
2023年4月、東京六本木にとてつもなく大きなサウナ施設がオープンした。2015年に新宿にオープンし多くのサウナ好きを魅了してきた「テルマー湯 新宿」の姉妹店、「サウナ・スパ テルマー湯 西麻布」。西麻布の交差点沿いに位置し、六本木エリア最大級の温浴施設という立地に見合った特別感のある施設で、オープン前から話題をさらった。今回はサウナ女子向けに当施設の女性エリアを紹介しながら、初心者でもしっかり「サウナ・スパ テルマー湯 西麻布」を堪能できるような楽しみ方を案内する。
■エジプト・オリエンタルをイメージした非日常空間が楽しめるサウナ施設
まず圧倒されるのはその外観。目の前の道路を走る車や行き交う人に目を向けなければ、海外に来たような雰囲気さえ感じられる。入店前からワクワクしてくる。まだオープンして半年ということもあり、きれいで清潔感があるのもうれしい。そのうえちょっと高級感があるので、これから特別な時間が始まる空気に包まれる。
受付で、タオル、館内着とフィットネス利用が含まれる料金を支払う。フィットネスは受付と同じフロアにあるジムエリアのことで、筋トレマシンなど、けっこうガチで鍛えたい人が使うような本格的な器具がそろっている。インストラクターは不在だが、マシンを使ったことがある人や慣れている人にとっては、これを自由に使えるのはかなりポイントが高いはず。しかも、体を動かしたあとに、とっておきのサウナと風呂が待っているのだからたまらない。とはいえ、今回の目的はサウナなので、フィットネスは見学のみにとどめておく。それよりも「ヒーリングテラ」を利用したいので通常料金に900円をプラス。
■岩盤浴エリアの「ロウリューヒーリング」は初心者におすすめ!
「ヒーリングテラ」は岩盤浴エリアのことで、ここでは大きな一室「岩盤ヒーリング」に異なる薬石の岩盤が設置され、コンパクトながらさまざまな岩盤浴でじっくりと体の芯まで温めることができる。
しかし本当のお目当てはそこではなく「ロウリューヒーリング」、またの名を「サウンドロウリュ」。岩盤浴エリアにあり、岩盤浴着で入る場所だが、もはやこれはサウナ。見た目でもわかるように中央にサウナストーブが設置されていて、これは着衣で入るサウナと言っていい。「サウンドロウリュ」の名のとおり、30分に1回、サウンドが変わったところでストーブの上にある送風口から熱風が吹き出す。そう、これはまさにアウフグース!室内の温度が一気に上がり、汗がにじむ。
これは初心者にぴったり。通常の浴室にあるサウナの場合、裸で入るため熱風を直接肌に浴びることになるが、岩盤浴着を着ていると熱さが少しマイルドに感じられる。いきなりサウナでロウリュだの、アウフグースだのを体験するのはハードルが高いと感じている人のはじめの一歩にはちょうどいい。また、岩盤浴エリアは男女で利用できるので、例えばカップルで利用する場合でも一緒に体験できる。
そして、ここの岩盤浴のうれしいポイントがもうひとつ。岩盤浴エリアの入口にシャワーがあり、岩盤浴着も置かれていて、自由に着替えができる。一般的なスーパー銭湯の岩盤浴は岩盤浴着の追加は別料金だし、岩盤浴でかいた汗は浴室で流すことがほとんど。岩盤浴エリアで汗も流せて無料で着替えもできるなんて幸せすぎる。岩盤浴でしっかり汗をかいてさっぱり汗を流して、隣にある休憩エリアでひと息つくのもアリ。
■サウナエリアへ。まずはスチームサウナで体を温めよう
さて、いよいよサウナへ向かう。まずは脱衣所で館内着や岩盤浴着を脱いで浴室へ。タオルは脱衣所の棚にあり、こちらも自由に使える。浴室は壁画といい灯りの具合といい、都会の真ん中にいることを忘れてしまいそうなオリエンタルな雰囲気。
浴室には、体を洗う“ゴシゴシタオル”と歯ブラシが置かれているので自由に使える。ということで、体と髪を洗って浴槽へ。ボディソープやシャンプーなども設置されていて、まさに至れり尽くせり。男女ともに人工温泉と高濃度炭酸泉があるので好きなほうへ。軽く体を温めたら、まずはスチームサウナに入る。
こちらのスチームサウナは約55度の設定。サウナストーブが置かれていて、しっかりと温まることができる。室内には塩が置かれていて、これを体に塗って体が温まるのを静かに待つ。たまに塩を体に塗りながらゴシゴシこすっている人を見かけるが、これはおすすめしない。塩の粒で肌を傷つけてしまうことになるからだ。塩は肌の上にのせるように塗り、ゆっくりと溶けるのを待つ。ただただひたすら待って、汗をかいて塩が溶けて透明になったらサウナ室を出てシャワーで塩を流そう。
