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キャンプの恵み

Vol.57 野外炊事と「始末」の文化

  • 2014年5月22日

日本では、食事をつくり、いただくということもキャンプの重要な要素です
日本では、食事をつくり、いただくということもキャンプの重要な要素です
アメリカでは、食事に活動としての価値はあまり認められていないようです
アメリカでは、食事に活動としての価値はあまり認められていないようです
 「キャンプ中の活動といえば何?」と聞くと、野外炊事をあげる人も多いのではないでしょうか。「キャンプといったらカレーでしょ!」という声も聞こえてきそうです。しかし、世界を見回すと、野外炊事を行うところは少数派です。私が訪ねた範囲では、海外で野外炊事場を備えたキャンプはほとんどありません。実際のキャンプの内容を聞いても、せいぜい申し訳程度にバーベキューがあるくらいで、ほとんどすべての食事は食堂でとることになっています。

 この違いは、「運営上の理由」で生じたということでしょう。準備の煩雑さや衛生面の課題など、野外炊事を排除する理由となるものはいくらでもあります。その上で、切り捨てた地域と、残した地域が生じた背景には、やはり「食事をつくる」「食べ物をいただく」ということに対する意識の違いがあるようにおもいます。

 この感覚はすでにかなり失われていますが、日本では米粒に神様が宿っていて、一粒も無駄にしてはいけないという考えがあります。だから食べ物を無駄なく使い切るということが大事にされてきました。朝ドラ『ごちそうさん』では、この考え(始末)がテーマのひとつになっていましたね。ある回では、もてあますほどの大量の鯛でさまざまな料理をつくって振る舞い、最後に、残ったアラでダシを取る様子が描かれていました。

 これを見ると「始末」は大変クリエイティブな営みだということが分かります。おまけにゴミも最小限に抑えられますから、環境負荷も小さい。まさにキャンプにうってつけの活動であるようにおもえます。これにメンバー間の協力という要素が加われば、かなり強力な活動ということになりそうです。

 日本のキャンプは北米の大きな影響を受けていますが、文化を反映して独自の発展を遂げてきました。そのよさを生かそうと思ったら、野外炊事において、「始末」を改めて意識してみることが大切かもしれない、そんなふうにおもいます。



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