ナイチンゲールダンス・ヤスのコラム連載！漫才における人(ニン)に“自分らしさ”の秘密があるのか？

神保町よしもと漫才劇場に所属し、「M-1グランプリ2023」では準決勝進出＆敗者復活戦3位という結果で注目を浴びたお笑いコンビ・ナイチンゲールダンスのヤスさん。“尖り芸人”と呼ばれた過去もあるが、その素顔は「真っすぐで熱い男」だ。そんな彼が日々感じたことを書き綴る連載「ヤスのコラム」。
■「自分らしさで困っているあなたへ」

ヤスです。

生きててなんか物足りない気がするとか、もっと上手くいく方法がある気がするって思うことあるじゃないですか。

もっとあの時こういう発言をしていれば、逆に発言はそのままにもっと言葉の強度を高められれば。何か状況は変わったんじゃないか、そして未来も変わっていくんじゃないか。

間違いないです。僕があなたの人生を思い通りにしてみせましょう。言葉の持つ説得力を高めることで、あなたの発言を聞いた人がより納得しやすくするだけです。

ここまでは「人の心を操る◯◯」やらでよく見ますよね。

でも僕は漫才師なので漫才における説得力の高め方を昇華させて、皆さんが生きていく中で自分らしさを表現する力の向上を図っていきたいと思います。

それでは僕の宗教の時間です。

まずこのコラムのタイトルを「漫才における人(ニン)とは」とかにしなかったのは、冬のM-1シーズンあたりにだけ顔を出すヒノキ花粉みてえなお笑い崩れ相手に気持ちよく漫才を語るセミナービジネスで稼ぐのはこのコラムではないと判断したからです。

もちろん漫才厨セミナービジネスのお話も別枠でお待ちしております、そこではたくさんのJPYをください。

このコラムで紹介するのは、より実践的な自己表現としての漫才における人(ニン)です。

皆さんのニンのイメージってなんですか？その人の内面から出てくる心からの言葉で、それがセリフになった時に他の人が言うよりも説得力が出て漫才で有利に働く。とかじゃないですか？

これは街のニンスクールで習う綺麗なニンだと思います。ただ実戦ではまるで使えません。“内面から出てくる心からの言葉”ってのが、その条件だけだと全然表現不可能です。

心からの言葉かどうかって、言葉の説得力において全然大事ではないです。

例えば僕はちいかわが好きです。心から。魂から好きです。可愛いから。これって真実ではありますけど説得力はないですよね？

僕は本当にLINEスタンプコンプリートするくらいちいかわ好きなんですけど、なんで説得力がないんでしょうか？心からの言葉を言っているはずなのに。

それは外見と伴ってないからですよね。ここでいう外見とは見た目、声質、口調の癖、実績、匂い、などその他多くの要素です。

上白石萌音がちいかわ好きですって言うのは、相当説得力あって言葉としては強いですよね。ヤスがちいかわ好きですって言うと「ギャップがあって面白いな」と思われる可能性はありますけど、初対面で「好きそう」とは思いませんよね。

なので、ニンが乗った言葉とは内面から溢れる言葉ではありません。
外見を通して見たあなたの内面から滲み出“そう”な言葉です。

もしニンを探すならばまずは自分の外見を見てください。今まであなたが言われた「〇〇って〜～そうだよね」などの言葉にもヒントは転がっています。そしてぼんやりとしたニンを見つけ出せたら外見をそこに向けて研ぎ澄ませて、あとはそいつが言いそうなことを言うだけ。

そうなるとどうでしょう？自分らしさを追求した結果、みんなが思う自分らしさから遠ざかっていうのを感じます。

そうなんです、漫才師でもないあなたはもっと肩の力を抜いて楽しく自分らしく生きていいんです。

自分らしさって大したもんじゃないです。

「ちょっと待てよ、あんた冒頭で俺たちの人生思い通りにしてみせますとか言ってたじゃないか。話が違うだろ」

確かに。
でもヤスってそういうこと言いそうじゃないですか。