2025/05/15 05:00 ウェザーニュース
5月になり、ところによっては夏日や真夏日が記録されるなど、夏の猛暑に備えておくことが必要な時季になりました。自発的に汗をかいて暑さに体を慣らす暑熱順化(しょねつじゅんか)が推奨されていますが、他にも熱中症予防のために忘れてはいけない対策があるようです。
近づく夏本番に備え、いまの時季こそ「エアコンの試運転に適している」という、ダイキン工業コーポレートコミュニケーション室広報グループの重政周之(しげまさ・ちかし)さんにその理由などを解説して頂きました。
夏の暑さが増す中、近年では夏を迎える前に暑さに慣れるための暑熱順化が推奨されるようになりました。
暑熱順化は、夏を健康的に過ごすための「体づくり」ですが、夏を過ごすための「環境づくり」に欠かせないのがエアコンです。そんなエアコンに不具合が無いかを確認するための試運転は、暑熱順化と同じように夏を迎える前の取り組みが大切ですが、実際に猛暑が訪れるまで、前のシーズンで使用を終えたままの状態になってしまいがちです。
「ダイキンが行った調査では、81.9%の人がエアコンを『夏を快適に過ごすために必要なもの』と考えていることが分かりました。夏を過ごすための環境づくりに必要だと思われていることが分かります。ところが『エアコンの試運転に取り組んだことがある人の割合』は46.4%にとどまっていました。
調査では、多くの人が夏にエアコンが欠かせないと考えている反面、56.7%は夏を迎える前の試運転など、エアコンの準備やお手入れを『面倒』と感じていることも分かりました。こうしたイメージが、エアコンの試運転の実施率に影響しているのかもしれません。
エアコンの試運転は面倒なイメージがあるかもしれませんが、やり方が分かれば難しくありません。安心して夏を迎えられるよう、暑熱順化に取り組むのと同じように、ぜひ夏本番を迎える前の試運転にも取り組んでいただけたらと思っています」(重政さん)
猛暑のなかでエアコンが不具合で使えないというのは"困った問題"どころか、命にかかわる可能性もあります。エアコンの不具合というのはどれほどの割合で生じているのでしょうか。
「以前に行った調査では、過去、夏場にエアコンを使えずに困った経験がある人は26.2%という結果でした。
エアコンには『設計上の標準使用期間』が設けられており、一般的には10年です。これを過ぎると、徐々に不具合が起きやすくなっていきます。
一方で、エアコンの平均使用期間は約13年と言われています。多くの方がエアコンを長く使ってくださっている実態の中、万一の不具合に備えることも大切です」(重政さん)
早めにエアコンの試運転が必要とのことですが、具体的にいつ頃が適当なのでしょうか。
「暑熱順化と同様に、まさにいま、5月が最適であるといえます。熱中症で緊急搬送される件数は、例年6月から9月に集中しています。
エアコンについての問い合わせや点検の依頼も6月頃から増え始め、7月と8月に集中します。
この2ヵ月間は依頼が5月の3倍にも達し、混雑によりエアコンの修理や取り付け工事をする人が一時的な人手不足に陥ることがあります。エアコンが必要な暑い時季なのに修理対応を待って頂くケースが増えてしまいます。
夏場のエアコンの不具合で、修理を依頼してから完了するまでに1週間以上待たされた経験のある人は、半数近い45.8%だったという調査結果もあります。
本格的な暑さが到来する前の6月前半までにはエアコンの試運転を行い、不具合が発生していたら早めに修理の手配などの対応を行うことをおすすめします」(重政さん)
エアコンの試運転はどのような手順で行えばいいのでしょうか。
「エアコンを動かす前に、まずフィルターが汚れていないか、室外機の周囲に物を置いていないか、電気プラグの周囲にほこりなどが溜まっていないかを確認してください。
エアコンが動かないと思ったら、リモコンの電池が切れていたり電源プラグがコンセントに差し込まれていなかったりしたことが原因だったことも少なくありません。
そのうえで、エアコンの設定温度を最低(16〜18℃)にして10分ほど運転し、冷たい風がきちんと出てくるか確かめます。続いて、30分ほど運転します。エアコンの室内機には熱交換器が入っており、使用しているうちに結露して、その水分が室外に捨てられる仕組みです。30分間の運転は、これが室内にもれていないかを確認するために必要な目安です。
異常を示すランプが点滅していないかも確認してください。運転中に聞きなれない音や振動、不快な臭いなどが発生していないかにも注意しましょう」(重政さん)
ランプの点滅や臭い、異音の発生にはさまざまな原因があるそうです。異常が確認できたらためらわず、販売店やメーカーの相談窓口に連絡しましょう。
エアコンの試運転に最適なタイミングや条件はありますか。
「天気予報で報じられる気温と照らし合わせると、試運転に適した日がわかります。
気温23〜25℃が『最適な時期』で、21〜22℃が『適した時期』といえます。20℃以下の日は冷房運転が作動しなかったりすぐに止まってしまったりするので、試運転には『不向き』です。
26℃以上になると熱中症が心配される室内環境になってしまう可能性もあるため、『急いで実施』してください」(重政さん)
夏本番はもちろん、エアコンの除湿運転が必要な梅雨どきの前にも気温の高い日はあります。熱中症対策のために暑熱順化と併せて、エアコンの試運転も早めに行っておきましょう。