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「お〜いお茶」のパッケージにある「俳句」の選出基準とは?伊藤園に聞いてみた【8月19日は俳句の日】

  • 2022年8月19日
  • Walkerplus

2020年に緑茶系飲料の年間売上で販売実績世界一としてギネス世界記録に認定されるなど、国内外問わず大人気のロングセラー商品「お〜いお茶」。

お〜いお茶といえば、「伊藤園 お~いお茶新俳句大賞」(以下、新俳句大賞)を思い出す人が多いかもしれない。パッケージに何気なく書かれた俳句作品はどれも個性的で、「どんな俳句が載っているんだろう」と購入する際の小さな楽しみになっている人もいるのでは?

今回は8月19日の「俳句の日」に合わせ、株式会社伊藤園(以下、伊藤園) マーケティング本部広告宣伝部の横山佳史さんにインタビュー。新俳句大賞のルーツとその選考基準を聞いた。さらに横山さんたちが思わず度肝を抜かれた応募作品に関するエピソードもご紹介!

■「お〜いお茶」の発売と共にプロジェクトがスタート!
新俳句大賞がスタートしたのは、「お〜いお茶」が誕生した1989年。同年は、松尾芭蕉の『奥の細道』300周年や、その前年に俵万智の『サラダ記念日』の販売部数が260万部を突破したこともあり、俳句や川柳がちょっとしたブームになっていたんだとか。

「俳句に興味・関心を持つ方は増えたものの、やはり多くが初心者のため、発表の機会が少ないという問題がありました。そこで『俳句の一般愛好者に貢献できないか?』とこの企画の検討が始まり、お〜いお茶の商品パッケージを発表の場として解放したことで、今の形になりました」

しかし第1回の応募作品数は4万1373句と現在ほど多くはなく、あくまで販促の一環としての側面が強かったが、徐々に「お~いお茶」の話題作りに成功し、回数を重ねるごとに応募が増加。近年では約200万句もの応募があり、前回(第32回)までの累計応募句数がなんと3970万句を突破した。また、著名人が過去に新俳句大賞に応募したことを話しているエピソードが多数存在するなど、今や誰もが知るイベントにまで成長を遂げた。

これまでの俳句と“新俳句”の違いは一体何なのだろうか?これには募集要項にもある「自由なテーマ」が大きく関係している。

「新俳句大賞は、俳句独自の季語や定型のルールにこだわりがありません。なぜなら、それらがなくても素晴らしい句がたくさんあるからです。また、俳人を含めた幅広いジャンルの審査員が選考するため、ほかの俳句大会では評価されにくい作品に注目がいくのも特徴です。これによって初心者が取り組みやすい環境を提供できると共に、上級者と同じ土俵で表現力を競うことができるんです。ほかにも写真と俳句で表現する『新俳句フォトの部』や、より自由な表現が可能な『英語俳句の部』も設けていますので、ぜひ一度応募してみてください」

応募作品が私たちの目に多く触れる機会は、言わずもがな商品パッケージに掲載された時。では、掲載作品はどのようにして選ばれているのだろうか。そこには、ある意外な基準があった。

■商品パッケージに掲載する作品の意外な選考基準
「お〜いお茶」シリーズの商品パッケージに掲載されている作品は、前年の新俳句大賞の入賞作品2000句が掲載されている。何を隠そう、それを選んでいるのが横山さんだ。では、一体どのような基準で選んでいるのだろうか。

「まずは入賞作品のうち、上位の賞から順番に選出しています。どの『お~いお茶』商品にどの入賞作品を掲載するかは何か決まった基準があるわけではありませんが、新俳句大賞のコンセプトである『お茶を飲むひとときをもっと楽しんで欲しい』という思いから、少し工夫をさせていただいてます。例えば『お〜いお茶 初摘み新茶』であれば、『新』の文字が入った句を選定していますね。また、関西限定の商品であれば関西の方の作品を、秋口に発売したパッケージであれば秋っぽいものを選んでいますね。ほかにも『お~いお茶 濃い茶』は、主に50〜60年代の方にご愛飲いただいているので、同年代の方の句にしてみたりなどいろんな試みをやっています。誰も気づかないんですけどね(笑)」

■審査員たちが思わず度肝を抜かれた作品とは?
新俳句大賞の特徴の1つが、実は応募者の92%が学生であるということ、毎年その年代の素直な心情が表現された作品が多く寄せられるんだとか。そしてなかには横山さんや審査員が思わず見返してしまうような、ユニークなものもあるという。

「直近だと、第32回 文部科学大臣賞作品の『花鳥風月私はここに海入れる』が、とても印象的でしたね。中学生の作者曰く『海も自然界の美しい景物の1つだと思ったから』という理由でしたが、『花鳥風月』は和歌以来の伝統的な季語なので、本来『海』を入れることはできないのです。ただ、言われてみれば日本は海に囲まれた島国なのだから、ある意味そう思って当然なんですよね。このように、私たち大人ではなかなか思いつかないような作品がたくさん寄せられるので、見ていてとても楽しいです!」

また、直近の第32回「高校生の部」大賞は、『君の青を枯野に転写してくれないか』という青春の恋を表現した作品。俳句会の重鎮に「100年に1人くらいの逸材。将来大物の俳人になるかもしれない」と言わしめたというのだ。素直な心情を綴った作品が寄せられる一方で、このようにとんでもない実力を持つ学生が現れるなど、今後が楽しみで仕方ない。

■今だからこそ「俳句」を。伊藤園が掲げる目標
今年で34回目を迎える新俳句大賞。文部科学省が後援ということもあり、学校教育にも大きく貢献するなど、もはや日本にとってなくてはならない一大プロジェクトにまで発展している。最後に、横山さんに今後の展望を聞いた。

「1989年以来、新俳句大賞は『お〜いお茶』とともに歩んできましたので、これからも変わらずお茶を飲みながら俳句を楽しんでいただけるよう邁進していきたいと思います。最近では、テレビで俳句を扱う番組が人気になるなど、若い世代の方の関心が高まってきていることを実感しています。弊社としても今後20〜30代の人にも参加していただけるような企画を打ち出し、よりたくさんのお客様に『お~いお茶』を通して俳句の楽しさに接していただく機会を作っていきたいと考えています」

心の機微を17文字だけで表現する俳句。リモートワークが普及したことで、自身の思いや考えを文字だけで伝える機会が増えた今こそ目に触れたい文化だ。

取材・文=西脇章太(にげば企画)

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