ちなみに、スチームサウナ室には椅子の背面にシャワーが設置されているが、これは塩を流すためではなく椅子を流すためのもの。自分が使う前に軽く流したり、使用したあとに自分の汗や塩を流したりするのに使う。みんなで使うものなので、次の人のためにきちんとしたいマナーだ。
シャワーで塩を流したら水風呂へ。ただ、初心者はここで水風呂はちょっときついかもしれないので、その場合はカランやシャワーで水もしくはなるべく温度を低めに調整したお湯を浴びてもいい。浴槽の前に椅子が並んでいるので、ここでしばし休憩。テルマー湯では外気浴はできないので、この椅子がととのい場となる。時間を気にするのではなく、自分の体調に合わせて行動するのが原則。スチームサウナでも塩が溶ける前でも、つらいと思ったらサウナを出ること。水風呂は無理しない、休憩は気がすむまで。これに限る。
■高温サウナではセルフロウリュを体験
そしていよいよ高温サウナへ。女性用高温サウナは80~85度で3段のひな壇状。入口のドアの横にサウナストーブがある。熱い空気は上にたまるので、初心者は下段を陣取るのが安心。下段でもストーブの目の前はやはり熱いので、自信がない初心者は下段のドア側に座るのがいいだろう。ちなみに、慣れている人でもいきなり上段に座るより1回目は中段、2回目は上段という具合に、少しずつ温度の高いほうへ移動していくのがおすすめ。
女性用高温サウナの一番の特徴が、セルフロウリュができること。サウナストーブの前にはアロマ水の入ったバケツが置かれている。このアロマ水をサウナストーブの上のサウナストーンにかけて蒸気を発生させ、サウナ室の温度を上げる。これを自分でできる施設は最近増えてはいるものの、まだまだ限られる。なので、セルフロウリュができるというのは特別感がある。とはいえ、初心者にとってはこれまたハードルが高い感じもする。ではどうするか。
まずは誰かが水をかけるのを待ってみる。意外と遠慮し合って誰も動かないということもあるが、誰かが水をかけたら、どのぐらい室内の温度が上がるのか、自分の座っている場所で座っていられるぐらいなのかどうかを体感しよう。ロウリュはあまり頻繁に行うものではない。サウナストーンの温度が下がってしまうからだ。施設によっては指定している場合もあるが、だいたい短くても10~15分以上間隔を空けて行うのが良しとされる。なので、一旦ロウリュを体験してみて大丈夫となったら、次にサウナ室に入ったときにセルフに挑戦してみよう。
セルフロウリュをするときのマナーとして、いきなり水をかけるのはNG。まずは、サウナ室にいる人たちに「(水)かけてもいいですか?」「ロウリュいいですか?」と声をかける。これは前に水をかけてからどのぐらい時間が経っているかわからないので、先にサウナ室内にいた人に伺う意味がある。さらに、サウナ室内の温度が上昇するので、それが苦手な人がいるかもしれないので確認の意味もある。苦手な人は座る位置を変えたり、退室したりすることもあるが、「NO」と言われるケースもあるかもしれない。
さらに自分で水をかけたのに、熱いからといってすぐに退出するのもあまりいい感じはしない。サウナでは無理は禁物だが、サウナ室の温度を上げるだけ上げて、本人がいなくなるというのは望ましくはない。そのためにもロウリュをいきなり自分でやらず、一旦、誰かが水をかけるのを体験してからがおすすめだ。
■いざ水風呂!バイブラで体感温度は低め
セルフロウリュをやってもやらなくても、とにかくサウナでしっかり温まったらいよいよ水風呂へ。ここで大切なのは、サウナでしっかり温まったかどうか。温まっていなければ、当然水風呂は冷たくて入れない。女性用浴室には水風呂はひとつ。17度ぐらいの設定だが、バイブラのおかげで体感はもう少し冷たく感じる。初心者には少し厳しいかもしれないので無理は禁物。サウナでかいた汗はシャワーでしっかり流し、水風呂に入ってみよう。
汗を流すのはかけ湯、かけ水でもいいが、個人的にはきちんと汗を流すならシャワーがおすすめ。それも水ではなくお湯。温かいシャワーなら全身の汗をきちんと流せるし、水風呂の前に体を冷やしすぎない。水風呂に入るときは足元から少しずつ水をかけてゆっくり入る。ただ、水風呂がダメという人は膝下あたりまで入って、そのままじっとしていることが多い。そうすると一番温まりにくい足先を集中して冷やすことになるので、それ以上深く入れない。サッと浸かってすぐ出るつもりで、できれば上半身まで入ってみよう。
