異常なまでに人の物をなんでも欲しがり、自分だけが得することに執着するタイプの人、あなたの周りにもいませんか?
そんな「クレクレちゃん」と呼ばれる人の言動に巻き込まれて嫌な思いをした経験のある方は少なくないかと思いますが、SNSで話題になったぱん田ぱん太(@pandapantade)さんのマンガもそのひとつです。
大きな反響を呼んだ『欲しがるあの子を止められない とんでもないクレクレちゃんに絡まれた結果、 人生を深く考えた話』の主人公は、ぱん田ぱん太さんがこの話を聞いた友人・きよかさん。彼女はとんでもない「クレクレちゃん」の被害に遭遇し、その一部始終を語ってくれたのでした……。
『欲しがるあの子を止められない』あらすじ
きよかさんはネイリストを目指す義理の姪に施術してもらいました。完成したネイルの写真を軽い気持ちでSNSに投稿したところ、学生時代の同期・チコちゃんから「どこのサロン?」「友だち割引とかある?」「紹介して」とDMが届きます。
きよかさんがサロンではなく姪がやってくれたことを伝えると、今度は「私も練習台になってあげる」「いつ行ったらいい?」とぐいぐい来るチコちゃん。きよかさんが断ってもしつこく追撃してきたり、見知らぬインスタアカウントをきよかさんの姪だと思いこんでDMしたり、姪と直接連絡を取ろうとするなど大暴走…。
思い返すと、大学時代もチコちゃんは困った行動が多かったのでした。みんなでコンビニスイーツを食べていると、自分は買わないのに「一口だけちょうだい」とみんなにスイーツをねだったり、財布を忘れたと行っては少額を借りたまま返さなかったり、レストランで自分はサラダバーを注文しなかったのに友人の皿から勝手にサラダを食べたり…。きよかさんが相談したかつての友人たちからも、チコちゃんの驚くべき「クレクレ」エピソードが次々飛び出してきます。
チコちゃんから迷惑を被った友人たちは相談して、「本人に言っても話が通じないから夫に訴えよう」ということになりました。知り合いのつてをたどるとチコちゃんの夫と同じ会社に務める男性がいたので、これまでのトラブルについて話をしてもらうことにすると、その夫もチコちゃんの価値観に問題があると感じていたようで、夫も困惑したエピソードが次々と出てきたのでした。さらに話を聞いていくと、どうもチコちゃんの「クレクレ」の原因は、その家庭環境にあったようで……。
大反響を呼んだこのエピソードの作者、ぱん田ぱん太さんにお話を伺いました。
作者・ぱん田ぱん太さんインタビュー
──ご友人のきよかさんの『SNSにネイル写真をアップしたら最強にめんどくさいことになった』のエピソードをマンガにしようと思ったきっかけを教えて下さい。
ぱん田ぱん太さん:きよかちゃんから話を聞いているうちに、インスタでよく見かける「変な人が現れ、スカッと撃退」といったマンガではなく、もっと深く踏み込んだ内容の特別なマンガが描けるかもしれないと思ったことです。
──このエピソードはTwitter(現X)では2.5万リツイート、3.9万いいねもの反響がありましたが、この反響を見てどう思われましたか?
ぱん田ぱん太さん:リツイートやいいねの数は「共感」の数だと思いました。こんなにもたくさんの人がこのマンガに出てくる登場人物やエピソードを読んで、ポジティブでもネガティブでも、とにかく「自分にもこんな経験がある」「自分にはこの人の気持ちが分かる」などと共感を覚えてくれたのだと思います。
──ぱん田ぱん太さんはこのきよかさんの人間関係エピソードを中心に、ブログで多くのマンガを発表されていますが、描き始めたきっかけはなんでしたか?
ぱん田ぱん太さん:ドイツへ移住したことです。日本にいた時には体験出来なかった新鮮で面白い出来事を発信したいと思い、最初はプライベートのTwitterアカウントで時々呟くだけだったのですが、もっと詳細に面白く特別な方法で広く発信出来る方法は無いかと考えていた時、「絵日記ブログ」というものが存在することをたまたま知り、すぐに始めました。
──ブログではほぼ毎日記事を更新されていますが、今後描いてみたい作品やテーマがあれば教えて下さい。
ぱん田ぱん太さん:私自身が一児の母で、家庭環境や親の価値観が我が子の人格形成にどのような影響を与えるのか、どうしたら我が子が幸せに育ってくれるのか常に考えています。そのため、今後も「家族関係」が主なテーマとなるマンガが多くなると思います。
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トラブルメーカーを描いたマンガは、その問題人物が撃退されてスッキリ…という展開が多いですが、この『欲しがるあの子を止められない』では問題のチコちゃんも予想外の結末を迎えます。常軌を逸した行動の裏には、実は意外な理由が隠れている場合もあります。チコちゃんをめぐる物語は、さまざまな教訓を含んだ、考えさせられるエピソードです。
※作者コメントは2023年3月のインタビューを再構成したものです。
取材・文=レタスユキ