「常識を疑ってもいいんだ」なんとなく哲学に興味を持ったきっかけに惹き込まれる…6万いいねのWEB漫画を電子書籍でリライトしたワケ【作者に訊く】

  • 2023年11月28日
  • Walkerplus

「なんじゃそりゃ…」哲学を専攻したはいいものの、何のとっかかりも見出せなかった大学時代。そんな時、ある教授の問答がものすごく印象に残って――。
WEB漫画「哲学がわけわかめだった私が何となく哲学を理解した話」は、漫画家のさく兵衛(@sakubetaro)さんが2020年にX(当時はTwitter)に投稿し、6万件以上のいいねを集めた作品だ。講義の内容よりも、教授と学生とのやり取りそのものにおぼろげながらも自分なりの哲学の輪郭が見えたエピソードに「ぐいぐい読んじゃいました」「素敵な話」と多くの反響を呼んだ同作が、2023年9月、作者のさく兵衛さんによるリメイクや後日談を含め、無料電子書籍「大学に行った私がなんとなく哲学に興味を持ったきっかけの話」として公開された。

さく兵衛さんは同作のほかにも、愛犬と飼い主の切なくも愛しい関係を描き7.8万件の「いいね」を集めた創作漫画「君は最高の相棒」など、SNSを中心に多くの話題作を発表してきた。そんなさく兵衛さんに、無料電子書籍として作品を公開するようになったきっかけや、電子の本として作り上げる上での思いを訊いた。

■(何故こんな執拗に質問を…)教授と学生の印象深い「問答」
哲学専攻の大学生だったさく兵衛さん。当初は何をしたらいいのか分かっていなかったというさく兵衛さんにとっての哲学の入り口になったのが、とある教授の講義だった。

その時の内容そのものはおぼろげながら、教授の「誰か意見はありますか?」という質問と、それに挙手した学生のやり取りははっきり覚えていた。

「そもそも努力ってすべきものなんでしょうか?」「しないよりはしたほうが良いと思いますが」……。

そんなやり取りを皮切りに、学生の回答にどんどんと質問を重ねていく教授。その光景を(何故こんな執拗に質問を…)とハラハラしながら傍聴していたさく兵衛さんだったが、ふと、教授は「質問の答えを求める」ではなく「問答そのもの」を目的にこのやり取りを続けようとしたのではと思い当たる。

「今持っている常識を疑わせようとしてたのかも…」と、その気付きをノートに留めたさく兵衛さん。これまでの人生で「常識」という言葉に翻弄されてきた経験を思い返し、「常識を疑ってもいいんだ」と思えたその講義が新鮮に映ったのだった。

■反響集めたSNS漫画を自主リメイク、電子書籍制作の舞台裏

どこまでも考え抜く学問である哲学への大きな誘いとなった体験を描いたエピソード。電子書籍版ではSNS公開時から前編をリメイクした上で、件の教授に「エピソードを漫画にしたらSNSで反響が集まった」ことを報告するため再会した後日談も掲載されている。

さく兵衛さんは、「大学に行った私がなんとなく哲学に興味を持ったきっかけの話」のほか、これまで発表した絵日記漫画を収録した「さく兵衛の絵日記マンガまとめ」をそれぞれAmazon Kindleインディーズで無料電子書籍として公開中。これまで自身のSNSを中心に作品を発表してきたさく兵衛さんに、電子書籍化の背景を取材した。

――さく兵衛さんが電子書籍を公開しようと思ったきっかけを教えてください。

【さく兵衛】自分がこれまで描いたものをまとめて見れる状態にしておこうと考えていた時に「Amazon Kindleインディーズ」という媒体の存在を知ったのがきっかけです。Amazon Kindleインディーズで公開すると読んでいただけると分配金がいただけると聞いたので、「試しにやってみたらどの位貰えるのかな」という興味本位ではじめてみました。

――さく兵衛さんはこれまでにもSNSなどで数多くの作品を発表されてきました。その中で書籍化に選んだ作品の選定理由はどんなものがありましたか?

【さく兵衛】「大学に行った私がなんとなく哲学に興味を持ったきっかけの話」は、初めてX(当時はTwitter)でバズった作品だったので、後日談を含めて一冊にまとめたいと思い選びました。絵日記漫画をまとめたのは、通勤通学中などの小さな隙間時間の暇つぶしに読んでいただけるくらいの軽い読み物としてちょうど良いかなと思ったからです。

――「大学に行った私がなんとなく哲学に興味を持ったきっかけの話」をリライトする際に力を入れた部分や、あらためて過去の作品を描き直した思いを教えてください。

【さく兵衛】あくまで自己満足ですが、2020年の作品は少し文字での説明が多い印象だったので、冗長にならないよう漫画らしい表現になるように描き直しました。あとは当時どうしてこの授業が印象に残ったのか、自分がどう感じたのかをもう少し深掘りして表現し直しました。

――また、「絵日記マンガまとめ」では収録作品を選ぶにあたって基準はありましたか?

【さく兵衛】単純に時系列順にまとめています。あとは単体でさくっと読める漫画を選んでいます。

――電子書籍を公開してみての反響や、書籍化の作業での気付きや苦労があれば教えてください。

【さく兵衛】昔SNSに載せたものだったので大した反応はないと思っていたのですが、多くの人が読んでくださってとてもありがたかったです。またPV数やダウンロード数が可視化されるのは良いモチベーションになりました。苦労といえば、SNSに掲載する時は本文の方にタイトルを載せていたのですが、電子書籍化する際は漫画部分のみ掲載する仕様なので個別のタイトルが読者からはわからないということに気付きました。なので、どこからどこまでが1作品なのかを明らかにするため一つ一つ作品ページの上にタイトルを書き加えるという作業が発生したのが、少し面倒でした。

――今後も電子書籍を継続的に制作していこうという思いはありますか?

【さく兵衛】エッセイの電子書籍はこれで一区切りにしようと思っています。ですが、創作の短編の読み切り等は引き続き制作して、電子書籍等で公開できればなと思っています。

取材協力:さく兵衛(@sakubetaro)

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