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解けなくても楽しめる「ユニーク入試問題」の数々!まさかのトラップや笑える解答も

  • 2022年3月3日
  • Walkerplus

今や、受験シーズンの真っ最中。当時必死に覚えた年号や公式もすっかり忘れ、もう入試には関心がないという社会人も少なくないだろう。だが、実は入試問題は解けなくても楽しめるものがたくさんある。ユニークな入試問題をTikTokやInstagramに投稿している現役医学生のyou.studyさんに、意外と知られていない「入試問題のおもしろさ」について聞いてみた。

■「自分の点数を自分で決められる」問題には恐ろしい罠が
関西の大学で医学部に通っているyou.studyさん。かつて塾講師として働いた経験を生かし、入試問題を紹介する動画をTikTokに投稿したところ大反響。3か月でフォロワー5万人を達成。総再生回数は4000万回を突破した。

そのユニークな入試問題をいくつか見てみよう。例えばyou.studyさんが「日本一恐ろしい入試問題」と名付けた、京都大学の入試問題(1995年度 後期 数学)から。

「ある関数について考察していく問題なんですが、2問目が『あなたの好きな自然数を関数に代入せよ、そしてその値をこの設問におけるあなたの得点とする』といった内容になっているんです。入試問題なのに、自分で好きな点数を決めていいって言ってるんですよ、ぶっ飛んでますよね!」

自分で得点を決められるなんて、普通に考えれば夢のようなサービス問題。だが、もちろん京大はそんなに甘くはない。「好きな自然数を代入せよとありますが、実際は好きな数字を選んでも全然ダメなんです。結論から言うと『6の倍数以外は全て0点になる』んです」

怖っ! 最初に問題を見たときは、解けなくても力技で順番に代入していけば何か点数がもらえるんじゃないか、と期待できたのだが…。やってみよう。

1を代入すると0点
2を代入すると0点
3を代入すると…また0点
4を代入しても…やっぱり0点

適当に1から順に代入していくと、0点が積み重なっていく。しかも、数字が大きくなると計算が複雑になるので、時間がどんどんなくなってしまう。「もしかしたら、どんな自然数を入れても0になるのではないか…。本番でこの状況になったら、疑心暗鬼でパニックになりますよね」

実はこの問題は7で割った時の余りの話なので、6まで代入すれば答えの見通しは立つという。だが、限られた時間とプレッシャーの中でそれを見抜けたかどうか。時間をかけて5まで代入しても0点と分かり、あきらめてほかの問題に移ってしまった受験生がいたとしたら、その無念さは察するに余りある。

「自分の得点を決められる、という問題なのに、実はしっかり考察できていないと0点になってしまう怖さ。そういった点から『日本一恐ろしい入試問題』と名付けてみました」。you.studyさんが「これはバズる」と予測した通り、「怖すぎやろ…」「好きな数じゃないじゃん!」とコメントが付くなどかなりの反響を呼んだ。

■穴が多すぎる穴埋め問題や、グラフに浮かび上がる謎の…
入試といえば難しい問題ばかりというイメージがある。だが、なかにはほっこりするものも。「ある大学の入試では、いくつかの関数をグラフに描くという内容が出題されました。グラフを描かせる問題って、何種類も描くことは普通ないんですよ。しかも、その中には描くとただの直線や円になるという、めちゃくちゃ基本的なものもありましたし。これは何かあるな、と思いながら作図していくと…。なんとネコの顔が浮かび上がったんです」

わざわざ平凡な直線や円の式を使ってまでネコを描かせようとするあたり、遊び心がすごい。「ただこの問題、解けた人たちからしたら笑い話ですが、解けなかった人たちにとっては結構ムカつく問題なんじゃないかなって。モヤモヤしながら帰って、解答速報見たらネコが笑ってるわけですから。絶対『ふざけんな!』ってなったと思います」。

そんな受験生の思いを代弁して、you.studyさんはあえて「日本一ふざけた入試問題」と呼んでいるそうだ。ほかにも、文章の穴埋め問題の穴が笑えるくらいに多すぎて「ほとんど作文」「科挙やん」とのコメントが寄せられた壮大な問題などもあるそう。入試問題は本当に奥が深い。

■日本一短い入試問題は、シンプルゆえの美しさに驚嘆
シンプルすぎる問題は、逆に受験生を戸惑わせることもある。再び京都大学の入試問題(2006年度 後期 数学)を取り上げる。「この問題は入試問題の中でも1、2を争うくらい有名で、一部では伝説の問題なんて言われています。とにかく短いんです」

