
最初は笑って読み進めていたが、次第に悲しみを帯びた物語へ / (C)イイジマ
「どうも。はじめまして!ナビさんです」。1カ月ちょっと前のある日、主人公の車のカーナビが勝手にしゃべり出した。カーナビいわく、アップデートされて最新版の対話機能付きナビになったとのこと。「流行りのAI的なアレです」と自己紹介するナビさん。最初は受け入れがたかった主人公だが、1カ月も続くとナビさんとの会話にすっかり馴染んでしまった。
しかしこのナビさん、最新機能の割には「有能」というより「多能」で、お茶目に道を間違えたり、歌を歌い始めたり(音痴)、割り込みをする車に威嚇したり…ちょっと大変な機能付きだった。それでも主人公はこのナビさんを気に入っていた。なぜなら「彼女とののろけ話を笑って聞いてくれる機能」を備えていたからだ。この漫画の著者はイイジマさん。
普段は子育てをしながら薬剤師としてパート勤務をしているワーママだが、歴史と実績のある青年漫画の登竜門「ちばてつや賞」の第79回で佳作を受賞した経歴を持つ。本作を読んだ読者から「はじめは笑って読んでたのに、最後に泣かすってなんだよこれ」「マジか…マジか…!」「やば、いい話すぎる」というコメントが届いた。イイジマさんに本作について話を聞いてみた。
■ カーナビと会話ができたら楽しそう!「対話機能付きのカーナビ」をテーマに描いた理由やこだわりとは
最新機能のはずなのに、よく道を間違えるナビさん / (C)イイジマ
ナビさん_P02 / (C)イイジマ
ナビさん_P03 / (C)イイジマ
イイジマさんが本作の着想を得たのは、「声優が音声案内をしてくれるカーナビ」の話題を耳にしたことがきっかけで、「カーナビと会話ができたらおもしろいのになぁ」と考えたのがはじまりだったそうだ。
本作には、コミカルなやりとりの中に温かさや切なさが織り交ぜられている。その理由についてイイジマさんは、「人の心に残る作品を作りたいと思っています。なので、読んですぐ忘れられないように、ストーリーを練るのにはかなり時間をかけてます」と語った。
また、イイジマさん自身が「メンタルが弱め」だと感じていることから、自然とそういったキャラクターを描くのが得意なのだとか。登場人物の繊細な感情や揺れ動く心情が、読者の共感を呼ぶ要因のひとつなのかもしれない。
現在、育児中のイイジマさん。今後の活動について「今は生活するのに精一杯なので当分は描けないと思います。でも、子どもに手がかからなくなったら、また描きたいです」と意欲的だ。
読者からは「明日からナビが気になってしまいまいます」という感想も寄せられている本作。主人公のカーナビがある日、目的地に到着した後に突然しゃべらなくなってしまう。その理由とは一体…?ユーモアと感動が詰まった物語を、ぜひ読んで確かめてみてほしい。
取材協力:イイジマ