「ひとり」をポジティブに楽しもう!おひとりさまを愛するバーに集う人々を描いた漫画「ソリチュード」に共感の声【作者に聞いた】

  • 2023年10月21日
  • Walkerplus

近年、「おひとりさま」という言葉が使われるようになり、これまでは複数人数で行うことが常だったキャンプや焼肉といったことをひとりで楽しむ人が増えてきている。その一方で、恋人がいないことや人付き合いが薄いことを「寂しい」と評価する声も根強い。

“ひとりでいること”を肯定的に捉えたい。そんな思いを込めた中村あいさつ(@n_aisatsu)さんの「ソリチュード ひとりを愛する人が集まるバー」が電子書籍化され、共感の声が寄せられている。

物語の舞台になっているのは、「Bar ソリチュード」。孤独を意味する英語の“solitude(ソリチュード)”から命名されている。孤独というと暗くて寂しいイメージがあるが、これは英語でいうと“loneliness(ロンリネス)”。一方、“solitude”には「ひとりでいることの自由さを歓迎する」という意味があるんだそう。そんな意味の名前を持つバーにはひとりでいることを謳歌している人が集まってくる。ギャル系ファッションに身を包む行動派の心(ここ)、無口で無表情だが楽観的な性格のみくみ、恋愛に振り回されずにひとりでいることを好きになりたいと奮闘する風実香(ふみか)、「恋人は仕事」と公言する人気急上昇中の新人声優の光馬(こうま)、イケメンでモテることによって疲れている当太朗(あたろう)。そして常連たちに優しく寄り添うマスター。性格も、嗜好、「ひとり」に対しての向き合い方もさまざまな彼らが織りなす群像劇は、読む人に「ひとり」を楽しむ気持ちをそっと後押ししてくれる。2023年3月にX(旧Twitter)に投稿したところ、4.5万いいねを獲得し、書籍化につながった本作。作者の中村あいさつさんに本作が生まれたきっかけやこだわりを聞いた。

■「ひとりが好き」もいろいろなスタイルがあっていい
――ひとりでの活動が肯定的に受け止められるシーンがある一方で、友達付き合いや恋愛・結婚に重きを置く風潮は根強くあります。「ソリチュード」の作品コンセプトはどのようなきっかけで生まれましたか?

恋愛や結婚に重きを置く風潮、まだまだ感じますよね。私もこれからの自分の人生を考えたとき、この風潮に違和感を持ちました。いろいろ考えたり、模索したり、行動した結果、ひとりでいることを肯定的に捉えられるようになり、それが「ソリチュード」を描くことにつながりました。

――英語での“loneliness(ロンリネス)”と“solitude(ソリチュード)”の違いについてはいつ知りましたか?

先ほどお話した「これからの人生を考えたとき」にソリチュードについて知りました。ひとりでいることが自分は楽しいのに、周囲に言ってもあまり伝わりませんでした。でも、自分が感じることは世界のどこかの誰かも感じているはずと思い、ネットで「孤独 楽しい」「孤独 良い意味」といった感じで調べて、初めてソリチュードという言葉と出合いました。「そうそうこういうこと!」「言葉があるってことは、同じ気持ちの人がいっぱいいるってことだ!」と目の前が明るくなりました。ネットで世界とつながれるってありがたいですね。

――2023年3月にXに投稿したエピソードが4.5万いいねを獲得したことがきっかけで連載化、書籍化につながりましたね。ただ、投稿されたときに「20誌持ち込みに行ったけど、このままのキャラたちで企画通るところがありませんでした」と書かれていました。これはどういった理由からでしたか?

「ソリチュード」を描くにあたって「自分の描きたいことを描く」ということに挑戦する、というのが私の中で大事なテーマになっていました。譲れなかったこととしては、白黒ではなくフルカラー、主人公は1人ではなく、6人の群像劇にするといったことがありました。ソリチュードというテーマ自体に関心を持ってくださる編集さんはいらっしゃったのですが、白黒原稿のみを取り扱っておられたり、主人公を1人にするようご提案があったりと、お互い譲れないところがあって、持ち込みでは連載に至りませんでした。

――キャラクターによって「ひとりが好き」の定義が違いますね。個性的な6人のキャラクターはどのように作り出したのでしょうか?

