「楽しみながらケアをしてほしい」クラシエが更年期の女性向けサブスクサービスを始めた理由とは?

  • 2025年4月25日
  • Walkerplus

生きていればどんな人も年をとっていく。その中で女性特有の問題といえば、更年期による症状や悩み。閉経の前後10年間(一般的に45〜55歳ごろ)にあたる更年期に、女性ホルモンの分泌が減少することで、心身にさまざまな不調が起きる。

そんな更年期の女性をターゲットにしたクラシエ株式会社のサブスクリプションサービスが「Fun to Me(ファントゥーミー)」。「養生食」のスープとお茶、セルフケア方法の情報が届くサービスだ。「養生食」とは、健康の維持・増進のための食事のこと。「Fun to Me」では、漢方理論と世界の伝統療法に共通する基本理論を融合させて定義した、独自の「虚-実、寒-熱、湿-燥」3軸・6要素の組み合わせで、個々の心身のバランス状態を8タイプに判定し、タイプに合わせたスープとお茶、セルフケア方法を提供。総合福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」でも導入されるなど、注目を集めている。「Fun to Me」のサービスがどのようにして生まれ、何を目指すのか。クラシエ株式会社の経営企画室企画部長の津田聖一郎さんとフロンティアBCメノテック事業推進グループ長の飯田美穂さんに話を聞いた。
クラシエ株式会社のフロンティアBCメノテック事業推進グループ長の飯田美穂さん(左)と経営企画室企画部長の津田聖一郎さん(右)。クラシエのさらなる成長のために新規事業開発に乗り出した
クラシエ株式会社のフロンティアBCメノテック事業推進グループ長の飯田美穂さん(左)と経営企画室企画部長の津田聖一郎さん(右)。クラシエのさらなる成長のために新規事業開発に乗り出した / 【撮影=三佐和隆士】


■クラシエの新たな成長のために。新規事業の社内コンペを開催
クラシエは3つの事業で成り立つ会社だ。ヘアケア用品の「いち髪」や基礎化粧品の「肌美精」などのトイレタリー・コスメティックス事業、薬局・薬店向けトップシェアを誇る漢方薬を中心とした薬品事業、そして「ねるねるねるね」といった知育菓子(R)や「甘栗むいちゃいました」などの食品事業がある。それぞれの事業で名の知れたブランドを擁するが、クラシエの将来を考えたときに、この3つだけでは立ち行かなくなるという考えが会社にあったという。

「既存の3事業ではない、新たな事業を創出することがクラシエの未来につながると考え、2021年から毎年、『KracieX(クラシエックス)』と名付けた社内公募で新規事業案を募集することにしました。クラシエのスローガンである『夢中になれる明日』のマインドは踏襲しつつも、事業内容は自由に考えてもらいました」

KracieXの応募者はさまざま。部長クラスの社員もいれば、物流や研究職、営業職といった普段企画を業務にしていない部署からの応募もあり、非常に盛り上がったという。どんな事業が提案されていたのだろうか?

「既存事業を活かしたものもあれば、まったく関係のないものもありましたね。新しい事業内容を創出することが目的でしたから、既存事業が単独で解決できるものは対象外という縛りを設けていました」と津田さん。

「Fun to Me」はKracieXの初開催である2021年に飯田さんが提案した事業案だ。もともと、飯田さんはトイレタリー・コスメティックス事業で商品企画やマーケティングを担当していたが、「新しい事業やサービスを立案するという経験はなかったので挑戦してみたくて」KracieXにトライしたという。なぜ更年期の女性をターゲットとした事業を考えたのだろうか?

「Fun to Me」の開発者である飯田さん。40、50代の困りごとを深掘りしていく中で、更年期症状の難しさを知ったという
「Fun to Me」の開発者である飯田さん。40、50代の困りごとを深掘りしていく中で、更年期症状の難しさを知ったという / 【撮影=三佐和隆士】

「薬品事業では漢方を“薬”として提供しているのですが、漢方を一般の方に取り入れやすい“食”として提案できないだろうか、という思いがありました。これまで、クラシエの3つの事業はそれぞれ別の会社として動いてきたので、薬品事業と食品事業が何かを一緒に作ることがなかったんです。各事業が結びついたら、もっといろいろなことができるのではないか、という思いがありました。立案当初は40〜50代の女性向けに気軽に漢方理論を取り入れられる食事を提案したいと考えていて、更年期には注目していませんでした。しかし、40代、50代の女性たちにどんなお悩みがあるのか、どんな体調の変化があるのかをヒアリングしたり、健康データを調べていった結果、更年期の影響が非常に大きいということがわかり、ならばそこをターゲットにしようということで『Fun to Me』ができあがっていきました」

