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コーヒーで旅する日本/九州編|背伸びをせず、等身大でいることが大切。田舎町の小さな店「hello. coffee stand」

  • 2022年8月15日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。
なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

九州編の第38回は、佐賀県・みやき町にある「hello. coffee stand」。2020年9月にオープンしたコーヒースタンドで、周囲を田畑に囲まれたのどかなロケーション。地元民しか通らないような細い道に入った住宅地にあり、途中に看板もないため“偶然見つけて”ということはほとんどないような隠れ家的な立地だ。同店をレコメンドしてくれた、みちくさ コーヒーロースター&ダレカ コーヒースタンドの店主・古川さんは「『hello. coffee stand』さんには当店のコーヒー豆を使っていただいていますが、目立たない場所にも関わらず、結構な豆の消費量。つまり、それだけお客さんが訪れているということ」と話す。住宅地の一角でひっそりと営む「hello. coffee stand」にしっかりとファンが付いている理由を探ってみた。

Profile|原口翔子(はらぐち・しょうこ)
1988(昭和63)年、佐賀県小城市生まれ。大学卒業後、佐賀の高校で臨時教員として勤務。接客業にも興味があったことから、ダブルワークで大手コーヒーチェーンで働く。教員、コーヒーショップのスタッフ、両方の仕事を経験していく中で、接客やサービスをすることにより魅力を感じ、コーヒーショップ一本に。アルバイトから社員となり、足掛け約7年働く。その後、みちくさ コーヒーロースター主催のセミナーを受講したことをきっかけに、同店のイベント出店時のスタッフとなり、約2年、さまざまな現場でコーヒーの抽出技術、知識を深める。2018年から無店舗で「hello. coffee stand」を立ち上げ、佐賀県内のイベントを中心に精力的に出店。2020年9月、実店舗をオープン。

■接客のおもしろさに惹かれて
「hello. coffee stand」の店主、原口翔子さんのコーヒーの入口は、全国展開する大手コーヒーチェーン。最初は働きやすさを重視し、選んだ仕事で、コーヒーが特別好きというわけでもなかったそうだ。「コーヒーの抽出もボタン操作一つのセミオートのマシン、マニュアル化されたオペレーションがあり、当時はコーヒーの知識や技術を学ぶというより、お客さまへのサービスやスタッフの育成などについての方が学びがありましたね」と原口さん。一方で、経験を積むにつれ店舗の運営などに携わるようになり、「自分で店をやってみたい」という目標が自然と芽生えた。

長年コーヒーショップで働いてきたことから、コーヒーをフックにしようと考えた原口さん。6年ほど前にみちくさ コーヒーロースターのハンドドリップのセミナーに参加したことをきっかけに、スペシャルティコーヒーに興味を抱き、それと同時に抽出によってコーヒーの味わいがガラリと変わることを知った。それからはドリッパーやグラインダー、ケトル、スケールなど抽出に必要な器具をコツコツとそろえ、自宅でよりおいしくコーヒーを淹れるためにさまざまな淹れ方を試す日々。純粋においしいコーヒーを淹れることだけを考えていた原口さんのバリスタとしての土台はこの時期にできあがったのだろう。その後、セミナーを機に親交を深めてきた、みちくさ コーヒーロースターのイベント出店に際し、スタッフとして働くことになり、佐賀コーヒーフェスタやマルシェなど、さまざまなイベントに参加しては、ますます抽出技術を磨いてきた。

■イベントに見出した、独立の道筋
「hello. coffee stand」として独立したのは、2018年。最初は店舗を持たず屋号だけを掲げるスタイルとし、佐賀県各地のイベントに出店するところからのスタートだった。原口さんは「佐賀県は他県と比べるとイベントが多いエリア。毎週末、どこかで必ずと言っていいほどイベントが催されていて、イベントに出店するための器具や設備があれば、無店舗でも独立が可能なことを、みちくさ コーヒーロースターさんのお手伝いをする中で強く感じていました。ですので、最初はリスクが少ないイベント出店に特化したスタイルとし、徐々に認知を広めることにしました」と話す。

抽出に必要な器具は少しずつそろえてきたものがあったことから、独立に際して出費がかさむこともなく、まさに自身が無理のない範囲で独立を叶えた原口さん。イベントに積極的に参加することで、「hello. coffee stand」の名を広め、自宅に隣接する形で、2020年9月にみやき町に店舗をオープンさせた。すでに子供が3人いる中で、家族との時間もしっかりと確保できるスタイルを選んだ原口さん。ワークライフバランスという観点で見ても、とても良い独立の仕方だと感じる。
■ママさんバリスタらしい心遣いと遊び心
店舗では、水出しコーヒー(550円)、ハンドドリップ(550円)、フレンチプレス(550円)、アメリカーノ(500円)とブラックコーヒーだけでも4種の抽出方法が選べる「hello. coffee stand」。豆はみちくさ コーヒーロースター&ダレカ コーヒースタンドから仕入れ、2022年8月現在、中深煎りのオリジナルブレンド「hello dot blend」、深煎りのブラジルの2種を用意。また、それとは別にエスプレッソ用にエチオピアも使っている。

自身も3人の子供のママである原口さんらしいと感じるのが、デカフェの豆を通年用意している点。「私自身、妊娠中はコーヒーが飲みたくても飲めなかった経験から、デカフェは常時ご準備しています。郊外の住宅地という土地柄、子育て中のお母さん世代のご利用が多いこともデカフェをラインナップしている理由の一つです」と原口さん。

さらに、同店で人気が高いのが、エスプレッソを使うシーズナルドリンク。例えば2022年7月のチョコフロマージュラテはレアチーズミルクをベースにマスカルポーネのホイップをトッピングしたシグネチャービバレッジで、コーヒーが苦手な人でも飲みやすいテイスト。SNSを見て、月替わりの限定メニューを注文する人が多いそうだ。

自分の無理のない範囲で、コーヒーショップを開いた原口さん。最後に今後の展望を聞いてみた。
「店があるみやき町は田舎なので、お客さまにはのんびりとおくつろぎいただけたらうれしいです。佐賀はまだまだコーヒーショップが多くはないので、『身近にお気に入りのコーヒーショップがある』というぐらい、暮らしのそばにコーヒーが当たり前にある街にしていくのも目標の一つ。とはいえ、今までと同じように自分自身楽しみながらコーヒーと関わっていけたらと思っています」と笑顔で話してくれた。

■原口さんレコメンドのコーヒーショップは「ROLE PLAYING COFFEE」
「おすすめするのは、JR佐賀駅前にある『ROLE PLAYING COFFEE』さん。偶然、当店とオープン時期が同じだったことから、仲良くさせていただいています。店主の武藤さんが店に来てくれることもあれば、私が『ROLE PLAYING COFFEE』さんに行くことも。なんでも相談できる仲で、コーヒー、店づくりなど、さまざまな場面で刺激を受けることも多いです」 (原口さん)

【hello. coffee standのコーヒーデータ】
●焙煎機/なし
●抽出/ハンドドリップ(HARIO V60)、エスプレッソマシン(Nuova Simonelli Appia Life V 1Gr)
●焙煎度合い/中深煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム1000円〜

取材・文=諫山力(knot)
撮影=大野博之(FAKE.)




※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。hello. coffee stand

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