ケーキをおともにホテルステイ、レモンケーキを全種類買う…マイペースに楽しむ“ゆるりひとり旅”のすすめ

  • 2025年4月12日
  • CREA WEB

 おづまりこさんの旅コミックエッセイ、第2弾『ゆるり 愛しのひとり旅』(文藝春秋)が2月に発売されました。

 おづさんは20代、30代は東京住まい。アラフォーで関西に移り住んでいます。本作では奈良や尾道、倉敷……ちょっと足を延ばして北海道へ。神戸では、もはやおづ流ひとり旅の真骨頂といえる「パンを買う旅」を。

 自由気ままで、おいしいものがいっぱい。一般的な旅のイメージにとらわれることなく、マイペースに楽しむ旅の醍醐味についてお話をうかがいました。(全2回の1回目。後篇を読む)


『ゆるり 愛しのひとり旅』。

目指すは「大変なことはしない」旅

――「ひとり旅」シリーズも2作目となりました。前作の反響を受けて意識したことはありますか?

「こういう旅もあったのか」みたいな感想がけっこうありましたね。「これぐらいの旅でいいんだよね」「こういう旅ならしてみたい」と言っていただけてうれしかったです。今回は範囲を広げて、札幌とかちょっと遠くに行ってみようという挑戦がありました。それでもスタイルは変わらず、これまで関西の近場でやってきたようなことをやりたいなと……「せっかく遠くに来たからもっとすごいことしてやろう」みたいなことは考えないように、自分の好きなもの、小さい楽しみを集めていこうと改めて意識しましたね。

――その姿勢こそがおづまりこさんらしさです。自分自身、いかにふつうの旅という概念にとらわれていたのかと思いました。

 私もかつてはそれにとらわれていたから、旅が苦手だと思っていたんですよね。「旅=大変」みたいな。よく考えたら、自分が大変だと思うことはしなくていいんですよ。

――ホテルの過ごし方も楽しいです。第1章(奈良)では、長年の憧れだった古民家カフェ「くるみの木」のケーキをテイクアウトしてホテルに持ち帰っていますが。


『ゆるり 愛しのひとり旅』より。

 旅先でケーキをテイクアウトするのはいつかやろうと思ってたんです。「くるみの木」は1日目は入れなかったので翌日の予約をして……ひとまずケーキは買って帰ろうと。それはその場で決めましたね。「ホテルで食べたらいいじゃん」って。コーヒーのドリップパックも買えば、ホテルで「くるみの木」ができるなと。でも、ホテルに帰ったら湯呑みしかなくて。湯呑みにむりやり入れたのもおもしろかったです。

――夜の「リラックスグッズ全部載せ」は最高ですね!

 最近やっと、ホテルでどう過ごすかまで考えられるようになってきました。「リラックスグッズ全部載せ」は横たわってるときめちゃくちゃおもしろいんですよ。もうリラックスする以外に何もできないし。「私、何してんだろ?」って感じで(笑)。家だとさすがにここまでやらないですよね。あと、私の旅はめちゃくちゃ歩くのですごく疲れるんですよ。2万歩とか歩いてる日もある。奈良は特に歩く旅になるとわかった時点で、ここで全部載せをやろうと決めたんです。


『ゆるり 愛しのひとり旅』より。

お気に入りのパジャマは必須

――お気に入りのパジャマを持っていかれるのも目からウロコでした。旅って荷物が少ない方がいいという思いこみがあったので。

 ホテルでは旅の疲れをとることが大事ですから。私は環境が変わると眠れない不安があるタイプなので、パジャマは必須ですね。目覚まし時計とかも持っていきますよ。

――「のんびりする旅」というコンセプトも「旅はアクティブでないと」みたいな思いこみを払拭してくれます。

 ホテルに帰って「リラックスグッズ全部載せ」をやるから、「夕食はコンビニでいいや」ってなるんです。


『ゆるり 愛しのひとり旅』より。

――気合いの入れ加減と抜き加減が参考になります。

 すべて全力だと疲れるので。ホテルでコンビニごはん食べるのってけっこう好きなんですよ。家でコンビニごはん食べるのとは違うんです。旅先だと、妙においしく感じたりして。

絶対に行きたい店を1軒だけ決める

――旅先で行くお店はどんなふうに決めているのでしょうか。

 そもそも、お店を調べるのが趣味なんですよね。旅に限らずふだんでも、「次にこの街に行ったら何食べようかな」と地域で検索してリストを作ってるんです。仕事がいそがしいとき、これでやる気を出してますね(笑)。