更年期向けの商品の需要が高まっているということがあり、「Fun to Me」は時流にのった事業案として評価されたそう。加えて、「Fun to Me」はターゲットがはっきりしているという点も評価されたと津田さんは語る。

クラシエの新規事業創出プロジェクト「KracieX」を主導する津田さん(左)。「新規事業を作り出すことは非常に骨の折れること。毎年熱のあるやる気に満ちたプロジェクト案が出されています」と話す
クラシエの新規事業創出プロジェクト「KracieX」を主導する津田さん(左)。「新規事業を作り出すことは非常に骨の折れること。毎年熱のあるやる気に満ちたプロジェクト案が出されています」と話す / 【撮影=三佐和隆士】

「KracieXのプロジェクトでは、一人ひとりのお客様にフォーカスして、ニーズを深掘りしていくことも求めていました。事業の売上の規模感に最低ラインは設けず、お客様になりうる人と一対一で向き合って、どのような課題を抱えていて、その課題をどのようにして解決していきたいのかが明確かどうかを重視していたんです。ヒアリングやインタビューをしっかりしていた飯田の『Fun to Me』はその点が一番クリアでしたね」

2025年4月に発売になった「カラダととのうenn you」。女性特有の悩みに寄り添う和漢エキスを配合した3種類のドリンク。1本378円
2025年4月に発売になった「カラダととのうenn you」。女性特有の悩みに寄り添う和漢エキスを配合した3種類のドリンク。1本378円 / 【画像提供=クラシエ株式会社】

2人によればクラシエは「安定志向の真面目な社員が多い」とのこと。そこを打破するために、2017年には「CRAZY KRACIE(クレイジークラシエ)」というインパクト抜群なビジョンを掲げている。新規事業創出というパワーが必要なことをやり遂げた飯田さんはクラシエ一のCRAZYな社員かもしれない。そして、飯田さんの「Fun to Me」に続いて2025年4月には「カラダととのうenn you(エンユー)」という新規事業がスタートした。和漢エキスを身近においしく楽しんでもらいたい、という思いで開発された“おまもりドリンク”で、3種類のフレーバーで展開されており、それぞれ体調を整える和漢エキスが含まれている。今後も、KracieX発の新規事業のローンチを控えているそうで、どんなCRAZYな事業が登場するか楽しみだ。

■一過性で終わらせないためのサービス作り。企業からも熱視線
更年期に特有の不調というと、ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ、発汗)やイライラするといった症状が有名だが、日本産婦人科学会によれば21項目もの症状があり、眼が疲れやすい、肩や首が凝りやすいといった身体的な症状もあれば、くよくよしやすい、音に敏感といったメンタル的な症状もあるという。

「更年期のお悩みにどんなものがあるのか深掘りしていったときに、私自身も驚くほどさまざまな症状があるということを知りました。更年期世代の方もそのことをご存知なく、ホットフラッシュやイライラするといった症状がないから、自分には更年期による症状の心配はないと考えられている方も多かったです。しかも、更年期症状は個人差がすごく大きくて、なかなか人と比べられないということもわかりました。また、眼が疲れやすいとか肩が凝るという症状は更年期以前からそういったことがあると、更年期の影響で悪化しているのか、純粋な加齢のために悪化しているのかわかりづらいということもあります。更年期の影響からくる症状だと自分では気づきにくく、不調に対しての対処が進んでいないという印象を受けました」

人それぞれの悩みに合わせたケア方法を提案するサービスでなくてはいけない。そう考えた飯田さんは、「バランス状態チェック」という仕組みを作り上げた。漢方理論と世界の伝統療法を融合させて独自に設計した15の質問に回答することで、その人の心身のバランス状態がわかるというものだ。

