カナダ・オンタリオとアメリカ、ふたつのキャンプ協会の年次大会に参加しました。今回は、そこで聞いたひとつの報告について書きたいとおもいます。それはナイジェリアのキャンプの話です。

キャンプを主導するマルクさん。ナイジェリアを住みやすい所にしたいという強い情熱を持つ、とても明るい青年です。
ナイジェリアは西アフリカの産油国ですが、貧困や政治腐敗、宗教対立など、さまざまな課題を抱えています。原油の輸出によって外貨獲得ができるのですから、きちんと社会が機能していれば、貧困の解消も可能なはずです。しかし、一部の人だけが潤い、そこに政治腐敗が生まれ、耕作地は放棄されたままとなり、貧困が解消されないという悪循環が生じています。
そんな中、草の根的にコミュニティを強くするための努力を続けている人たちもいます。ここで紹介されたキャンプを進めているファーザー・マルクもその一人です。キリスト教会の活動に参加する若者のグループとともにキャンプをつくり、キャンプを通じて市民が生活基盤を築いていくために必要な考え方、スキルを身につけさせようというのです。

現地で指導にあたったジョギーさんとグウェインさん。
そのキャンプづくりの支援のために実際にナイジェリアに足を運んだのが、ジョギーとグウェインという国際キャンプ連盟のメンバーです。キャンプに携わることになる若者にリーダートレーニングを提供し、ともに汗を流す。ユーモアたっぷりに行われる、二人の報告に大笑いしながら、涙が出てくるくらい心を動かされていました。
現代史の基本となる国民国家(Nation State)という区切り方は制度疲労が生じており、国家とそこに暮らす人との関係がずいぶんいびつだなと感じる場面が、世界中のあちこちで見受けられます。しかし、だからといってこの仕組みを否定することもできず、個人のレベルでは自らの生活にかかわるコミュニティを強くして、国家とのバランスを保つしかないのです。

キャンプのマスタープラン。中には農園もあり、費用捻出と職業訓練に活用されます。
このキャンプの取り組みは、まさにそのためのものです。コミュニティのメンバーをエンパワー(なんとかやりくりできる能力を身につけさせる)し、農業などの生活を支える基盤の大切さを確認するためのキャンプがナイジェリアという国の中に作られようとしています。
発表を聞きながら、現在の日本のキャンプはコミュニティを強くするこれほどの力を持ち得ているのかな?と自問しました。キャンプのさまざまな可能性を忘れず、改めて、このナイジェリアの取り組みから学ぶことができればとおもいます。