 そのときそのときで自分の食のブームがあるんです。たとえば豆花にハマったら豆花のお店を徹底的に調べるみたいな。最近では一時期クレープにハマって、行ける範囲のクレープのお店をめちゃくちゃ調べてました。

 旅のときは、地域でしばれるからやりやすいですよ。ホテルから近いお店とか。「ここに行くついでにここに行こう」とか、計画していくのも楽しいです。

――でも、ごはんには回数に限りがあるから悩ましいですよね

 1泊2日だと3回しか行けないですからね。いつも「絶対にここは行きたい」という店は1軒だけ決めるんです。「ここもあそこも」って決めすぎても全部行けるわけがないから。「ここ行きたかったのに開いてなかった、せっかく来たのに」みたいな気持ちにならないように。

――「このお店に行けてよかった」っていうプラスの気持ちだけが残る仕組みができてるんですね。すごい!

 あらかじめハードルを下げておくんです。奈良でいうと「かき氷を食べる」と決めていたけど、「できればここで食べたい」お店はチェックしても人気店だから入れないかもしれない。「ここじゃなくても食べられたらいいな」くらいの気持ちで。


『ゆるり 愛しのひとり旅』より。

――がっかりしないよう気持ちの保険をかけておくわけですね。

 ネット情報で開いてると思って行ったけど開いてないこともあったりするので、あらかじめお店を第3候補くらいまで調べていくといいですね。

次の旅の楽しみにつながるおみやげの“マイルール”

――そして、ここぞというときのおづさんの買いっぷりがたまりません。真剣さも高揚感も伝わってきます!

 食いしん坊ですね……私は(笑)。「この旅でこれを買う」をひとつ決めて、それは際限なく買っていいと許してるんです。尾道の「レモン」しばり、北海道の「六花亭」、神戸のパン。この3つは長年好きなので、高まりました。


『ゆるり 愛しのひとり旅』より。

――ひとつのものを集中して買うってぜいたくな感じがします。

 レモンケーキは見かけたら全種類買ってやろうと思ってて。でも、全部買ってもそんなにヤバいほどではなかったですよ(笑)。六花亭もすごくたくさん買ったのに、それほどお金を使ってない。帰ったら家のテーブルが六花亭で埋め尽くされておもしろかったです。このとき、ホントにお土産は六花亭しか買わなかったんです。札幌なんて買いたいお土産めちゃくちゃあるじゃないですか。でも、今回はあえて六花亭以外は買わない。それが「また来よう。次はスープカレーしばりかな」って……次の楽しみにつながるんです。

――そうやってしばりを設けると、網羅的に研究が深まりそうですね。

 それと記憶にすごく残ります。「このときは六花亭を思いきり買ったな」「尾道でレモンケーキを買いまくったな」とか……思い入れが強くなりますね。

旅のおかげでファッションの幅も広がった

――ちなみにひとり旅でおしゃれ着をおろすなんて憧れます。

 これは服を買う言い訳でもあるかな。旅先の土地でこの服を着ている自分を思い浮かべて……買っちゃう(笑)。自然と気分も上がるし、服そのものにいい旅の思い出が保存されるというメリットもあります。

――ファッションを旅のテーマとリンクさせるのも素敵ですね。

 神戸では朝イチはクロワッサンと決めていて。おしゃれなお店だったからきちんと感のあるファッションを意識しました。口紅もちゃんとつけてね。ちょっとコスプレっぽいんですけど、クロワッサンを食べてる自分を外から見るような感じで。


『ゆるり 愛しのひとり旅』より。

――相乗効果でクロワッサンもさらにおいしくなりそう!

 旅先ならではの楽しみですね。買ったはいいけどなかなか使う機会がなかった大きくてカラフルなイヤリングも、旅先だと思いきってつけられたり。ファッションはそんなに得意でもないんですけど、旅のおかげで広がってきたように思います。

おづまりこ

兵庫県生まれ。東京でルームシェア生活を数年した後、ひとり暮らしを始める。現在は関西在住。著書に「料理レシピ本大賞InJapan」コミック賞を受賞した『おひとりさまのあったか1ヶ月食費2万円生活』のほか、『おひとりさまのゆたかな年収200万生活』『わたしの1ヶ月1000円ごほうび』(以上、KADOKAWA)『ゆるりより道ひとり暮らし』『金曜日のほろよい1000円ふたりメシ』(以上、文藝春秋)がある。
X @mariskosan

文=粟生こずえ

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