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会計を学んだ次はファイナンス!1冊目に最適なロングセラー「超ざっくり分かるファイナンス」/タザキの投資本案内

  • 2023年1月31日
  • Walkerplus

こんにちは。YouTubeチャンネル「聞いてわかる投資本要約チャンネル」を運営している、二児の父でサラリーマン投資家のタザキ(@tazaki_youtube)と申します。

学生時代に株の魅力を知って以来、投資本好きが高じて自分の学びをYouTubeで発信したところ、想像以上の反響を呼び、3年間でチャンネル登録者が10万人を超えました。これまでに読んだ投資・マネー系の本は300冊以上。

ここでは、多くの投資本やマネー本を読んできた経験から、特におすすめの書籍や、コスパの高い書籍を、経験値や投資スタイル別で紹介していきます。今回は「『知識ゼロ』の人のための超ざっくり分かるファイナンス」(著:石野雄一/光文社)を取り上げます。

ファイナンスを学ぶ1冊目なら、この本でOKだと思います。元々、2007年に出版され本書のベースとなった『ざっくり分かるファイナンス 経営センスを磨くための財務』(光文社新書)を読んでいて「鉄板の入門書だな」と思っていましたが、2022年にリニューアルされ、さらに分かりやすくなりました。

図解やイラストが増えたので、ファイナンスを勉強し始めた学生時代に出合いたかったです(笑)。投資家はもちろん、経営学部などで財務を勉強している学生の方、そしてビジネスマンにもオススメできる本ですね。この分野で16万部超という実績が分かりやすさを物語っています。

■会計とファイナンスの違い
「そもそもファイナンスとはなんぞや」
「会計とは、どう違うの」

という読者も多いかもしれません。ファイナンスは企業価値を計るために必須のものですが、会計とはまた違う範囲を扱っています。

会計が「過去から現在」までの「利益」を扱うのに対して、ファイナンスは「未来」の「キャッシュフロー」を扱います。

そして投資においては、「過去の実績」がどうなっていたかももちろん大事ですが、「これから将来どうなっていくのか」を考えるのが重要になってくるため、投資において絶対プラスになると思っています。

■事業ステージとキャッシュフロー
さっそく、キャッシュフローの動きを表す3つのキャッシュフローを見ていきましょう。

1…営業活動によるキャッシュフロー
事業によりどれだけのキャッシュを生み出す力を持っているかが分かります。ここがプラスになっていないと、経営上の問題がある可能性があります。同業他社より高い場合は競争力があります。

2…投資活動によるキャッシュフロー
企業が投資に積極的かどうかが分かります。営業活動によるキャッシュフローの範囲を超えて投資していれば過大投資が危惧されます。

3…財務活動によるキャッシュフロー
資金の調達や返済に関わるものです。成長期であれば資金を調達する時期のためプラスになります。また、調達は借入なのか、社債を発行したのか、株式を発行したのか、という財務戦略も分かります。

事業が安定して軌道に乗ってきたら調達した分を返済していくフェーズになるので、マイナスになります。

フリーキャッシュフロー(FCF)
営業活動によるキャッシュフローと投資活動によるキャッシュフローを足したものを、「フリーキャッシュフロー」と呼びます。企業価値を算定する際にはより細かい定義をします。

■意思決定と、資本コスト
一般的に「ファイナンス」と聞くと、「調達」のイメージが強いと思います。資金の調達で重要になるのが、コストです。コストとそれにより期待できるリターンを比べることで、投資するかいなかや、調達に関する意思決定に役立ちます。

銀行による借入にはもちろん利息というコストがかかります。株式発行による出資は「返す必要のないお金」とよく言われますが、タダで貰ったお金ではありません。株主は将来のリターンを期待しているので、その期待収益率を「株主資本コスト」として反映しなければなりません。

企業が債権者や株主に払うコストを合わせて「資本コスト」といいます。負債コストと株主資本コストを加重平均して求められ、英語ではWACC(Weighted Average Cost of Capital)「ワック」と言います。

例えば、金融機関の借入が金利5%で150万円、発行株式数が2000株で株価が2500円だと仮定します。銀行からの借入コストは2%。株主資本コストは当然それよりも大きくなります。

