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コーヒーで旅する日本/九州編|「JUNCTION Coffee Roaster」でオーストラリアのコーヒーカルチャーを体感する

  • 2022年1月31日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

九州編の第10回は、オーストラリアでバリスタ、ロースターとして腕を磨いた田﨑さんが2020年8月に開いた「JUNCTION Coffee Roaster」。開業後およそ1年は焙煎と卸しをメインに続け、2021年11月に念願だった実店舗を熊本市東区にオープン。これから、ますます注目を集めていきそうなロースタリーカフェのこだわり、魅力に迫る。

Profile|田﨑慶貴
1989(昭和64)年、熊本県上益城郡甲佐町生まれ。20歳から6年間、自動車整備士として働いた後、飲食業を志し、退職。27歳でワーキングホリデー制度を利用し、オーストラリアへ。現地でエスプレッソを中心とした独自のコーヒー文化に触れ、コーヒーを極めることを決意。ワーキングホリデーを含めて3年のビザを取得し、シドニーのコーヒーショップ、ロースタリーにて勤務。2019年6月に帰国し、カフェの店長を経て、2020年8月に「JUNCTION Coffee Roaster」を開業。

■オーストラリアのコーヒーカルチャーが人生を変えた
オーストラリアで飲んだコーヒーに衝撃を受け、人生が変わった田﨑慶貴さん。もともと日本にいるときからコーヒーは好きで、日常的に楽しんでいたが、「シドニーで初めて飲んだロングブラック(※1)は、僕が今まで飲んでいたコーヒーとは、まったく別物でした。柑橘を感じるフルーティーな酸味、フレーバーに驚かされましたね」と田﨑さん。

もともとカフェやダイニングなど、ざっくりと“飲食”の世界で生きていきたいと思い、自動車整備士の仕事を退職、ワーキングホリデー制度を活用してのオーストラリア行きだったが、前述の体験を通して、コーヒーを極めたいという思いに変わった。

当初1年の予定だった現地滞在を3年に延長し、シドニーのコーヒーショップで週5日はバリスタとして働き、週1日はロースタリーに勤務。PROBATの25キロ、5キロの2台を備えたロースタリーで、2年半におよび、浅煎りを主体とした焙煎を間近で見て、勉強。そんな経歴もあり、「JUNCTION Coffee Roaster」では現在も浅煎りがメインだ。

柱に据えているのは、コロンビアの豆。シドニーで最初に衝撃を受けた豆がコロンビアだったこと、さらに田﨑さんがコーヒーに求めるテイストを持っているのが理由だ。

「僕が大事にしているコーヒーの味わいは、日々の飲みやすさ。最近では、ナチュラルプロセス(※2)、アナエロビック・ファーメンテーション(※3)といった生産処理により、一口目からインパクトがある豆も増えていて、それもコーヒーのおもしろさの一つになっています。ただ、僕は、個性はありながらも、ふと毎日飲みたくなるような味わいを大切にしていきたい。それもあり、現時点では生産処理はクリーンなテイスト、スムースな飲み口を表現できるウォッシュド(※4)に特化しています」と田﨑さんは話す。

■コロンビアといった中米のコーヒーに惹かれて
豆の種類は常時シングルオリジン2種と昨今のコーヒーショップでは珍しく、選択肢は少ない。その理由を「お客さまの日常を彩るコーヒーでありたいので、選択肢の多さよりも“いつものこの味”と思っていただけるよう、あえて種類を絞っています。もちろん選べる楽しさがあるのも良いのですが、“JUNCTION Coffee Roasterのコーヒーといえばこれ”というぐらい普遍的な味わいを追求していきたくて」と田﨑さん。

現在、生豆はCOFFEE COUNTYをはじめ、スペシャルティコーヒーコミュニティのTYPICAなどから仕入れている。そんな縁もあり、2021年秋にCOFFEE COUNTYのロースター・森さんと一緒にコロンビアに足を運んだそう。

