タミヤのRC(ラジオコントロール)モデルと言えば、本物を思わせる精巧な造りと心躍るルックス、そして圧倒的な走りで、多くのファンを惹き付けて止まない定番的存在。このタミヤRCが2024年に50周年を迎え、再びブームとなっています。今回は、これまでの歴史を振り返るアニバーサリーブック『タミヤRC50年間の全記録』(ワン・パブリッシング)の編集者である井澤利昭さんに話を聞きました。
―1974年の第一作目(M4シャーマン戦車)が発売以来、幾度もブームを巻き起こしている「タミヤRC」が50周年を迎えました。井澤さんご自身もタミヤのRCカーの大ファンだそうですね。
はい、僕がハマったきっかけは、ラジコン漫画です。『テレビマガジン』(講談社)で連載していた『ラジコン探偵団』を夢中になって読んでいました。その後『コロコロコミック』(小学館)で連載された『ラジコンボーイ』なども人気で、漫画からRCカーを好きになったという人は、40代後半から50代くらいを中心に結構多いと思います。
じつは、タミヤさんが参入する以前のRCカーって、見た目があまりカッコよくなかったんですよ。と言うのも、速く走らせることに重点を置いたものが多かったから。加えて、操作性もイマイチだった。
当時はエンジンで動くものが主流でしたし、繊細なコントロールを生むコントローラーも開発されていませんでした。タミヤ以前は、まだRCカーの型が出来上がっていなかった、と言ってもいいかもしれません。
そんななか、タミヤさんから世界初の電動RCカー「ポルシェターボRSR934レーシング」(以下、ポルシェ934)が登場したことで、RCカーの世界に大激震が走ったんです。タミヤさんはもともと模型メーカーなので、プラモデルのボディをそのまま使って開発された「ポルシェ934」は、それはもう、めちゃめちゃカッコよかったわけです。僕を含め当時の子どもたちは、一目で虜になりました。しかも、電池とモーターで走る電動モデルというのも画期的でした。いまで言うEVの先駆けですね(笑)。
当時からRCカーは1万5000円から3万円くらいする高価なものだったので、子どもにはなかなか手が出なかったのですが、ラジコン漫画に登場する主人公の愛車をモデルにしたRCカーが、タミヤさんから実際に発売されたんですよ。いまで言うメディアミックスってやつですが、価格が7800円くらいで。そうなると、お年玉とかお小遣いを貯めればなんとか手が届くので、コツコツお金を貯めてみんな買っていました。懐かしいですね。
―令和のいま、再びRCがブームだということですが、きっかけは何だったのでしょうか? また、ファン層に変化はありましたか?
まずコロナ禍のいわゆる巣篭もり需要にRCがうまくハマったのと、10年ほど前から登場している「復刻モデル」の存在が大きいですね。いま、ものすごく人気です。値段もほぼ昔のまま。かつてRCカーに夢中になっていた世代が、その懐かしさから購入しています。加えて、親になっている年代でもありますから、子どもと一緒にイベントに来る人も増えましたね。ここ数年で、確実に年齢層が広がりました。
速さを競ってレースを楽しむ人ももちろんいますが、純粋に自分のRCカーを走らせることを楽しんだり、懐かしのモデルを集めて昔の雰囲気を味わったりするライトなファン層も増えてきているのが、最近の特徴です。タミヤさんだけでなく、いろいろなメーカーからも復刻版が発売されていますし、RCモデルも時代に合わせて多様化しています。
―井澤さんを筆頭にRC世代が大感動すると話題のヒストリーブック『タミヤRC50年間の全記録』が発売となりました。編集者として、見どころを教えてください。
まずは、タイトル通りタミヤから発売された50年間のRCモデルをすべて紹介していますので、自分が好きだった時代のものとか、かつて遊んだモデルなどを見つけて楽しんでほしいですね。
それから、人気テレビ番組『タミヤRCカーグランプリ』(テレビ東京系列)に出演されていた滝博士こと滝文人さん、日髙のり子さん、前ちゃんこと前田靖幸さんが、スペシャルインタビューで当時の想い出を語ってくれています。こちらもファンの方にはたまらないのではないでしょうか。
さらに、僕も大ファンだった『ラジコン探偵団』の作者である、すがやみつる先生や、『ラジコンボーイ』の大林かおる先生のおめでとうイラストをはじめ、タミヤRCファンの著名人からのメッセージの数々も必見です。
―盛りだくさんの内容ですが、本の製作過程で大変だったことはありますか?
全部が全部、大変でした(苦笑)。50年間ですから、とにかく紹介するモデル数が膨大で、決められたページ数に収まりきらなくて。レイアウトを何度も描き直して、そのたびにコマが細かくなっていって……本当はすべて大きく見せたかったのですが、ターニングポイントになるようなモデル以外は、泣く泣く小さくせざるを得ませんでした。
そんな苦労の甲斐もあって、皆さんに楽しんでもらえる一冊になったと思います。これまでに25周年、30周年、40周年でアニバーサリーブックを出しているのですが、どうやらRC業界の方々にも重宝していただけているようなんですよ。そういう意味でも、「今回も完成して良かったですね」と、タミヤのご担当者さんと話していたところです。
―ファン層が少しずつ広がっているRCの世界ですが、今後はどのような展開を期待していますか?
RCカーは、小学生の男の子たちの間で人気に火が付き、大人へと広がりました。さらに当時の子どもたちが大人になり、今度はそのお子さん世代へと波及しています。最近のRCブーム再来で興味を持ったという方も多いので、男女問わず、より幅広い層に魅力が伝わっていくといいなと思っています。
RCモデルって、ちょっと難しいイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。基本は自分で組み立てたりカスタマイズしたりしたものを走らせるのですが、最近はすでに完成した状態で販売されているものもあります。僕からすると、組み立てる過程こそ楽しいからもったいない気もしますが、集合住宅にお住まいの方はボディに色を塗る場所がないといった話も聞くので、そういった方にはお勧めですね。ドライバーなどの工具がないご家庭もありますから。
まずは一度、完成したものを触って、遊んでもらいたいですね。大きめのショップだと、RCカーを走らせるサーキットがあったりするので、見て楽しんでもらうだけでもOK。僕みたいなRCマニアのおじさんが、お節介にいろいろ教えてくれたりもします(笑)。
タミヤの滝博士とは『次は100周年で』とお話してきましたが(笑)、今後さらにタミヤRCの輪が広がっていくことを願っています。
タミヤ監修『タミヤRC50年間の全記録』(ワン・パブリッシング)