創作物の“登場人物”や“必殺技”の命名に困っている人…必読!巷で話題のクリエイター向け指南書の著者・秀島迅氏にインタビュー

  • 2023年11月9日
  • Walkerplus

小説やマンガ、ライトノベルなど、クリエイターに向けた指南書が注目を集め、さまざまな出版社から本が出版されている昨今。その中でもパイオニア的存在でスマッシュヒットを飛ばしているのが小説家・秀島迅氏である。シリーズ最新作となる『プロの小説家が教える クリエイターのための名付けの技法書』(日本文芸社)が11月に発売され「相変わらずわかりやすい!」「欲しかった1冊」など話題となっているのだが、そんな大注目の著者・秀島迅にインタビューを行なった。


■元々の職業はコピーライターでした

――まずは簡単に自己紹介をお願いします。

「小説家の秀島迅です。デビューは2018年の『さよなら、君のいない海』(KADOKAWA)で、それまでは広告代理店や外資系のIT企業で会社員をしていました。今は独立して小説のほかにコピーライターや映像制作など、いわゆるクリエイター業で生計を立てています。昨年から“クリエイターのための”シリーズを執筆していて、11月に発売された最新作『名付けの技法書』は4作目になります」

――“クリエイターのための”シリーズについて、軽く教えていただけませんか?

「“クリエイターのための”シリーズというのは、日本文芸社が発行しているクリエイターやクリエイター志望者向けの指南書であり参考書で、物語の作り方や構成の立て方、適切な言葉の選び方など、創作のポイントをテーマごとにまとめたものになります。本のカバーはどれも『カギ』がモチーフとなっているので、私は勝手に“カギシリーズ”と呼んでいます(笑)」」

――最新作のタイトルは『名付けの技法書』ということですが、どのような内容ですか?

「物語創作において必ず必要なのが登場人物です。そして、その登場人物には名前がないと物語は成立しません。名前は1度つけてしまうと変更が利かないし、簡単そうでいて奥が深く難しいものなんですよ。『名付けの技法書』はタイトルが示す通り、名付けに関するあらゆる場面を想定し、ポイントをまとめたものになります。物語の登場人物の名前だけではなく、物語に登場する施設名や団体名、必殺技の名前の付け方も紹介しています」

――必殺技の名前ですか(笑)。たしかに物語創作って登場人物の名前だけでなく、さまざまなものに命名する必要がありますよね。

「私は元々コピーライターなので、商品やサービスの特徴をとらえてコピーを作るのが得意なんです。ですから、小説家としてのテクニックだけではなく、コピーライターとしてのテクニックもふんだんに紹介しています。あと私自身、小説家を目指したのはいいものの、何年も苦汁を飲んでいた時期が長かったので、そのときに書き溜めておいた方法論も本書にまとめています。物語の名付けに困っている人は、ぜひ参考にしてもらいたいですね。というか、必ず参考になると思います」

――本書を執筆するうえで気を遣った点はありますか?

「私が創作においてかなり気を遣っているのが、時代の変化を自分の五感で感じ取ることです。コンプライアンスが厳しく多様性を認め合う時代において、ステレオタイプに名付けをしてしまうと、読者のクレームの対象になってしまいますからね。ひと昔前だったら「おもしろい」と言われていたのに、現代では「卑猥」「下品」「暴力的」などと価値観が一変することは多々あります。そういうテクニックも日頃から企業案件をこなしているコピーライターならではのスキルなんですが、これからはクリエイターにも絶対に必要となるスキルです。もちろんプロの作家であれば、校正者や編集者が言葉のチェックをしてくれるので必要ないとは思いますけどね」

――本書で一番苦労した点は?

「今作のカバーイラストは人気イラストレーターの456さんに描いていただいたんですけれど、最初の下描きは私がしたんです。本来、書籍のカバーはデザインからキャッチコピーまで出版社の領域なので、いくら著者と言えども触れられない部分なんですが、特別に許可していただけました。ただ、自分で言うのもなんですが、まったく絵心がないんです。それでも素敵なカバーイラストに456さんが仕上げて下さったので、プロの方は改めてすごいと思いましたね。これは私の苦労話というより、456さんの苦労話なんですけどね(笑)」

■個性的な名前を付ける人はクリエイターの素質あり!

――ちなみに、名付けで一番悩んだ経験はありますか?

「物語創作ではいつもそれなりに悩むけど、一番悩んだのは自分の子どもに付ける名前でしたね。この先、何十年と自分の付けた名前で子どもが生きていくことを考えると、責任は重大ですからね。命名ほどクリエイティブな作業はないし、そういう意味では子を持つ親はみんなクリエイターですよ。一時期、キラキラネームが話題になったことがありましたが、クリエイター視点に立つと個性的な名前というのは目を惹くし、そういう名前を自分の子どもにつける人は、クリエイターのなかでも特にクリエイティビティな人たちだと思いますね。正直、素質があると感じます」

――なるほど。『名付けの技法書』は、クリエイターの方でなくとも活用できるかもしれませんね。

「『この画数は縁起がいい』という紹介ページは一切ないですけど(笑)、周囲とは一線を画す命名のヒントになるかもしれませんね。あと、クリエイターではなくても、たとえばゲームのプレイヤー名とか、SNSのハンドルネームとか、名付けのタイミングって誰もがいろいろあると思うんです。そういうときにも名付けのヒントになり得るかもしれません」

――今作で4作目ということですが、シリーズがはじまったのは去年ですよね?執筆されるのは早いほうですか?

「書くのは早いほうだと思いますね。今作の執筆期間は大体1カ月くらいでしょうか。ただ、執筆というのは集中力が必要な作業ですから、時間帯や食べ物にはとことんこだわっています。執筆するのは絶対に早朝ですし、食事はカレーライスが多いです。朝のほうが集中できるし、カレーライスを食べるのも同じ理由です。どちらも科学的に証明されているらしいので、クリエイターのみなさんもぜひ試してください」

――本書のコラムで朝のゴールデンタイムに触れられていましたね。

「基本的には本書のテーマである名付けについて書いているのですが、コラムページは小説家としてのルーティンや、プライベートなことにも触れています。別に私と同じ行動をする必要はないと思いますが、気力や体力、集中力がないと創作活動ってできないんですよ。正直、机に向かいたくない日だってありますしね。でも、創作活動をするのが好きですし、誰かの創作物に触れるのも大好きなんです。私の本では、私の知り得る限りのテクニックをすべて紹介するので、ぜひとも参考にしてください。そして、ひとりでも多くのクリエイターが、今よりもっと楽しい作品を生み出してくれることを心より願っています。あと、もしよかったらX(旧:Twitter)もやっているのでフォローしてください」


取材・文/新波レイ


キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
Copyright (c) 2025 KADOKAWA. All Rights Reserved.