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「居酒屋で一緒にアルバイトしてた」 坂東龍汰×髙橋里恩×清水尚弥 “幼馴染”の3人が俳優になる前と後

  • 2024年5月25日
  • CREA WEB


左から、清水尚弥さん、髙橋里恩さん、坂東龍汰さん。

 2017年のデビュー後、映画『春に散る』や舞台「う蝕」、ドラマ「RoOT / ルート」などの活躍が目覚ましい坂東龍汰(27)。

 映画『東京リベンジャーズ 2 血のハロウィン編-運命-』や『陰陽師 0』などの話題作に次々と出演し、その高い演技力で世界からも注目を集める髙橋里恩(26)。

 2007年の人気ドラマ「山田太郎ものがたり」の三男・三郎役で子役デビュー後、映画『告白』や『死んだ目をした少年』などに出演し唯一無二の存在感を放つ清水尚弥(29)。

 たしかな実力と才能を持つ若手俳優3人が、二ノ宮隆太郎監督の待望の最新作『若武者』に集結した。2024年5月25日(土)に公開される本作は、幼馴染の若者が“世直し”と称して街の人間たちの些細な違反や差別に対し、無軌道に牙を剥いていくストーリー。ふりかざす正義が徐々に“暴力”へと変化していくさまを3人は見事に演じきった。

 しかし取材になると一転、誰よりもムードメーカーな坂東を中心に、20代の若者らしい軽快な会話と冗談が飛び交う。今をときめく彼らが、演技論、私生活、お互いの性格分析――あらゆることを語り合う貴重な鼎談が実現した。


普段は明るい坂東さんが演じる、寡黙な役柄…「よう黙ってられてんなと」


©2023 “若武者” New Counter Films LLC. ALL RIGHTS RESERVED

――『若武者』を拝見して、幼馴染の渉(坂東龍汰)、英治(髙橋里恩)、光則(清水尚弥)の3人を演じたみなさんのお芝居を堪能しました。ご自分の役にどのようにアプローチしたのでしょうか?

坂東 脚本を読ませていただいたときは、「おお〜、こう来たか!」と驚きました。というのも、渉という役は僕とは正反対なんです。僕は基本的に明るいし、おしゃべり大好きだし、楽しいことに首を突っ込んでいくタイプの人間なので(笑)。

――渉は寡黙で、感情を押し殺し、自分の周りに完全にバリアを張り巡らせているように見えました。

坂東 はい。演じるにあたっては、自分と少しでもリンクする部分を見つけて、小さいタネを大きくしていくという作業をしました。

――リンクする部分とは?

坂東 具体的には言えないですが、僕も過去にいろいろな出来事がありました。それが今コンプレックスのように残っているものもあって。それと向き合い、直す作業をして、そこから、「なぜそれに蓋を閉じて、今まで我慢してきたんだろう?」と考え、同じように“我慢大会をしている渉”と向き合っていった部分はあると思います。

 あと、怒りのような負の感情を表にバーンと発散することが僕も苦手なので、感情を溜め込む部分は共感しました。

髙橋 撮影中、「よう黙ってられてんな」と思いましたよ(笑)。

坂東さんが事務所の社長に「褒められた理由」に一同驚き?


©2023 “若武者” New Counter Films LLC. ALL RIGHTS RESERVED

坂東 アハハハハ! (事務所の)社長にも言われた。試写が終わって「あなたはよく頑張った。よくあんな黙っていられた」と。「あ、そこなんだ⁉ 褒めポイントは!?」って思ったな(笑)。

清水 普段の坂東龍汰と渉を足して二で割れば(口数が)ちょうどいい(笑)。

 僕も光則と自分との共通項探しはしました。斜に構えるじゃないけど、物事を俯瞰して見る部分は、特に若いときは自分もあったように思うので。

坂東 そりゃあるよね。とんがりコーンの時期は。

清水 「大人なんて馬鹿だ」と思っていたから。でも今は「自分はなんて子供だったんだろう」と思う。そういうところから考えていって、最終的にはこの2人がありきでした。実際に3人でお芝居をしながら、2人に対して光則がどこにどういるべきかを考えました。


©2023 “若武者” New Counter Films LLC. ALL RIGHTS RESERVED

坂東 ポジショニングね。

清水 そう。だから3人で歩くだけのシーンでも面白かった。

髙橋 僕はニノさん(二ノ宮監督)と5年前に舞台でご一緒して、「いつか映画を撮ろうね」という話をしていました。実現しないかも、と思い始めたとき、『若武者』の話を聞いて。僕の人間性みたいなものを面白がってくれたのがニノさんだけだったので、それに応えたくて、自分と向き合うために中学校とか思い出の場所に出向いて昔の記憶に触れて、英治の台詞と自分の考えをどんどん混ぜていきました。


©2023 “若武者” New Counter Films LLC. ALL RIGHTS RESERVED

――脚本を読んで「英治は自分だ」と思いましたか?

