“漫画が嫌いになりそう”と専門学校を中退。恩師からの忘れられない言葉に「ほろっと涙が」と感動

  • 2022年7月28日
  • Walkerplus

叶えたい夢を持った時、誰もが最初は夢への道を一直線に突き進もうとするもの。けれど、さまざまな理由からその道から逸れることを選ぶ人もまた多い。単行本の出版という一つの夢を叶えた漫画家の、専門学校時代の恩師との思い出を描いた漫画にTwitter上で「なんていい話…!」「素敵な先生ですね」と感動の声が集まっている。

■“漫画が嫌いになりそう”…そんな心をやわらかくした、恩師の「自分のためにね」の一言
「マンガよもんが」での連載や、SNS上にて発表している息子と夫婦の日常のコミックエッセイなどで人気を集める、るしこ(@39baby_com)さん。そんなるしこさんだが、10代の頃、通っていた漫画の専門学校を中退しているのだという。

漫画の技術を教える専門学校である以上、指導する上で生まれてしまう“正しい漫画”と“そうでない漫画”の線引き。当時のるしこさんは、学校で求められる「正解のある漫画」にどうしてもなじめず、漫画を描くことが嫌いになってしまいそうだという危機感を抱えていた。

家庭の事情や漫画のほかにやってみたい仕事を見つけたりとさまざまな理由も重なり、退学を決意したるしこさん。そんなある日、専門学校の担任教師から呼び出され面談を行うこととなった。

「学校辞めたいんだって?」と問う担任に、引き留められると思ったるしこさんは説得の材料をひねり出そうとしかめっ面。けれど担任は「まっ、一応来年までは休学扱いにしとくから」と、笑顔で予想外の一言をかけた。

仕事がうまく行かなかったら学校に戻ってきなさいと話す先生に、「…止めないんですか?」と拍子抜けするるしこさん。そんなるしこさんの人となりを理解していた担任教師は、「投稿して連載をできるマンガが全てとは思ってないのヨ」と語りかける。

るしこさんと、るしこさんの描く漫画に「良い方向に人に変化を与えるチカラがある」と評する先生。「自分のためにね 絵を描くことを続けてってくれたら先生は嬉しいなあ」と、たとえ学校を辞めたとしても、るしこさんの好きな漫画を描き続けてほしいと、願いとも励ましとも取れる言葉を送るのだった。

そして現在。自身の単行本の刊行を間近に控え、るしこさんは「あれから色んなことがあったけど おかげでわたし今もマンガが大好きだよ」と、今の自分に続く、あの日の担任との会話に思いを馳せていた。

■「少しでもホッとやさしい気持ちになってくれたら」遠い日のエールの先にあったもの
「投稿して連載をできるマンガが全てとは思ってない」という先生の言葉通り、2022年7月にはSNS上で発表してきたコミックエッセイが『ちっちゃなやさしさに、今日も救われてます るしこの子育て日記』として単行本となったるしこさん。

自身でも「生き急いでいた」と思うほどかたくなだった当時のるしこさんの選択を否定することなく、これからにエールを送った恩師との忘れられない一幕に、ユーザーからは「ほろっと涙が出ました…」「いい先生に巡り会いましたね」という声とともに、Twitter上で3万件以上のいいねが寄せられた。

ウォーカープラスでは反響を受け、本エピソードを描いたきっかけや、単行本刊行への思いを訊いた。

――SNSで発表していたコミックエッセイが書籍化となりました。もともとどんなきっかけから描き始められたのでしょうか?

「もともとエッセイは見るもの描くのも好きで、夫婦の漫画をずっと投稿していました。妊娠中は孤独感が強くメンタルもやられがちで、そんな時、他の人のエッセイに支えられたところも多く、自分も積極的に妊娠出産や産後のこと、育児についてを投稿するようになりました」

――自身の日常をエッセイとして描く中で、家族の中での変化や気付きはありましたか?

「育児で大変な時、『これ漫画に出来そうだな!』と思うとイライラせず済むのが助かっています。牛乳の入ったコップを逆さまにしたときや、箱入りのゴミ袋を全部取り出してくれたときなど……(笑)。実際に漫画にして投稿して、読んだ方からの『あるある』『うちもやった』という声に救われたりしています」

――そうした作品が『ちっちゃなやさしさに、今日も救われてます るしこの子育て日記』として単行本となります。ご自身ではどのようなお気持ちですか。

「漫画を描き始めた頃には、まさか自分の本が出るなんて予想もしていませんでした。描きたいものだけを好き勝手に描いていたので……(笑)。ずっと応援してくれている方、読んでくれている方のおかげなので、ありがたいなあという気持ちです」

――るしこさんのエッセイにはいろいろな人との優しい出会いが描かれているのが印象的ですが、今回のエピソードには今に繋がるものを感じました。

「学生の頃から、人に恵まれているなと感じることが多々ありました。専門学校もそうですが、中学・高校時代にも、反抗期でもつい頼りたくなってしまうような先生が多かったです。『周囲をホッとさせる』や『和ませる』などはよく言われる言葉です。全然自覚はないのですがそうだとしたら、それこそ育った環境・周囲の優しい人々の影響なのではないかと思います。

わたしは小さい頃から不安が強く、その割に我も強い扱いにくい子供だったと思うのですが、周囲のあたたかさのお陰で腐らずに大人になり家庭を持つことができました」

――るしこさんがこれまで漫画を描いてきた中で、今回のエピソードにあった先生の言葉が励みになった部分もありましたか。

「人生の転機のような出来事でした。基本、両親は好きなようにやりなさいスタイルなのですが、流石に教師には止められると思っていたので……。学校を辞めてからも、仕事をしながら同人誌やWebサイト、また絵日記などで自分の好きなように漫画を描き続けてきました。

たとえ誰も見ていない場所でも楽しく描き続けられたのは、漫画の学校の先生が背中を押してくれたから、というのも大きいです。今も描き方について迷い立ち止まることがあったときは、先生の言葉を指針にして『わたしの描きたい漫画を描く』と進む方向を確認しています」

――さまざまな出来事や出会いがあった先の単行本刊行となります。最後にるしこさんから、読者へメッセージをお願いいたします。

「自分が妊娠中や出産直後、子供や妊婦が辛い目に遭う怖いツイートやニュースばかり目に入り、もちろん実際に心無い人はいるし、赤ちゃんを連れていれば特に、危険を予測して動くことは大切だと思いますが、心配性なわたしは、必要以上に子連れで外に出ることが怖くなってしまった時期がありました。

しかし、実際に子供と一緒に散歩や買い物に出れば、行く先々でやさしい出会いがありました。子育て中の街での出来事を漫画に描き始めたのは、当時のわたしと同じように外出に不安を感じている方にやさしい出会いも嬉しいニュースもたくさんあったよと伝えたい……と思ってのことです。この本をお読みになった方が、少しでもホッとやさしい気持ちになってくれたら嬉しいです」


取材協力:るしこ(@39baby_com)

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