サイト内
ウェブ

「捕鯨」 詳細解説

読み:
ほげい
英名:
Whale Fishing

クジラ(鯨)は、世界中の海や一部の大河などに生息する、魚の形をした大きな哺乳類だ。クジラ目に属する水生生物のうち、体長5m以上の大きなものをクジラ、それより小さいものをイルカと呼ぶ。世界の海には、約80種類のクジラ類がいるといわれており、マッコウクジラのように歯が生えているハクジラ類と、シロナガスクジラやザトウクジラのように歯のないヒゲクジラ類がいる。前者は魚介類を、後者はプランクトンなどを主食としている。人間は世界各地でクジラを捕り、その肉を食べてきたほか、脂肪から油をつくったり、ひげや歯を工芸品として利用したりしてきた。このように、クジラを捕まえることを捕鯨という。

かつては多くの国が捕鯨を行っていたが、乱獲のためにシロナガスクジラやセミクジラなど大型の種類の生息数が減った。このため、1946年に国際捕鯨取締条約が締結され、日本も1951年に加盟した。同条約は、クジラ類の保存と適切な利用と、捕鯨産業の健全な育成を図るために、シロナガスクジラやザトウクジラなど13種類の大型クジラ類について、捕獲可能な数や時期などを規制している。また、同条約に基づき国際捕鯨委員会(IWC)が設立され、1) クジラ資源の保存と利用に関する規則の採択、2) クジラと捕鯨に関する調査研究の勧告、3) 各種分析―などの活動を行っている。IWCには、2010年4月時点で約88カ国が加盟している。

1970年代に入り、クジラをめぐる国際世論に大きな動きがあった。欧米諸国を中心とする反捕鯨運動の高まりを受けて、IWCはインド洋などでサンクチュアリー(保護区)を設定するなど、締約国の捕鯨活動を大幅に制限するようになった。また、1982年の年次会合では「商業捕鯨モラトリアム」が決定され、前記の13種類を商業目的で捕まえる「商業捕鯨」が禁止された。ただし、先住民が生きていくために必要な「生存捕鯨」は、モラトリアム下であっても行ってよいことになっている。

わが国の沿岸では古くから小型捕鯨業が営まれてきたが、現在はIWCの対象種ではないゴンドウクジラなどの捕獲のみが続けられている。また、クジラ類の保存と管理に必要な科学的なデータを収集するための「調査捕鯨」を毎年行っている。IWC加盟国には捕鯨に反対する国がいまだに多いが、ノルウェーのようにモラトリアムへの異議申し立てを行って商業捕鯨を続けている国もある。日本は、次の理由から商業捕鯨の再開を主張している。1) クジラ類はわが国にとって重要な食料資源であり、ほかの生物資源と同じように科学的なデータに基づいて持続的に利用すべき、2) 食習慣や食文化は地域ごとにおかれた環境によって歴史的に形づくられてきたものであり、相互理解を図るべき。

こうしたなか、捕鯨を行う国の船を襲撃するなど過激な手段で捕鯨反対を訴える集団が現れ、国際問題となっている。また、日本が調査で捕ったクジラの肉が市場で売られていることへの異論もあり、捕鯨をめぐる意見の対立は深刻化、複雑化している。

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。