出前の返却にメッセージ、地域のお店を助けるクラファン。コロナ禍初期の飲食店を描いた心温まる漫画に反響多数!【作者に聞く】

  • 2023年7月10日
  • Walkerplus

新型コロナウイルスが、季節性インフルエンザと同じ感染法上の分類が「5類」となったことで、街には多くの人が戻り、マスクを付けていない人も増えてきた。ようやく以前の生活に戻りつつある今、改めてコロナ禍を振り返り「人との繋がり」の大切さを描く漫画を紹介したい。

水谷アス(@mizutanias)さんの漫画「コロナ禍が始まった頃の飲食店の話」は、出前を頼んだお客とお店の交流を描いた「昼の話」と、北海道釧路市にある実在のレストラン「イオマンテ」が行ったクラウドファンディングを元にした「夜の話」の2作品。今回は水谷さんに漫画を描いたきっかけなどを聞くとともに、イオマンテの舟崎シェフにも漫画化された感想を聞いた。

■「顔を合わせる機会が少なくても、心の触れ合いは作れる」自身の経験を元に描いた「昼の話」
「コロナ禍が始まった頃の飲食店の話」は、外出自粛により、お客が来なくなってしまった飲食店での心温まるエピソードを描いている。「昼の話」は水谷さんの体験が元になっているそうだが、どんなきっかけで漫画を描いたのだろうか。

「娘たちが近所のおそば屋さんのうどんが大好きだったのですが、小さい頃は騒がしくしてしまい迷惑をかけてしまっていて。お店の人は笑顔で対応してくれていましたが、申し訳なくて途中から出前にしたんです。いつも優しいおそば屋さんへ、娘は『ごちそうさま』と割り箸の袋に書いて食器とともに返していました。その後、娘が少し成長してから食事に行くと、お店の奥さんが『久しぶりに来てくれてうれしい。お手紙ありがとうね、おばちゃん、うれしくてそこに貼ってあるの』って壁に貼った箸袋を見せてくれました。子供たちを本当に温かく見守ってくれていたんだと思い、顔を合わせる機会が少なくても、心の触れ合いは作れることを伝えられたらと、今回のお話を描きました」

漫画が描かれたのはコロナ禍に入ったばかりのときだったが、今年6月に再度Twitterに投稿されると、2.6万件ものいいねが寄せられ大きな反響となった。コロナ禍が明けようとしている今、多くの人に響いたことを水谷さんはどのように感じているのか聞いた。

「コロナ禍になる前までは『おいしかったよ、ごちそうさま』『ありがとうございました』と言葉を直接交し合うことはごく普通のことでしたが、そうではないことが数年続きました。当たり前が当たり前でなくなること、そしてその当たり前が戻ってくることのありがたみを皆さんが感じているからこそ、たくさんの反応をいただけたのかなと思っています」

■「困ったときはお互い様」クラウドファンディングのいきさつに感動。自ら連絡して漫画化した「夜の話」
「コロナ禍が始まった頃の飲食店の話」の「夜の話」は、北海道釧路市のフレンチレストラン「イオマンテ」のエピソード。いわゆる「夜の街」に位置し、苦境に立つ飲食店の1つであったイオマンテの舟崎シェフは、2021年、なんと市からの支援金20万円全額を使い、取引先の酒屋から地元の日本酒を購入。そしてそれを使用したお店自慢のデザート「horo酔プリン」を返礼品に、クラウドファンディングで問屋や地域のお店を支援しようとしたのだ。

水谷さんは取り組みを知り感銘を受け、ぜひ漫画にして支援したいと舟崎シェフに連絡を取ったそうだ。

「もし自分が夜の飲食店を経営していたとしたら、支援金はすべて自分の店を維持するために使ったと思います。誰も経験したことがなく終わりも見えない状況で、自分のことだけを考えるのではなく、みんなで生き残ろうとする活動に強く心を動かされました。困ったときはお互い様。昔からある言葉ですが、コロナ禍という大きな厄災で私はそれを忘れていたように思います。思い出させていただいてとても感謝していますし、この活動を応援できて光栄でした」

イオマンテの舟崎シェフにも、漫画化されたことについて感想を聞いた。

「私の思いが漫画を通して多くの人に届いたことは素晴らしいです。SNSや実生活で繋がりがない人たちにも、私のクラウドファンディングの取り組みが伝わったこともうれしく思っています。また『飲食店や繁華街の苦難』というネガティブなテーマを、柔らかい印象で伝えることができたと感じました」

ちなみに水谷さんも食べたというイオマンテの「horo酔プリン」。いったいどんな味なのか。水谷さんに感想を聞いてみた。

「あのプリンは語彙力がなくなるほど美味しいです。気になる人はぜひ食べてみてください。ただ、お酒に弱い方は酔っぱらうこともあるらしいので、その点だけ気を付けてくださいね」

その後イオマンテのクラウドファンディングは、目標の20万円を大幅に超える73万8700円の支援が寄せられ終了となった。最後に、水谷さんへ今後の創作活動の展望を聞いた。

「現状、私は紙書籍の出版や、連載を取ることをあまり目指しておらず、商売っ気のない創作スタイルになっています…。でも、そのスタイルだからこそ、今回のような作品も描けるのだと思います。とはいえ、全くの無収入では活動は続けていけません。無料の電子書籍やnoteの有料会員向けのメンバーシップなどで、この創作スタイルの自分を応援してくださる方を増やしていきたいです。自分の感じたことを作品にして、誰かにいい形で届いたことを実感する瞬間は本当にうれしいです。 読んでくださる方、反応をくださる方、いつも本当にありがとうございます」

コロナ禍で再認識することになった人との繋がりの大切さとその温かさ。元の日常に戻る前に、ぜひ水谷さんの漫画を読んで、心に刻んでおきたい。

取材・文=松原明子

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