「主人公は1人ではなく、6人の群像劇にする」というこだわりにつながっています。ひとりが好きな人にはいろいろなタイプの方がいると思っていて。なので、主人公を1人立てて「ひとりが好きなのはこういう人」というステレオタイプ像を作るのは避けたいなあと思って、6人のキャラクターを立てる形にしました。キャラクターの作り方は、「なぜひとりでいるのが好きなのか?」というところから考えていきました。趣味が大事だから、仕事が好きだから、恋愛に疲れたから、人といることに苦手意識があるから、など。そこから、そういう人はどういう性格か、どういう仕事をしているのか、どういう服を着てるいるのかと、想像していきました。この想像していく過程で、モデルにしたり参考にしたりした人が各キャラにいます。友人・知人・芸能人の方などです。最終的には家族構成・出身地・学歴・部活歴・バイト歴・年収・家賃・月収の使い方などの細かいことも詰めていきました。

――中村さんご自身も「ひとりを愛する人」だと思うのですが、どのようにひとりを楽しまれていますか?作中のキャラクターでご自身に近い子はいますか?

趣味が広く浅く、いろんなことが好きです。学生時代は斜に構えていて、目の前のことを楽しむことが苦手だったのですが、年齢が上がるにつれて楽しめることが増えていきました。みくみ以外は似ている部分があるなあと思っています。学生時代からの友人に「この子はいついつごろのあなたで、この子はいついつごろのあなたでしょ」と言われました(笑)。当たってると思います。みくみは私の持っていないものを持っている子だなと思います。

――作中で、「ひとりが好き」なことに対してネガティブな反応がさまざま描かれていますが、これは中村さん自身が経験してきたものも含まれているのでしょうか?

そうですね、実際に経験したことも含まれています。作中でも描きましたが、相手に悪気がなかったり、善意で心配してくれているんだぁと思ったりもしました。理解されなくて悲しい気持ちになったこともありますが、今は「ソリチュード」の読者さんなど、わかってくださる方がいるので、「わかってもらいたい人にわかってもらえたらいいか」と思っています。

――色使いがとても印象的です。どういったコンセプトで彩色されていたのでしょうか?

もともとカラー原稿が苦手だったので、印象的と言っていただけてうれしいです。最初の数話は各キャラクターのメンバーカラーから色選びをしていきました。それ以降のお話は、内容に合わせて色を選んでいきました。重要なシーンで夜景が出てくる回は濃い青色をまず選んで、その色に合う色を選んでいく、という感じです。肌の色が黄色っぽい回もあれば、ピンクっぽい回もあるのですが、今まで塗ったことのない色にたくさん挑戦できて楽しかったです。「夜景は青や紫じゃないと夜景に見えないのに、髪の毛は赤でも青でも緑でも変にならない」など、色って不思議だな、おもしろいなと発見がありました。

――読者の方からの反応で印象的だったことやうれしかったことを教えてください。

絵柄を好きと言っていただけることが多くてびっくりしました。デフォルメされた絵が好きなのですが、今までそういった絵では企画が通らなくて。写実的な絵の方が好きな人が多いというのはわかるので、企画が通らないこと自体に不満はなかったのですが。好きな絵でも漫画を描いてみたいと思っていたので、今回好きな絵で描いてみて、読者さんに絵が好きと言ってもらえてうれしかったです。

――読者の方にメッセージをお願いします。

いつも「ソリチュード」を読んでくださりありがとうございます。「ソリチュード」はSNSで発信を始めた漫画で、それを読んでくださったみなさまのおかげで電子書籍を発売することができました。電子書籍で初めて見つけくださった方もおられて、「ひとりが好きな人」の輪がどんどん広がっていっていくことが、とてもうれしいです。ひとりが好きな人ってたくさんいるんだな、と心強い気持ちにもなりました。これからもソリチュードタイムを大切にしながらみんなでハッピーにすごしましょ~!

取材・文=西連寺くらら

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