髙橋 いや、思わなかったんですけど……。みんなは「これ(英治)は里恩だよ」って。

坂東 いやマジで里恩だよ。

髙橋 ……理屈っぽいところが、だろ(笑)?

坂東 そう(笑)。撮影中はだいぶそうじゃなくなっていたから、僕は「英治は理屈っぽかった頃の里恩でいいんじゃない?」と言ったくらい。

――お2人の付き合いはどれくらいになりますか?

坂東 そんなに頻繁に会うわけではないですが、知り合ってから7、8年ぐらいになります。昔、同じ居酒屋さんで一緒にアルバイトをしていたんですよ。

坂東さんが思わず「嘘こけ!」と言ってしまった英治の“二面性”とは


「僕の人間性みたいなものを面白がってくれたのがニノさんだけだったので、それに応えたくて」

髙橋 (劇中の)英治が働くシーンはそこで撮りました。

板東 あのシーンの英治はまんま里恩(笑)。バイト先で、僕に仕事を教えてくれていた里恩を思い出しました。

清水 あそこは英治の社会性が見えるシーンだった。

坂東 そうなんだよね。「嘘こけ!」みたいな。

清水 3人で一緒にいるときの英治とどっちが嘘なの? という見方もできる。

坂東 そういう二面性を表現する描写が3人ともあるね。

髙橋 光則はお母さんの前ではマザコンっぽくなるし、渉は父親と対峙するシーン。

坂東 一人称が2人の前では「俺」なのに、親父の前では「僕」になる。

清水 完成した映画を見て、一緒に撮っていないシーンで「おー!」となりました。自分の知らない2人の一面が映っていて。

3人のなかで、「“間”の魔術師」の称号を得たのは誰?


撮影中も他愛もない話で盛り上がる3人。

――清水さんは、坂東さんと髙橋さんと繋がりはありましたか?

清水 今回の『若武者』で初めましてでした。もちろん存在は知っていたけれど。

坂東 初めましての感じが全くなかった。不思議とスッと入ってきて。

清水 僕もなんの違和感もなかった。2人に受け入れてもらえてよかったです。

――幼馴染を演じるために、意識的に心を開いたのでしょうか?

坂東 それも全くないですね。

清水 僕も意識して開いたわけでもなく。

坂東 この『若武者』という脚本を読んだら自ずとこうなるよね、と思います。脚本が3人を繋げてくれました。

髙橋 光則のオーディションで、英治としていろんな人の相手役をやったとき、尚弥くんに一番「何も思わなかった」んです。他の人には「圧が強かった」「ちょっと不気味だった」「狂気を感じた」といった感想があったけど、尚弥くんだけ何も感じなくて。後日監督から「光則役が決まった」と電話が来たときに、すぐに「尚弥くんですか?」と聞いたらやっぱりそうだった。だからすぐに幼馴染になれたんじゃないかなと思います。


「2人に受け入れてもらえてよかったです」

――今回共演して、お互いのお芝居のどんなところに魅力を感じましたか?

髙橋 (清水を見ながら)不気味さ。

坂東 生々しい不気味さ。

髙橋 独特なテンポ。

坂東 “間”の魔術師。

清水 人並みじゃない?

髙橋 人並みじゃないんだよねぇ(笑)。

清水 ……それが受け入れてもらえるくらい、自然にアウトプットができていると思うと嬉しいです(笑)。

実力で運をつかんできた俳優3人の「演技論」


坂東さん、清水さん、髙橋さん。

坂東 でも清水くんは演技が自然すぎてさ、「体が動いてる」って指摘されていたよね。今もさ、話しながら体が動いてるでしょ? つまり、感じたことを本当に素直に表現する役者さんなんだよね。嘘をつかない、ナチュラルな人だなって。

髙橋 板東は寡黙な役だけど、その中で心の静かな動きも表現できていると思った。最初はずっとボケっとしていて、カカシが台詞を言ってるみたいだった。そういう役なので。でも父親の話題になったときの、クッ、という入り方がいい具合だった。「あ、入った!」とわかると、こっちも楽しくなれたし。

清水 坂東は今回、大体が受けの芝居だったよね。

坂東 基本的にこの2人と一緒にいる場面は全部受けでしたね。お芝居をしていると、「これやりたい、あれやりたい」といろいろ思いつく脳みそになっちゃってるから、今回は本当に苦しかったです。「落ち着け落ち着け」と自分に言い聞かせて……。思いついたら一応パッと監督の顔を見て、「……これいらないな」と判断する日々でした(笑)。