株式投資は、元本が戻ってこない可能性があります。必ず元本を回収できる融資よりも高いリターンを要求するのが当然なのです。ここでは株主資本コストを20%と仮定しましょう。計算式は以下のようになります。

まずは株主資本が
2000(株) × 2500(円)= 500万円

WACC=(150/150+500) × 5% ×(1-30%) + (150/150+500) × 20%=約16.2%
 
※注 みなし法人税率=30%として計算(支払い金利は経費に計上できるため、税金がその分安くなります。これは負債の節税効果です)

この16.2%が、この会社がいくらで資金調達をしているか?を表した数字です。最低限生み出すべき収益率と言い換えることもできます。高い印象を抱いたのではないでしょうか。経営者でも、このWACCを認識できていない人が多いと言われています。

■企業価値の正体とは
続いて企業価値についてです。同書の企業価値の解説は、私は類書の中で最も分かりやすいと思っています。

この図は、企業価値を「何でできているか」という側面と「誰のものか」という側面から説明したものです。左側から見ていきましょう。

・非事業資産価値
事業と直接関係のない、現金、絵画、事業に使っていない遊休地、ゴルフ会員権などの時価評価。

・事業価値
事業の価値。企業が将来生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引き合計することで求めます。将来のキャッシュフローを予測する必要があります。割引率には、WACCを使います。

こうして求めた事業価値に非事業資産価値を足せば、「企業価値」が求められます。

そこから債権者価値(負債を価値と呼ぶのも意外に感じますが、借金できる価値ということのようです)を引けば、株主価値が割り出せます。

この株主価値と時価総額を比較すれば、今の市場で取引されている株価(時価総額)が割高か割安かが分かり、投資判断に活かせます。

その一つがNPV(Net Present Value「ネットプレゼントバリュー」=正味現在価値)法です。これは著者が在籍していた当時の日産自動車で採用されていたそうです。普通の学生がまず学ぶのもこの方法であり、ポピュラーな指標です。

プロジェクトへの投資にしろ、投資家による企業への投資にしろ、将来生み出すキャッシュフローの現在価値と、必要な投資額の現在価値を比較して、生み出されるキャッシュフローの方が大きければ投資OKとなります。

また、日本企業に人気のIRR法や、補助的にも使用される回収期間法など、これ1冊で投資判断指標を学べるようになっています。

■配当のメカニズム
配当というインカムゲインがあると安心感を感じる人も多いようですが、これは現金の置き場所が変わっただけと言えます。それを考えると、私は必ずしも配当が多いことがポジティブなことばかりではないと考えています。

企業内の現金が投資家に出されるということは、当然その現金分の企業価値が減少していることになります。

また、その現金を事業に使っても、NPVが0以上にならないため、投資家に返しているとも考えられます。将来生み出すキャッシュフローの現在価値がWACCを超えないということは、投資家の期待に沿えないということです。

投資家側からすれば「現金で返してもらってより高い収益の見込める投資先に投資した方が良い」ですし、企業側からも「期待の収益率を達成できないから余剰金はお返しします」ということになります。

実際、高配当で有名な企業は、すでに成熟した企業ばかりです。事業からの高い収益が期待できるならば、社内の事業をさらに大きくするためにお金を使ってもらって、将来的な株価の増大で投資家に報いる方が、投資家も嬉しいはずです。しかしそれができないのなら、配当という形で投資家に報いるしかなくなります。

■タザキのまとめ「数あるファイナンス本の中で一番分かりやすい」
他にも、With-Withoutの原則、レバレッジ効果、MM理論など、専門知識を幅広く扱っており、数あるファイナンス本の中で一番分かりやすい本ではないかと思います。

学生、投資家はもちろん、ビジネスマンの方でも、ファイナンスの話がさらっと理解できたら上司からも一目置かれるのではないでしょうか。

投資の勉強をしている方も、ファイナンス用語に出合うことがあると思います。そんな時にこの本を開けば答えがあると思います。

ファイナンスの超高度な知識は、世の中の99%の人には必要のない知識かもしれません。しかし「基礎レベルの話」であれば、会社で仕事をしたり、人生でお金を使い続ける以上、ほとんどの人にとって必要になる知識だと思います。

そんな人に向けて、この「超ざっくり分かるファイナンス」は最適な本です。ビジネスの教養の一環としても学んでみてはいかがでしょうか。

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