「森さんから声をかけていただき、なかなかないチャンスだったので同行させていただきました。僕にとってコロンビアは自身のコーヒーのイメージを変えてくれた思い入れのある産地です。実際にウィラ地方の農園を見ることができ、さらに収穫したての豆で淹れたコーヒーをテイスティングする機会に恵まれ、今後の店の方向性を定める上でヒントになりました。取り扱う豆をコロンビアオンリーにするのか…、今後、毎年産地に足を運ぶのか…。そんなことを帰国後、おぼろげにですが考えています。やってみたいことは確実に増えましたね」と渡航を振り返る。

■人と人が交わる場所に
2021年11月に開いた店舗は、熊本市東区と市街中心部からはやや離れた立地。暮らす人、働く人が多いエリアを開業の地に選んだ。

「なかなか良い物件に恵まれず、開業から実店舗を持つのに時間を要してしまいましたが、もともと屋号であるJUNCTIONには、人と人とが交わる場所でありたいという思いを込めています。目指しているのは、行き交う人がフラリと立ち寄れるようなオープンな空間。仕事や読書をしながらのんびり過ごしてしていただいても良いですし、コーヒーだけ買ってパッと帰っていただくでも良い。この場所でさまざまな人との出会いや、新たな発見があるような店でありたいと思っています」(田﨑さん)

実際、店舗がある東区錦ケ丘は総合病院や学校などに近く、かつ住みやすいと評判の健軍町エリアに位置。日常に根付くコーヒーショップを目指す「JUNCTION Coffee Roaster」にとっては、理想的な場所かもしれない。

■毎日ふと飲みたくなるコーヒーを目指して
「JUNCTION Coffee Roaster」の店舗には、焙煎機はない。焙煎はGluck Coffee Spotの記事でも触れた植木町のCalmest coffee shop内のシェアロースターを活用。「Gluck Coffee Spotの店長の三木さんとは知人で、Calmest coffee shopにシェアロースターを立ち上げる際にお手伝いさせていただきました。その縁で、現在もその焙煎機を利用させていただいています」と田﨑さん。

焙煎度合いは浅煎りに特化し、店舗専用に作っているエスプレッソブレンドも同じく。どうしても酸が立ちやすいため、エスプレッソを抽出するにあたり、甘味を最大限引き出せるようにメッシュ(※5)や抽出圧などを細かく調整。さらに、焙煎後の豆のエイジング(※6)にも気を配り、エッジの取れた丸みのある味わいを表現するよう心がけている。

トレンドに左右されるではなく、独自のコーヒー理論を持ち、堅実にそれを表現する「JUNCTION Coffee Roaster」。オーストラリアで自身が体感した、“日常に寄り添うコーヒー”を発信し続けるショップとして、今後ますますファンを増やしていきそうだ。

■田﨑さんレコメンドのコーヒーショップは「タリル珈琲」
次回、紹介するのは福岡県朝倉市にある「タリル珈琲」。
「2021年初旬に初めて店主の稲永さんとお会いしました。『タリル珈琲』さんは2021年春と僕の店舗よりも少し早くオープンされていて、開業にあたり、いろいろお話もおうかがいしました。コーヒー以外に、フードやスイーツも用意されていて、こだわりもしっかり持たれている。地域性のあるおもしろいお店だと思います」(田﨑さん)

【JUNCTION Coffee Roasterのコーヒーデータ】
●焙煎機/PROBAT PROBATONE 5
●抽出/エスプレッソマシン(LA MARZOCCO strada AV-3)、ハンドドリップ(Kalita ウェーブドリッパー)
●焙煎度合い/浅煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/シングルオリジン2種、200グラム1600円〜




※1…エスプレッソを湯で割ったもの。アメリカーノとほぼ同じだが、アメリカーノがエスプレッソを入れて湯で割る一方、ロングブラックは湯→エスプレッソの順番で作る
※2…収穫したコーヒーの実を、そのまま果肉がついた状態で天日干しする方法
※3…嫌気性発酵。コーヒーチェリーを密閉容器に入れて酸素を遮断し、微生物の活動を活発化させる方法
※4…コーヒーの実の果肉を機械で取り除き、発酵。さらに、その後の水洗過程で残りの付着物を除き、乾燥させる方法
※5…エスプレッソを抽出する際のコーヒー粉の挽き目
※6…焙煎後、数日寝かせる行程

※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

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