「これやりたい、あれやりたい」といろいろ思いつく脳みそになっちゃってるから、今回は本当に苦しかったです。

清水 本番を2回、3回繰り返すと、小さな振れ幅がどんどん大きくなって、みんなの芝居が変わったりするじゃない? 坂東はそういうのも全部ちゃんと受けて芝居を変えていくから、すごく上手だなと思った。

髙橋 確かに丁寧だった。

坂東 里恩の芝居は、台詞回しや口の動きが上品。現場ではあんまり感じなかったけど、試写で見たときに「聡明なヤクザだな」と(笑)。

清水 インテリヤクザ(笑)。

坂東 口でも絶対勝てないし、多分腕力でも英治には勝てない。

清水 ずっと球(台詞)を投げ続ける役で、(会話の)肩が強い。僕にはできないなと思いました。

坂東 唯一無二と言ったらいいんですかね。あの英治は里恩にしか絶対にできない。あれをやれと言われても絶対無理です。代わりがいない。


本番を2回、3回繰り返すと、小さな振れ幅がどんどん大きくなって、みんなの芝居が変わったりする。

――英治は「世直し」と称して、通りすがりの他人に因縁をつけて、理詰めで淀みなく攻撃していきます。あの言葉を投げ続けるお芝居は強烈でした。

髙橋 すごく楽しかったです。

坂東 めっちゃイキイキしてました。水を得た魚のように。

髙橋 この作品を撮れるのがまず嬉しかったから、毎日楽しかった。

坂東 だいぶ前から高い熱量でポッポポッポしていたよね。撮影が始まる2ヶ月前ぐらいにはもう、英治のあの大量の台詞が全部入ってた。

――英治がシーンのリズムを作る役割でしたね。

髙橋 監督にもそう言われていました。リズムだけじゃなく、台詞の抑揚や間、目や指の動きもいろいろ試すことができて、全部楽しめました。

坂東 確かに現場でもいろいろ細かく試していたし、画にそれが出ていた。あれだけ人物に寄ったショットを長回しでスクリーンに映されると、途中で飽きてしまうこともあるけれど、英治には一切飽きなかったな。

坂東龍汰(ばんどう・りょうた)

1997年、北海道出身。2017年デビュー。『フタリノセカイ』(飯塚花笑監督、22)で映画初主演を務め、第32回日本映画批評家大賞の新人男優賞(南俊子賞)を受賞。主な出演作に映画『春に散る』(瀬々敬久監督、23)、『バカ塗りの娘』(鶴岡慧子監督、23)、映画『一月の声に歓びを刻め』(三島有紀子監督、24)、舞台「三人姉妹はホントにモスクワに行きたがっているのか?」(岩松了作・演出)、「う蝕」(横山拓也・作、瀬戸山美咲・演出)などがある。現在、4月期ドラマ「366日」(CX)、「RoOT / ルート」(TX)に出演中。『君の忘れ方』(作道雄監督、25)の公開を控えている。


髙橋里恩(たかはし・りおん)

1997年、東京都出身。2016年デビュー。主な出演作に『恋い焦がれ歌え』(熊坂出監督、22)、『ファミリア familia』(成島出監督、23)、『映画 ネメシス ⻩金螺旋の謎』(入江悠監督、23)、『東京リベンジャーズ 2 血のハロウィン編-運命-』(英勉監督、23)、『誰が為に花は咲く』(藤原知之監督、24)、舞台「世界が消えないように」(タカイアキフミ作・演出)、ドラマ「家政夫のミタゾノ」(EX)などがある。『陰陽師 0』(佐藤嗣麻子監督)が公開中。


清水尚弥(しみず・なおや)

1995年、東京都出身。2015年『死んだ目をした少年』(加納隼監督)で主演を務める。主な出演作に『ソ満国 15歳の夏』(松島哲也監督、15)、『人狼 ゲーム プリズンブレイク』(綾部真弥監督、16)、『ある女工記』(児玉公広監督、16)、『ちはやふる-上の句-』(小泉徳宏監督、16)、舞台「惡の華」(加藤拓也演出、16)、「犇犇」(タカイアキフミ作・演出、21)、ドラマ『刑事7人』(EX)、『GARO -VERSUS ROAD』(TOKYO MX)などがある。主演を務めた短編映画『竹とタケノコ』(川上信也監督)が2024年春公開を控えている。

文=須永貴子
撮影=榎本麻美

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