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爽やかなフルーツと洋酒の芳醇な香りが物語を紡ぐ、京都「菓子屋のな」の和菓子

  • 2022年3月20日
  • ことりっぷ


季節を映し、目を楽しませてくれる上生菓子。京都に数多ある和菓子屋さんのなかで、注目を集める1軒が「菓子屋のな」です。洋菓子のように果物やお酒を使いながらも、見た目はれっきとした和菓子。お抹茶だけでなく、紅茶やコーヒー、お酒にも合うという新感覚のお菓子を味わってみませんか?
菓子屋のなは、京都駅からバスで約10分の堀川松原で下車、堀川通を横断し南へ2筋目を東へ入ったところ、万寿寺通と醒ヶ井通の交差点にあります。のれんがなければケーキショップのようにも見えそうな店構え。町のお菓子屋さんのように気軽に入れそうです。
店主の名主川千恵さんがご主人とお店をオープンしたのは、2020年5月のこと。京都の老舗和菓子店で10年以上働いていた名主川さんには、ある思いがありました。
「和菓子って季節感にあふれているのですが、どちらかというと色使いや形で時節を表すことが多いです。もちろん、秋の栗などのような季節の恵みを使うこともありますが、もっと旬を感じられる様々な素材が使えるのではと考えていました」。
そこで、注目したのはフルーツとお酒。その魅力を余すところなく味わえるのが、「アントニオとララ」です。
名主川さんがお菓子を作る際に、ときとしてヒントにもするという安野光雅さんの絵画。生前、安野さんは無人島に1冊だけ本を持っていくとしたら『即興詩人』(アンデルセン作、森鴎外訳)をあげていたそうです。アントニオは主人公、ララは盲目の少女です。
2人の生きていく姿を形にしたお菓子では、アントニオの人生の苦みを濃厚なキャラメルあんで、ララの情熱的な人生を甘酸っぱいトロピカルあんで表現しています。そして、添えられたハーブは、一服の清涼剤。
手亡豆や小豆といった和菓子の材料に、バターや干しブドウ、トロピカルフルーツが練り込まれており、さらにかすかな洋酒の風味がふわり。ペアで食べるからこそ味の対比も面白く、まるで高級なチョコトリュフを食べたような満足感があります。
通年販売の「アントニオとララ」の他にも、季節の品が並びます。この日は、早春のお菓子がそろい踏み。
梅の形をした「探梅」は、練り切りで作ったよく見る生菓子。でも、一口食べると、梅酒の芳しい香りが口いっぱいに広がります。見た目の梅の形と色、そして味のコンビネーションがあまりにも自然なので、昔からあったお菓子のように感じるほど。
また、うぐいすをイメージした「春告鳥」は、ミルクあんを3色の外郎(ういろう)で包み、苺をトッピング。あん、外郎、フルーツの食感の違いを楽しめます。
数々の新しいお菓子を創作しつつも、名主川さんが心にとめているのは、奇をてらわないこと。「もちろん、和菓子なので色粉を使って季節を表現します。でも、旬の素材は、そのもののおいしさと色が伝わるようにします」。
たとえば「余寒」は、なるとオレンジのあんを、一旦焼き芋にしたサツマイモをキャラメリゼしたもので包んだ逸品。はっさくに似た柑橘類の苦みと、焦げ感が少々ビターなサツマイモ、2つの食材の「苦み」が溶け合った大人のお菓子でした。
これからの春爛漫の季節には、苺大福ならぬ「苺さくら餅」も登場するそう。また、のなさんのお菓子は、フルーツの爽やかさで思いのほかペロッと食べられるので、和菓子があまり得意でない方にもおすすめです。
上生菓子というと敷居が高い印象がありますが、ケーキ屋さんに行くような感覚で訪れることのできる「菓子屋のな」、春の京旅の途中に立ち寄ってみませんか?

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