
ペットとして人気の高い小鳥。ウォーカープラスでは小鳥と暮らすうえで知っておきたい知識や疑問を徹底解説するコミックエッセイ「トリ扱い説明書」より印象的なエピソードを厳選してお届け。3羽の小鳥と暮らす鳥野ニーナさん(@sinamomomomo)の漫画と、「森下小鳥病院」の院長・寄崎まりを先生の監修&エッセイで、小鳥の飼育に必要な知識を身に付けよう!
今回は、メスの鳥さんの発情について。快適な環境の飼育下では一年中発情しやすいと言われているが、過剰な発情は体に大きな負担がかかるそう。鳥さんの健康を管理するうえで重要な発情の管理について、鳥野ニーナさんに聞いてみた。
「わたしは以前、産卵が原因でメスのブンチョウを亡くした経験があります。悲しい出来事を防ぐためにも発情のサインを見逃さず、きちんと抑制することが大切です。『突然攻撃的になった』『巣作りを始めた』『食事量が増加した』などの場合は、発情対象のおもちゃをとったり、獣医師に相談して適切な体重を維持するなどの対策をし、産卵しすぎないように注意しましょう」
「1羽で飼育している場合でも、栄養状態が十分なメスは無精卵を産んでしまうため、同様の発情対策が必要です。もしも産卵した場合は、焦って取り上げると産み足す可能性があるので、満足するまで抱卵させ、ビタミン剤やカルシウム剤をしっかり与えましょう」
■「産卵」は鳥さんの体に大きな負担がかかる行為
そもそもなぜ発情にはリスクが伴うのだろう。「森下小鳥病院」の院長・寄崎まりを先生に詳しく聞いてみた。
「産卵は、鳥さんの体に大きな負担がかかる行為です。恋の季節である『繁殖季節』は鳥種によって異なり、オウム目の鳥さんは一般的に日本の季節で春に繁殖し、ブンチョウは秋に繁殖します。しかし、家で飼育されているペットバードは、エサが豊富にあるうえ暑さ・寒さも常に適温に調節され、さらには夜遅くまで明るい環境にあるため、繁殖季節に関わらず発情をしてしまう傾向にあります。
『1羽で飼育しているメスが卵を産んだ』と驚かれることもありますが、メスはオスと交尾をしなくても卵を産みます。哺乳類は卵子と精子が受精しないとおなかの中で赤ちゃんが育ちませんが、鳥さんの卵は受精するしないにかかわらず、一旦排卵されると殻のある状態まで育ちます。ちなみに、私たちが普段口にしている卵のほとんどが、無精卵です。
卵を作る際、体には大きな負担がかかります。発情すると肝臓で、卵の黄身の成分であるタンパク質や脂質がせっせと作られ、血液を介して卵巣へ。そのため、発情が長く続くと肝臓が疲れて悪くなったり、血中の脂質が血管にくっついて動脈硬化が起こりやすくなります。
また、お腹の中の卵は、鳥さんの体と比較するとかなりの大きさです。それをお尻から出す産卵は、卵管の筋肉を強力に収縮させる必要があります。
卵管の筋肉を収縮させたり、卵の殻を作るには、たくさんのカルシウムが必要です。そのため、慢性的に産卵してしまうと体のカルシウムが足りなくなって卵が詰まったり、足が立たなくなったりしてしまいます。また、卵管が疲れてしまうと、正常な卵が作りづらくなるため、余計卵が詰まりやすくなるリスクもあります。
メスの発情抑制で一番大切なのは、『体重の管理』です。鳥さんは発情すると卵を作る準備で卵管や卵巣が発達したり、骨にカルシウムを貯めたりするため、普段より体重が重くなります。そのため、普段より体重が重くならないように管理すると、産卵を防ぐことができます。鳥さんによって産卵しなくなる体重は異なるため、かならず獣医師に相談しながら体重管理を行いましょう。
また、発情相手を遠ざけることや、日照時間の短縮、巣や巣とみなしているものを撤去することも効果があるとされています。
なおオスは発情すると、吐き戻しを行います。発情対象はメスだけでなく人やおもちゃになることもありますので、吐き戻しをしているものは、なるべく見せないようにしましょう」
「小鳥と楽しく幸せに暮らしたい」と願うあなたの役に立つ、超実用的な知識が満載の「トリ扱い説明書」。これからもさまざまな情報を届けるので、楽しみにしてほしい。