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2025/06/06 09:50 ウェザーニュース
4月から6月上旬にかけて、道端やアスファルトの隙間などに直径3cmほどの淡いオレンジ色の花が咲いているのをしばしば見かけることがあります。
「ナガミヒナゲシ」といい、ポピーなどにも似て見た目は可愛らしい植物ですが、実は茎や葉に毒が含まれていて、自治体や専門家からは「素手では触らないように」と、注意が呼び掛けられているのです。
ナガミヒナゲシとはどのような植物なのかについて、日本花の会研究員の小山徹さんに解説して頂きました。
ナガミヒナゲシという和風の呼び名ですが、もともと日本に生育していた植物なのでしょうか。
「ナガミヒナゲシは原産地が地中海沿岸の、外来種です。生育地はヨーロッパ、北アフリカ、西アジア、オセアニア、南北アメリカに広がっています。移入元は不明ですが、国内には1960年頃に東京で確認され、現在ではほぼ全都道府県で確認されています」(小山さん)
「ケシ科ケシ属の植物で、和名は『長実雛芥子』と表記し、4枚の花弁(花びら)をもった淡赤色のやや小さな花を咲かせます。
ナガミヒナゲシの種は秋に発芽して、葉が地表に接して放射状に広がる『ロゼット状態』で越冬するものもあります。草丈は20〜60cmで、山地に近い畑地や牧草地、荒地や樹園地に加えて、都市部の路傍などでも見られるようになりました」(小山さん)
地域的にも環境的にも広範囲に分布しているのはなぜなのでしょうか。
「一説によると、ナガミヒナゲシの細長い果実の中には、ケシ粒大の小さな種が約1600粒も入っているからです。1個体に約100個の果実をつけるため、個体によっては15〜17万粒となります」(小山さん)
「繁殖力が非常に強いため、種子が拡散すると、土壌の性質に関係なく、コンクリートやアスファルト舗装された場所からでも生育して花を咲かせます。未熟な種子からでも発芽する場合があります。
ナガミヒナゲシが種子を付けるのがちょうど梅雨どきで、雨天の際に自動車のタイヤに付着したことが、急速に広まった原因のひとつといわれています」(小山さん)
ナガミヒナゲシには毒があると聞きました。
「ナガミヒナゲシの葉をちぎったり茎を折ったりしたときに出てくる乳液には、アルカロイド性の有害物質が含まれています。この乳液に素手で触ると、皮膚がかぶれたり腫(は)れたりする恐れがありますので、注意が必要です。
特に小さいお子さんなどが、つい触ってしまわないように注意しましょう。
ナガミヒナゲシは現在、国の駆除対象となる『特定外来生物』や『生態系被害防止外来種』には指定されていません。
しかし繁殖力の高さに加えて、根からは他の植物の育成を阻害するアレロパシーという物質が生成されますので、生態系などに悪影響を与える植物だといえるでしょう」(小山さん)
自宅の庭などでナガミヒナゲシを見つけたら、どう対処すればいいでしょうか。
「ご自身の管理地内で見つけた場合には、できる範囲で駆除するようお願いします。有毒物質に直接触れないよう、作業をする際には手袋や長袖など着用し、素肌が見えないようにしてください。
本来は花茎が伸長する前の冬が駆除の適時です。開花後に実ができてしまうと、除草時に種がこぼれ落ちて繁殖を広げてしまうことがあるからです。
開花後は花が終わり次第、根ごと摘み取るか、引き抜けなければ地上近くで刈り取るかして、種子の拡散を防いでください」(小山さん)
なお、ナガミヒナゲシは他のヒナゲシと同様、阿片の原料となるアルカロイドを全く含んでいないそうです。
道端などでナガミヒナゲシを見掛けたら、けっして触らず、眺めるだけに留めておきましょう。