水風呂は1回で入ろうと思わないこと。サウナに何度か入って本当に体が温まってきたら、少しずつ深く入れるようになるはず。1回の来店で3セットサウナを楽しむとしたら、1回目より2回目、2回目より3回目と、サウナ室にいる時間も水風呂に入る深さもチャレンジしてみるといい。また、今回がダメでも次回、さらにその次と体調や自分のペースで進めていこう。ということで、水風呂に入れない場合は水を浴びる。キンキンの水風呂の水が厳しい人はシャワーやカランでお湯を足すなどして調整。その後、体を拭いて椅子に座って休憩タイム。何とも言えない時間が訪れる。とにかく何も考えずボーッとする。この時間、この感覚をどうとらえるかは各々だが、ここがサウナの醍醐味ともいえるだろう。
サウナに入って水風呂、休憩までの流れがいわゆる1セット。最近では温浴施設などにもおすすめの入り方として掲示されていることが多いが、実際にやってみるとなかなか気持ちいいものだと実感できるはず。これをその日の体調や気分、時間的余裕などに合わせて3セットぐらい繰り返す。サウナ好きの人はそれ以上トライすることもあるが、それこそ無理は禁物。そしてこの流れのなかで絶対に守ってほしいのが水分補給。サウナで流れ出る汗の分、水分補給は重要。水やイオンウォーターなどでサウナに入る前と出たあと(休憩の前後)にしっかり補給しよう。ちなみに「サウナ・スパ テルマー湯 西麻布」ではドリンク類の持ち込みはNGだが、受付や脱衣所の自動販売機で購入することができるので、浴室に入る前に準備しておこう。
■エスニック料理のレストランやコワーキングスペースも併設
「サウナ・スパ テルマー湯 西麻布」には岩盤浴と同じフロアに飲み物が豊富にそろったカフェと無料休憩スペースがある。テレビ付きのリクライニングチェアでゆっくり過ごせるので、岩盤浴や入浴、サウナのあとにのんびりするのがおすすめ。ここで休んだあとに再度岩盤浴やサウナを楽しむのもOK。休憩スペースは女性専用エリアもあるので、女性のみでの利用時も安心だ。さらに、‟ヨギボー”で極限まで(?)リラックスできる「ヨギボースペース」や漫画コーナーが(2023年)10月から新設され、過ごし方の選択肢が増えてそのときの気分で選べるのもうれしい。
さらにコワーキングスペースもあるので、仕事があるときでも訪れやすい。施設利用は時間制限がなく、午前0時以降は深夜料金1900円がプラスで必要になるが、最大23時間滞在できる。なので、ここでしっかり仕事をして終わり次第、岩盤浴やサウナでリラックスするという夢のような利用の仕方もできる。
長時間滞在ならしっかり食事がしたくなる。そんなときは受付フロアにあるレストランへ。エスニック料理のレストランでフォーガーやバインミー、トムヤムクンヌードルなど本格的な料理が食べられる。
つまみメニューやデザートなどもあるので、いろいろな楽しみ方ができる。店ではアルコールも提供しているが、アルコールを飲んでサウナなどを利用するのはNG。アルコールはサウナ後の楽しみにしよう。
オリエンタルな雰囲気とさまざまな設備の充実、タオルも自由に使えてアメニティもそろっていて、手ぶらで利用ができて、館内にいる間は日常をすっかり忘れて過ごすことができる。女性用の浴室やサウナはシンプルだが、初心者でもわかりやすく利用しやすい。新しいということもあるが、この充実したラグジュアリーな空間はサウナ施設デビューにも安心でおすすめ。
ちなみに男性側はまったく違う造りになっていて、サウナは高温サウナ、スチームサウナにメディテーションサウナを加えた3つ、水風呂は水温が一桁、8度設定の“シングル”の水風呂と、深さ163センチの深水風呂の2つがある。サウナ好きの女性からは男女入れ替えデーを望む声も多いそうだが、今のところ予定はないそう。
非日常を全身で体感できる「サウナ・スパ テルマー湯 西麻布」。友達と一緒でも女性ひとりでも安心して利用できるので、サウナ施設は初めて、サウナ自体あまり経験がないという人でも楽しめるはず。使い方などわからないことはスタッフが丁寧に教えてくれるのもうれしい。なにより、西麻布という都会の真ん中で身も心もリラックスできるのは贅沢感も味わえる。ぜひ自分なりのサウナタイムを堪能してみよう。
取材・文/岡部礼子