病気で亡くなった妻は不幸だったのか?「幸せにできなかった」と後悔する男をメンエス嬢が救う【作者に聞く】

  • 2024年10月22日
  • Walkerplus

メンズエステとは、マッサージを中心とした施術で心身の癒やしを提供する男性向けのお店のこと。「メンエス嬢加恋・職業は恋愛です」は、そんなメンズエステを舞台にした創作漫画。肌に触れるだけで人の心の奥底までも理解してしまうメンエス嬢の加恋が、店にやって来た“訳アリ”な客の心身を癒やしそっと背中を押してくれる人間ドラマだ。描くのは漫画家の蒼乃シュウさん(@pinokodoaonoshu)。

今回は、「孤独な男」。「僕みたいなおじさんがこんな所に来てマッサージを頼むなんて変だろう?」と、加恋に語る65歳の池尾仁志。施術のために肌に触れると、簡単にはほぐせない深い悲しみが伝わってきて…。

■「余計な心配をかけたくない」と話し合いを避けたところ、取り返しのつかないことに…
どことなく寂し気な池尾に、「よかったらあなた自身のことを聞かせてくれませんか?」と語りかける加恋。そこで戸惑いながらも、自身の半生や亡き妻への思いを話すことに。

まずは蒼乃シュウさんに、池尾のキャラクターをどのように作り上げたのか聞いてみた。

「年配の男性客も描いてみたくて。でも普通に『メンズエステに通うオジサン』だとストーリーが浮かばなかったので、『哀愁漂う老紳士』にしたところ、一気に話が進みました」

家族のために出世することこそが一番の幸せだと信じ、必死に働いてきた池尾。やがて本社への栄転が決まるが、妻からは「あなた一人で行って来てください」との返事が。さらに昇進すれば理解してくれるだろうと単身赴任したものの、激務の末にうつ病を発症。

「心配をさせてしまう」と離れて暮らす家族には言えずにいたが、ある日息子から電話で「お母さん、亡くなったよ」と告げられる。「余計な心配をさせたくない」とお互いに思い合った結果、取り返しがつかないほどすれ違ってしまった池尾夫妻。蒼乃シュウさん自身、話し合いは重要だと感じているのだろうか。

「親しい仲であれば、少しでもモヤモヤしたら即行話し合い、お互いスッキリさせるのが理想的だとは思います。でも、実際は難しいですね…。池尾のように『いつかわかってくれるはず』とごまかす場合が多いのではないでしょうか。あとはケンカになるのが嫌で、話し合いを避けることもよくあります。そのくせ、『どうしてわかってくれないんだろう』とイライラすることも…。私自身、いろいろと反省することも多いですね」

■病気で亡くなったからといって、幸せでないと決めつけることはできない
妻を幸せにできなかった贖罪から自分の喜びを放棄している池尾に対し、「女はそんなにか弱くない。あなたに幸せにしてもらわなくても、私は自分の力で幸せになります」と、亡き妻の気持ちを代弁する加恋。このセリフに込めた思いを教えてくれた。

「池尾は妻が亡くなったあと、『妻を幸せにできなかった』ということをずっと悔やんで生きてきました。でも、これはきっと思い込みに過ぎません。病気で亡くなったからといって『幸せではなかった』と決めつけることは、できないと思います。長生きだけが幸せだとは限らないし、池尾が知らないだけで妻は妻なりに、自分の人生をまっとうしたのでしょうから」

「世間一般でいう『男らしさ』『女らしさ』よりも、『自分らしさ』を求めることが幸せになる近道だと私は思っています。誰しも土台に『自分の力で幸せになる』という気持ちがあってこそ、相手を思いやる気持ちが生まれるのではないでしょうか」

加恋が妻の気持ちを代弁したことで、ようやく自分の幸せに目を向けることができた池尾。次はどんな訳アリ客が、加恋のもとにやって来るのだろうか。今後も楽しみにしてほしい。

取材・文=石川知京

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