「漢方など専門的な知識がなくても自分にぴったりの商品が届くようなシステムにしたかったのです。そこで、ECサイト上で自分の状態をチェックしていただき、それぞれのタイプに合わせてこちらで商品を組み合わせてご提供するのがいいと考えました。また、食事でのケアは一回それを食べれば改善できるというものではありません。長く続けていただく必要があるので、サブスクの形にしました。かつ、主食を変えることは難しいと思うので、スープとお茶という生活に取り入れやすく、温かい水分の補給を無理なく習慣化できる形状を採用しました。バランス状態というのは体質とは異なるので、その時の環境や季節、ストレスのかかり具合で変わります。同じ人の中でも不調の状態は変化するので、その人の“今”の状態に合わせた商品を提供できるように、『バランス状態チェック』は都度できるようにして、その度に商品の組み合わせを変えて提供するという形にしています」

バランス状態チェックの仕組みづくりには会社の財産が生きた。

「『Fun to Me』のサービスを提案している時に、薬品事業の経験がある人が過去に構築した仕組みを教えてくれました。20年以上前にタイプ判定の仕組みを作って特許もとれていましたが商品化には結びつかなかったものがあり、それを活かせないかと。それは更年期向けではなかったので、更年期向けにアレンジはしましたが、ベースにその仕組みが使えたので、より早くサービスをローンチすることができました」

スープやお茶に使う和漢素材についても薬品事業の人たちからサポートを受けられたそう。

漢方理論をベースにさまざまな素材を組み合わせた「Fun to Me」のお茶。1袋15包入り。しっかりコースではお茶2種各1袋とスープが2種各7食が届いて6804円(初回は20%オフで5443円)。気軽に始められるライトコース4860円(初回は3888円)もある
漢方理論をベースにさまざまな素材を組み合わせた「Fun to Me」のお茶。1袋15包入り。しっかりコースではお茶2種各1袋とスープが2種各7食が届いて6804円(初回は20%オフで5443円)。気軽に始められるライトコース4860円(初回は3888円)もある / 【撮影=三佐和隆士】

「更年期不調は単純に女性ホルモンが減少するから、ということではなく、脳が卵巣に対して女性ホルモンを分泌するように指示を出しているのに、卵巣の機能が低下しているせいで、指令にうまく応えられず、女性ホルモンが分泌されないことに脳がパニックを起こして自律神経が乱れてしまうというのが大きいんです。自律神経は体のあらゆる機能に影響しているものなので、心身にさまざまな不調が現れることになります。では、自律神経を整えるために有効なことはというと、血流をよくすることです。そうすると、水分の巡りもよくなるので、スープやお茶を養生食として提案しようということになりました。スープやお茶にどういった具材を入れるかはバランスチェックの仕組みを考案したメンバーと一緒に検討していきました」

スープやお茶といった食品だけではなく、LINEで月に4〜6回の健康アドバイスが届くというのも「Fun to Me」の特徴だ。

「Fun to Me」ではプランに応じてLINEで健康アドバイスを送ってくれる
「Fun to Me」ではプランに応じてLINEで健康アドバイスを送ってくれる / 【画像提供=クラシエ株式会社】

「単純に食事を変えただけでは健康状態を維持するのはなかなか難しいです。睡眠だったり、運動だったり、生活習慣を整えていただく必要があると考えたときに、その人の状態に合わせたアドバイスが届くようにしようと考えました。『バランス状態チェック』では、3つの軸でその人の状態を判定しています。エネルギーが不足しているか過剰かを見る“虚”と“実”。水分が体内に溜まりすぎているか、不足しているかを見る“湿”と“燥”。そして、熱がこもりやすいか冷えているかを見える“熱”と“寒”です。クラシエでは年に4回、累計で9000人以上のアンケートをとっていて、どの状態の人にどんな更年期症状が出やすいかを把握しているので、タイプに合わせた健康アドバイスを的確に提供できるようにしています」

ECサイトで行ったバランス状態チェックの内容を、LINEと連動させてアドバイス提供をしているが、サービス開始当初は都度ユーザー自身にLINE上で知りたい不調の内容を選んでもらい、それに合わせてアドバイスを送るようにしていた。現在は、アンケート結果に基づき、タイプ別に現れやすい不調に対するアドバイスが自動的に届くようにしている。

「毎月不調の内容を選んでもらっていたのですが、選ぶこと自体が負担だったようで…。あまりちゃんと選んでいただけない事例が出てきてしまいました。選んでもらわないとアドバイスが送られない仕組みだったので、サービスが十分に提供できていないことに。そこで、こちらからタイプに合わせてアドバイスを送れるようにしました。『Fun to Me』はお客様と直接やりとりできるサービスなので、お客様の反応を見ながらよりよい形に対応しています」

体によいものだとしても、味がわからない状態ではサブスク契約と購入をためらってしまう人も多いのではないだろうか?