「tan1°は有理数か.」

「たったこれだけ。補足なども一切ありません。しかもこの問題、数学の試験の最後の問題だったこともあり、多くの受験生が面食らったと思います。ただ問題自体は非常によくできていて、数学の基本である、背理法と加法定理が分かってさえいれば誰でも解けるんです」。

基本的な知識で解けるが、それをいかに思いつくか、という発想力が問われるという。「問題文の短さだけでなく、完成度の高さもぜひ堪能していただきたい美しい1問です」

さらにyou.studyさんが「2000年以上解かれていない入試問題」と名付けた問題も興味深い。「ある大学の過去問で、鏡に映った姿が上下は逆にならないのに左右は逆に見える理由を説明せよ、といった問題が出たんです」。

身近なテーマで、簡単そうに見えるが、論理的に証明しようとすると意外と難しいという。「僕もなかなか解けなくて、気になって調べてみたら、なんとまだ定説はないみたいです。左右反転する理由は古代ギリシアでも活発に議論されていたそうですから、実に2000年以上解かれていない問題となります。そんな問題がいきなり入試に出たわけですから、そりゃ驚きますよね!」

you.studyさんは、ここでは難問を完璧に証明できるかどうかよりも、自分なりの答えをいかに論理的に組み立てられるかを見ているのでは、と言う。「身近な現象にもかかわらず定説がまだないテーマに、どれだけ論理的な回答で真理に迫れるかを、出題者が受験生に問うている。そう思うと、少しかっこいいなとも思いましたね」。

ちなみにSNSでは「鏡ってそういうものだから」「チコちゃんのやつでやってた」などのコメントが寄せられている。

■東大から出題された「日本一有名な入試問題」とは
東京大学の2003年度数学の入試では、こんな問題が出された。

「円周率が3.05より大きいことを証明せよ.」

you.studyさんによると「こちらはおそらく日本で一番有名な入試問題」という。なぜ有名かというと、テーマの円周率がポイントという。

「実はこの問題が出される前に、ある有名な塾が『これからはゆとり教育の一環として円周率は3.14ではなく3として計算させるようになる』という話(結局はただの噂)をしていたんです。この話はニュースでも取り上げられ、世間でも大きな話題になっていました」

そんな円周率が話題になっていた真っ只中に、東大が入試でこの問題を出した。「タイミングといい、問題文といい『円周率を3にするなんてとんでもない!』という東大からのメッセージでは?と大いに盛り上がりました。もちろん、その真意は出題者しか分からないわけですが」

問題文のシンプルさに加えて、メッセージ性の強そうな問題。さまざまな所で紹介されて、今でも多くの問題集に掲載されているという。「あと、実は有名な受験ドラマにもちゃっかり映ってたりしてます」

■ユニーク問題を扱うきっかけは、塾講師時代の悩みから
これらの入試問題、実は塾講師時代に、やる気がない生徒の注意をひくためのネタだったという。「ある時、授業中に補足のつもりで『これと似た問題が昔、東大で出たことあって…』と東大の問題を紹介しようとしたら、退屈そうにしていた生徒たちが全員バッ!と前を見て話を聞こうとしたんです。ほんとに一斉に向いたんでびっくりしました」。

そしてそのまま問題にも取り掛かり、授業も聞き始めたという。「紹介したのは普通の問題だったんですけど、たぶん『東大で実際に出た問題なら聞くか』って思ってくれたんでしょうね」

塾講師を辞めてからも「やる気のない子に勉強を始めてもらうには『まずおもしろい入試問題を解いてもらう』のが効果的なのかな」という思いは残った。この方法でもっとたくさんの中高生のやる気を引き出せたら、という思いがSNSを始めたきっかけになる。

「ありがたいことに『この入試問題シリーズ大好き』と言うコメントをたくさんいただきました。勝手な偏見ですが、TikTokってあんまり勉強系は求められていないイメージだったので、こんなに反響があるとは思ってもいませんでした」

今後はもっと勉強の本質的なところまで踏み込んでいきたいという。「今は入試問題だけを紹介していますけど、勉強って何も大学受験のためのものじゃないんです。海外に憧れて英単語帳を買ってみる、料理の腕を上げるために新しいレシピに挑戦してみる、スイングスピードを上げるために、バットの振り方を調べてみる…。みんな立派な勉強なんです。今後は受験だけじゃなくて、もっと幅広いジャンルでみなさんの勉強を始めるきっかけになる投稿ができたら」

取材・文=折笠隆

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