2025年3月28日より全国公開された「ミッキー17」。「パラサイト 半地下の家族」(2019年)で作品賞をはじめアカデミー賞4冠を達成したポン・ジュノ監督が、主演にロバート・パティンソンを迎え、逆襲エンターテイメントに挑んだ本作。公開前に試写で観た本作の感想を紹介(以下、ネタバレを含みます)。
映画「ミッキー17」のメイン写真 / (C)2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
【ストーリー】
人生失敗だらけのミッキー(ロバート・パティンソン)は、何度でも生まれ変わることのできる“夢の仕事”を手に入れた……と思い込んでいた。
そんなミッキーを待っていたのは、身勝手な権力者たちの業務命令によって、命を落としては何度も生き返る過酷な任務だった。
ミッキーがブラック企業に搾取され続ける日々を送る中、17号となったミッキーの前に、ある日、手違いで自分のコピーである18号が現れたことで事態は一変。
二人のミッキーは権力者たちへの逆襲を開始するのだった…。
映画「ミッキー17」のメイキングカット / (C)2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
■ロバート・パティンソンが見事に演じ分けた二人のミッキーのキャラクターの違いに注目!
怪物に娘をさらわれた一家の奮闘劇を描いて大ヒットした「グエムル-漢江の怪物-」(2006年)、殺人事件の容疑者にされた息子の無実を信じる母の姿が切ない「母なる証明」(2009年)、クリス・エバンス、ソン・ガンホ、ティルダ・スウィントンなどの豪華キャストが出演したSF大作「スノーピアサー」(2014年)、ブラッド・ピットの映画製作会社プランBとタッグを組んで手がけたNetflixオリジナル映画「オクジャ/okja」(2017年)、そして「パラサイト 半地下の家族」など、社会問題を盛り込みつつもエンタメ性の高い作品を世に送り出して観客の心を掴んできたポン・ジュノ監督。
監督が新たに挑んだのは、使い捨てワーカーが主人公の逆襲劇。監督は原作の小説「ミッキー7」を読んで心を奪われたという。
そんなポン・ジュノ監督とタッグを組んだのは、「TENET テネット」(2020年)や「THE BATMAN-ザ・バットマン-」(2022年)などの大作映画が続くロバート・パティンソン。
彼が若いころは「トワイライト」シリーズのヴァンパイアのイメージが強かったが、シリーズが終わってからの出演作はバラエティに富んでいる。
なかでも強烈だったのは新人の灯台守を演じた「ライトハウス」(2021年)。孤島を舞台に二人の灯台守のスリリングな日々を描いた作品で、ロバートはベテラン俳優ウィレム・デフォー(ウィレムもかなりヤバい役を演じている)を相手に狂気的な芝居をして観客を驚かせた。
【写真】ブラック企業に搾取され続けるミッキーを演じたロバート・パティンソン / (C)2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
そんなロバートが本作で挑んだのは、ブラック企業に搾取され続ける主人公のミッキー。会社の命令で過酷なミッションをさせられ、何度も死んでは「人体プリント」でコピーされるミッキー。最初はミッキーの悲惨な死に方を見て“人間を使い捨てするなんて酷い!”と思ったものの、映画が進むうちにだんだん“ミッキーが死ぬこと”に慣れてきている自分が怖かった…。
物語の途中、手違いによってミッキー18号が登場する。優しくてチャーミングなミッキー17号と、攻撃的な性格のミッキー18号の二役を、それぞれの性格の違いがハッキリとわかるよう見事に演じ分けたロバート。
ちなみにこの世界では、コピーが二人存在していけないというルールがあるため、18号が現れてから次々と予想外の展開が巻き起こるのでお楽しみに。
映画「ミッキー17」の場面写真 / (C)2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
■スティーブン・ユァンやマーク・ラファロなど豪華なキャスト陣が集結
ミッキーの任務地ニフルヘイムという惑星でミッキーと出会い、恋に落ちた女性ナーシャを演じたのは、「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」(2019年)や「ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY」(2022年)など話題作への出演が続くナオミ・アッキー。
ナーシャは一見シゴデキのしっかり者の女性に見えるけれど、ミッキー18号が登場してからは意外な一面(17号をミッキーマイルド、18号をミッキーハバネロと呼んで二人が存在する状況を楽しんでしまったりもする)を見せて物語を盛り上げていた。
ミッキーの友人で、いまひとつ信用できない男ティモを演じたのは、ドラマ「ウォーキング・デッド」で一躍有名になり、「ミナリ」(2021年)ではアジア系の俳優として初のアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたスティーブン・ユァン。
彼のファンである筆者にとって、「オクジャ/okja」以来再びポン・ジュノ監督作品に呼ばれたことがうれしかった。
ミッキーの任務地ニフルヘイムでパイロットとして働いているティモは、ミッキーがコピーできることを知っているからなのか、友達なのにミッキーを危険な場所に置き去りにするような人間。
だけれどティモを心の底から嫌いになれないのは、スティーブンが魅力的に演じているからだろう。
ティモに置き去りにされても生きていたミッキーが、そのあとティモにどんなふうに接していくのかという点にも注目してもらいたい。
開拓企業の強欲なボス、ケネス・マーシャルを演じるのは、「アベンジャーズ」シリーズのハルク役で知られるマーク・ラファロ。そしてマーシャルの妻イルファを演じるのは、「ヘレディタリー/継承」(2018年)で怪演を見せたトニ・コレット。
トニ・コレットの悪役は意外ではなかったが、マーク・ラファロは“優しくて紳士的な男性”役のイメージが強かったため今回の悪役は新鮮だった。
この夫婦の笑ってしまうほどの邪悪っぷりも本作の大きな見どころ。
■謎のモンスターが登場するシーンに大興奮!
本作で印象に残ったのが「人体プリント」のシーン。まるでMRIのような機械の中から新しいミッキーのコピーがヌルッと出てくるのだ。“もしかしたらいつか本当に人間のコピーが可能な時代が来るかも!?”と思わせられるほどのリアリティだった。
そしてもう一つ印象的だったのが、ニフルヘイムに生息するクリーパーと呼ばれる謎のモンスターの存在。「風の谷のナウシカ」(1984年)に登場する“王蟲(オ-ム)”のような見た目で、大きなサイズのものから小さくてかわいいサイズのものまでたくさん登場するシーンはテンションが上がり大興奮。
観終わったあと、クリーパーのぬいぐるみが欲しくなってしまったほどユニークなキャラクターなので期待してほしい。
物語の後半、権力者であるマーシャルにミッキーが立ち向かっていく展開を見せる本作。興奮のクライマックスをぜひ劇場で体感してもらいたい。
文=奥村百恵
(C)2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
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