生されているが、⑤のような状況が生まれていくことで、地域の中で循環させて、環境負荷をより少なくできる可能性がある。この点は今後の展開に期待だ。

 

【まとめ】

ここまでPFRで考えられる可能性を語ってきたが、言うは易し行うは難しだ。どれぐらいパナソニックがやれるかということだが、この点、筆者はポジティブに捉えている。というのも実績があるからだ。

 

実は約1年前、今回の前段となる発表が行われている。2023年4月10日に行われた「新たな「商売」の基準について」で、パナソニックはIoT家電保証サービスの拡充など、ユーザーとの長期的なリレーションを構築する戦略を明らかにした。

 

それから、この1年間でパナソニックは矢継ぎ早に様々な施策を拡充してきた。それには今回のPFRにつながる取り組みも多く含まれている。ヘアドライヤー ナノケアのリファービッシュ品の定額利用サービス開始(2023年6月)、ドラム式洗濯乾燥機と4K有機ELテレビのリファービッシュ品の販売開始(2023年12月)、「パナソニックストアプラス」で大型家電の販売開始(2023年12月)。特に自社ECでの大型家電販売では地域限定はあるが、IoTの接続サービスも行っている。

 

今回は関係する取引先も多いことから、自社主体で動ける領域は少なくなると予想されるが、2024年9月にはPFRのラインナップが拡充されることが発表されている(電子レンジ、炊飯器)。継続的に何らかの施策が実施されることが期待できるというわけだ。今後のパナソニックの動きに注目したい。

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