エネルギーが不足している"虚”タイプ向けのスープ。具材がしっかり入っているので、飲み応えがある
エネルギーが不足している"虚”タイプ向けのスープ。具材がしっかり入っているので、飲み応えがある / 【撮影=三佐和隆士】

エネルギーがありすぎてストレスが溜まりやすい”実"タイプ向けのスープ。オレンジピールが入るなど、スープとしては珍しい素材の組み合わせだが飲みやすい
エネルギーがありすぎてストレスが溜まりやすい”実"タイプ向けのスープ。オレンジピールが入るなど、スープとしては珍しい素材の組み合わせだが飲みやすい / 【撮影=三佐和隆士】

「そうした人向けに全種類を試せるトライアルキットの販売も昨年10月より行っています。漢方では自分がおいしいと感じるものが、体が欲しているものとする考えもあるので、バランスチェックの判定のみに依らずにご自身の食べたいものを食べることができますし、一度試すことで安心して継続していただけると思います。『Fun to Me』というブランド名には『楽しみながら自分をケアしてほしい』という思いも込めているので、そのためにもお茶もスープも絶対おいしくないといけないと考えています。スープはフリーズドライにして素材のおいしさを感じられるように、お茶も素材ごとに焙煎時間と焙煎温度を変えて、最後にミックスすることで、えぐみが出ないように調整しています。それから、試飲ができるイベントも積極的に行っています。今でしたら5月4日(祝)まで行なっているイベント『ITOCHU Femtech Junction!』で無料の試飲会を、4月29日(祝)は東急プラザ銀座で試飲と販売を行いますので、ぜひ試していただきたいです」

伊藤忠商事では社員向けに朝型軽食の提供も行なっているが、そこに「Fun to Me」が採用されている。

熱がこもりやすい“熱"タイプ向けのスープ。熱を冷ますために冷たい飲み物を摂りがちだが、胃腸が冷えて巡りが悪くなるとかえって熱が外に逃げにくくなるので、冬瓜や豆腐など熱をとる効果が期待できる素材が摂れるスープに仕上げている
熱がこもりやすい“熱"タイプ向けのスープ。熱を冷ますために冷たい飲み物を摂りがちだが、胃腸が冷えて巡りが悪くなるとかえって熱が外に逃げにくくなるので、冬瓜や豆腐など熱をとる効果が期待できる素材が摂れるスープに仕上げている / 【撮影=三佐和隆士】

冷える“寒”タイプ向けのスープ。フェヌグリークやナツメグなどの体を温めるスパイスが含まれる
冷える“寒”タイプ向けのスープ。フェヌグリークやナツメグなどの体を温めるスパイスが含まれる / 【撮影=三佐和隆士】

「伊藤忠商事様をはじめとして、さまざまな企業からお声がけをいただいています。女性活躍に期待し、社員の健康促進に力を入れる企業が増えたということだと思っています。そんな中、女性の更年期ケアという点では選択肢が少なく、医療機関を利用するほど深刻ではないけれど、まずはセルフケアで手軽にできることはないかということで、『Fun to Me』を求めてくださっているのではと感じています。『Fun to Me』は直接お客様とやり取りをするBtoCを念頭にサービスを作っていたので、BtoBにも幅広く対応ができるように今後取り組んでいけたらと思っています」

「Fun to Me」は更年期前の年代から取り入れるのも効果的だと飯田さんはいう。

「PMS(月経前症候群)に悩んでいる方も多いかと思います。女性ホルモンの変動が不調の原因という点では似ているんです。PMSがひどい場合は更年期でも同じような症状が出やすいと言われています。また、産後のホルモンバランスの乱れなども同様なので、更年期以前の方にも『Fun to Me』を取り入れていただいて、ケアをしていくのは有効だと思っています」

日々の生活に取り入れやすく、続けやすいように作り上げられた「Fun to Me」。女性のライフステージを支えるサービスとして今後の拡大に期待したい。

取材・文=西連寺くらら

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