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「強くて、優しかった曾祖母を思い出して…」涙腺ブワッ 情景豊かな“昭和ノスタルジー漫画”に共感続々

  • 2022年2月8日
  • Walkerplus

曾祖母「としょさん」と過ごした幼少時代の思い出を描いたコミックエッセイ『ひぐらし日記』で、幻冬舎×テレビ東京×note「#コミックエッセイ大賞」の審査員特別賞を受賞(2019年)した漫画家・日暮えむ氏。42年間1日も欠かさず「日記」を書き続けている理由や、背景を担当する息子でイラストレーターのどん太氏との共作について話を聞いた。


■小3から42年間、1日も欠かさず描き続ける「日記」

――「ひぐらし日記」が生まれた経緯を教えてください。

【日暮えむ】美大に通う息子がPCと液タブで漫画を描いているのを見て、「私も好きな漫画を再び描いてみたい!」という気持ちが沸き上がってきて、CLIP STUDIO PAINT(イラスト・マンガ制作アプリ)で漫画を描く方法を息子から教わり始めました。それで、「何を描こうかな?」と思ったとき、子供の頃の思い出を描いてみたい!と思ったのが始まりです。

――幼少期から欠かさず記している「毎日、日記」には、どのような内容を書かれていますか?

【日暮えむ】朝何時に起きて、夜何時に寝たかまでを詳細に書いています。例えば、「誰々からどんなメールがきた」「夕飯は何時ごろ何を作って食べた」「読んだ本の感想」とか、「飼っている犬と猫がどうした」まで、たわいもない日常を1日30分くらいかけて毎晩書いています。ちなみに結婚してから30年間、家計簿もつけていましたし、子供達が赤ちゃんの頃は育児日記まで書いていました。記録をつけることが好きなんだと思います。

■次回作は「取材」で得た貴重な戦争体験談を漫画に

――漫画制作における「取材」も日暮さんの大事な活動だと思いますが、その中で心に残っているエピソードを教えてください。

【日暮えむ】2021年4月17日~5月23日まで、成田市主催で「日暮えむ展」を開催していただきました。その記事が読売新聞に載ると、遠い町から90歳になるおばあ様が娘さんの運転で個展会場に来てくださいました。おばあ様のお父様は陸軍の軍人さんで、家族で満州に暮らしていたそうです。私が昔の話をコミックエッセイにして描いていることを知ったおばあ様は、「私に伝えたいことがある」とおっしゃって、わざわざ訪ねて来て下さったんです。今、そのおばあ様から伺った話を漫画にして描いているところです。

他にも、フィリピンに従軍看護婦として出征していた叔母さんの話、シベリアにおじい様が捕虜として行っていた話、鹿児島県鹿屋市の飛行場で航空部隊の訓練中に飛行機が山に突っ込んだのに奇跡的に骨折だけで済んだというおじい様の話など、みなさん、戦争の記憶を漫画にして描いてほしいとおっしゃって下さいました。この貴重なお話を、大切に描いていきたいと思っています。

■「戦争を二度と繰り返してほしくない」という願いも込めています

――背景画を担当するイラストレーター・どん太氏と、親子制作を始めた経緯を教えてください。

【日暮えむ】私が漫画を描いていると、脇から覗いていた息子(どん太氏)が「背景へたくそ。描いてやろっか?」と言ってきました。私が描いている漫画は実家の風景が多く、息子にとっても祖父母・曾祖父母の家なので背景も頭に入っています。そこで、人物まで描いた状態をクラウドにあげ、息子がそれをダウンロードして背景を描き込んで、私が最終チェックをするという形でやっています。

息子が行ったことのない、私の母校、子供の頃に遊んだ神社などは、実際に連れて行って見てもらい、私の記憶と相違が少ないようにしています。ただ、満州など写真が残っていない背景は、息子が文献を調べて想像で描いているものも多々あります。

――「ひぐらし日記」でもっとも伝えたいことは?

【日暮えむ】「家族愛」、「昔の人の強さ」、そして「優しさ」です。今回書籍化した「ひぐらし日記」では、明治生まれの曾祖母について描いています。千葉県北部の方言で曾祖母のことを「としょさん」と言います。私は幼い頃からいつも家にいて、私と弟の面倒をみてくれるとしょさんが大好きでした。としょさんは、80歳を過ぎてからも毎日七人家族の炊事洗濯をこなしていました。精神的にも肉体的にも強く、優しく、しなやかな人で、愚痴なぞ聞いたこともないし、風邪薬を飲んでいるところさえ見たことがありません。ガンになってからもその明るさを失わず、最後まで家族に笑顔を見せてくれました。

私はこの年になって、としょさんという一人の女性を見つめ、振り返ったときに、その「愛の深さ」、「逞しさ」、「心の広さ」に圧倒される思いがしました。そして、としょさんの一生を私なりに描いてみようと思ったのです。

皆さんにも、としょさんの話を読んで頂くことによって、少しでも元気や勇気をお裾分けできたらな、と思います。

――今後、どのような作品を世の中に発信していきたいですか?

【日暮えむ】2025年には戦後80周年を迎えます。今は「祖父と戦争」という話を描き終え、さまざまな人達から聞いた戦争の体験談を漫画にして描いています。私は、祖父や祖母や周りの人達から戦争の話を聞いて、「戦争を二度と繰り返してほしくない」という願いも込めて漫画を描いています。この漫画を通して、未来を担う子供達にも“その想い”を伝えていけたらなと考えています。


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