出会うはずなかった自分と“同じ顔”の人…「1日だけ」の約束で入れ替わった2人が見た互いの人生と顛末!!【作者に聞く】

  • 2023年7月6日
  • Walkerplus

コロナ禍に一般企業を退職したことを機に、「ヤングジャンプ」の「1億円40漫画賞」に応募し、その作品が見事入賞した矢嶋こずみ(@kosmy8588)さん。現在は版面漫画やWebtoonの背景作画・仕上げを担当する仕事をしながら創作活動を続けている。

そんな矢嶋さんの作品「100年分の度胸試し」がネット上で“考えさせられる”と話題だ。100を超えるコメントがつき、「こんな世の中が来たら怖い」「命の使い道、我々は正しく選べているだろうか」「心が痛い…」などの感想が飛び交った。

描かれている世界は、近未来。再生医療技術の要でもある“ドナー法”が施工されて50年後の世界だ。医療は発達し、人類の平均寿命は100歳を超えていた。未成年者の医療費は完全無償化され、若者たちの中で危険な“儀式”が流行り、社会問題となっていた。その儀式とは、「度胸試し」――。

ドナー法のおかげで、即死でない限りは再生して死ぬことはないなか、“同じ痛みを分かち合い、仲間意識を高める儀式”として、10代を中心に「度胸試し」という名の“飛び降りゲーム”が流行していた。しかし、主人公のマリーは飛ばなかった。「この中でまだ飛んでないのマリーだけでしょ?」と責められ、「空気が読めない」「怖いから逃げている」と言われようとも決して飛ばなかった。

そんな時に、自分と全く同じ顔をした少女・フリージアと出会う。彼女はマリーのドナーとしてこの世に存在していた。2人は“1日だけ”の約束で入れ替わることに…!!

フリージアとしてドナー施設へ帰ったマリーだったが、フリージアの親友・ダリアに見抜かれ、翌朝裏切られて地下牢に閉じ込められる。さらにドナー提供の優先上位にも入れられ、今夜にでも呼び出しがかかる状況に!!その頃、マリーのフリをして学校へ行ったフリージアの目の前にも残酷な景色が広がっていた。“飛び降りゲーム”を強要され、非常階段の手すりの上に立たされたフリージアは、下をのぞき込み「マリーはこれを見せたかったのね」とつぶやく。そして「飛ばなかったマリーは正しい」と主張するのだが、カッとなった同級生に足首をつかまれてバランスを崩してしまい――。この作品について、作者の矢嶋こずみさんに話を伺った。

――「100年分の度胸試し」を描こうと思ったきっかけなどについて教えてください。

このお話はカズオ・イシグロ著書「わたしを離さないで」がモデルです。原作では徹底してドナー視点のお話が描かれていたのですが、読んだ時に「この世界に生きている人間たちはどんな気持ちなんだろう?」と思って描いたのが拙作になります。いわゆる二次創作的な傾向が強いので、賞などには出さずpixivで無料公開しました。世間では古典作品のオマージュやパロディ化した作品も商業として成立しているとはいえ、気にしながらpixivに投稿してみましたが、自分が当初懸念していたネガティブな意見は全くなく、原作に気付いてくださった方からも好意的な感想をお寄せいただき、安心したのを覚えています。

――「100年分の度胸試し」という作品に込めた思いとは?

悲しい結末で終わった原作に対し、前向きで希望が見出せるようなお話を目指しました。私の好きな言葉で「人が自分の為にした行いは死と共に消えるけど、他の人や世界の為にしたことは永遠に生き続ける」と言うのがあります。その想いがほんの少しでも伝わっていたらうれしいです。とは言え、あくまでも娯楽漫画ですので(笑)、難しいことは抜きにして1人でもお気に入りのキャラクターを見つけてもらえたらそれで良いかなと思います。

「生まれてきた意味」についてよく論じられるが、作品の最後で、彼女たちは「生まれてきたこと自体に意味なんてない」と言う。「生きて行く中で一人一人が作り上げるものだから」と。この作品を通して、生きていく意味と命の尊さを今一度考えてみたい。

取材協力:矢嶋こずみ(@kosmy8588)

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