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初心者必見!勘九郎と七之助らが全国を巡る「錦秋特別公演」

  • 2021年9月30日
  • Walkerplus

中村勘九郎、中村七之助を中心に、中村屋一門が2005年から毎年行っている全国巡業公演「錦秋特別公演」。昨年はやむなく全公演中止となったが、今年は全国15カ所での公演が予定されている。

歌舞伎を観る劇場は限られているため「普段、歌舞伎公演が行われない土地に出向き、歌舞伎が初めての方にもたくさん観ていただきたい」(勘九郎)とスタートした企画。歌舞伎舞踊など2演目を用意し、2人が素顔で登場して語るトークコーナーも人気だ。今春に開催された巡業公演で感じた思いから、今回の演目の見どころや意気込みなどを2人が語った。

【演目と解説】
■1. 浦島
竜宮城へ招かれ、世にも美しい乙姫と夢のような時を過ごした浦島。現実の世界に戻った浦島は、乙姫への恋心を募らせ、土産にもらった玉手箱を開けてみると…。

古くから伝わる有名な伝説を舞踊化した一幕を、中村鶴松が踊る。

■2. 甦大宝春日龍神(よみがえるたいほうかすがりゅうじん)
鎌倉時代の高僧・明恵上人(みょうえしょうにん)が、仏跡を拝みに天竺(てんじく)へ旅立つことを報告しに、春日神社を訪れた時、村の男女が現れる。実は姿を変えた龍神と龍女。そののち、日本にとどまるよう春日大明神のお告げを受けた明恵上人は、大急ぎで京都の栂尾(とがのお)へ帰る。そして春日山では…。

春日大社「第六十次式年造替記念」の奉納舞踊として、平成26年に創作された演目を7年ぶりに上演する。

■3. トークコーナー
勘九郎・七之助・鶴松が挨拶と楽しいトークタイムを展開。

【コロナ禍の公演中止を経て】
前回公演の中止後、今年3月~5月、5カ所で『春暁特別公演』を開催することができた。

「コロナで自粛期間中、舞台が中止になっている時は中村座など過去の映像で会場いっぱいのお客様を見て、いつこれが取り戻せるか、これが夢にならなきゃいいなという思いでずっといました。幕が開いた時、いっぱいのお客様が声を出せない分、拍手で答えてくださって。それ以上叩いたら手が痛くなっちゃうよっていうぐらい、思いを込めて手を叩いてくださるお客様お一人お一人に、待っていてくださったんだという安心感とうれしさが込み上げてきました。

こういう状況の中、わざわざ足を運んでくださる、観に来てくださるということに感謝しかなかったです。県境移動して行くからには、今回はまた気を引き締め直して、徹底して体調管理、感染のリスクを減らしてやりたいと思っています。そうやって待っていてくださるお客様がいらっしゃるんですから」(勘九郎)

「どういう状況かまったくわからない中、幕が開いた時にお客様がいっぱいでびっくりしたのと、幕が閉まってから兄が『うれしいね!』と言ったのをすごく覚えています。役者というのは、世の中がこのように混乱している時に、やっていていいのかどうか悩むような職業で。

でも、お客様が少ないのは当たり前の状況下で、あのようにたくさんの方が来てくださり、温かい拍手をくださって。役者をやっていてもいい、やっている意味があるんだなというのを改めて感じた3月でした。なので今回も、どんな状況になるのかわかりませんけれども、少しでも皆様のお役に立てたらと思っています」(七之助)

【『浦島』の見どころ】
これまで巡業公演で勘九郎が何度も演じてきた演目を、今回は中村鶴松が踊る。

「初めて歌舞伎をご覧になるお客様には、観やすい演目じゃないかなと思います。浦島太郎の物語の後日談という形で踊りにしていて、ストーリーもわかりやすいですし、曲調もとても華やかで。二枚扇というお扇子を2本使うテクニカルな踊りがあったりして、目にも楽しい踊りです。

鶴松は近年、いろんな役を経て大きくなってきています。前回の『三ツ面子守』に続き、今回も何か1本彼に任せたいと思いまして『何がやりたい?』と聞いたら、彼が『浦島をやってみたい』と言ったので。私の『浦島』は父が大変気に入ってくれていた踊りなので、それをしっかり鶴松に伝えられたらと思っています」(勘九郎)

【『甦大宝春日龍神』の見どころ】
「お能の『春日龍神』をもとにした舞踊で、春日大社の奉納舞踊として兄弟で踊らせていただきました。私たちは龍神龍女なんですけれど、最初は里の者で春日の野の四季折々の素敵さを踊り、その後は龍神龍女として出て、先ほどとは打って変わった迫力のある踊りで踊り納めます。最初はお芝居仕立てが強くて最後は荒々しい龍神龍女の踊りと、両方違った雰囲気の踊りを楽しんでいただけるような舞踊です」(七之助)

【ちょっと不思議な話】
「春日大社で上演した時は野外で、開演前まで降っていた雨が本番中のみあがり、終演後には土砂降りになったんです。龍神は水の神様だったので、2人で『願いが通じたのかな』なんて冗談で話していたんですが、こういう神様のものはちょっと魔訶不思議な現象が起こるようなことが多々あるので…。神様の踊りの時には心の中で今の世の中が平穏無事であるようにと思いつつ踊っているので、今回は特に大きく心に秘めて踊りたいと思っています」(七之助)

【初心者への演目の選び方】
「踊りはセリフがないので伝わりづらいかもしれませんが、そこは敢えて歌舞伎本来の演出、楽しさで観ていただけたらと思っています。初心者向けに何かをするということはしていないですが、とっつきやすいものを選ぶようにはしていますね」(勘九郎)

「各地のホールは、なかなか大劇場に行けなくて初めて生の舞台を観る方が多いと思いますので、演目を決める時に、初めて歌舞伎をご覧になるお客様のことを考えますが、この演目は難しいからわかりやすくしよう、ということはあまりしないですね。僕たちがやることは、兄が言った通り、変わらずに。それは『どこへ行っても一生懸命』という父の教えで。どこへ行っても変わらず私たちのやってきたことをお見せするのみと思っております」(七之助)

【トークコーナーのこと】
公演の最初や演目の間に素顔でスーツ姿の2人が登場。客席に降りて観客の質問に答える“芸談”が、今回は公演の最後に鶴松と3人で登場する“トークコーナー”に。

「素の私たちが出て行って皆様にお話をすることで、お客様との距離も縮まりましたし、“芸談”ではそういう交流ができるのかなと。今回は初の試みで、一番最後にトークコーナーを持って来ました。すべて観終わったあとにスーツ姿で出ていくので、ちょっと違った感じでトークを聞いていただけると思います」(勘九郎)

「巡業の楽しみだった現地の方々との触れ合いが少なくなったこと、公演が終わった後に各地のおいしいお店に行ったり名物を食べることが難しくなったのは残念です。でもトークコーナーで客席に降ることはできなくても、事前に質問を書いていただいてお客様の想いを読み上げたり。

今までよりワンクッション遠いコミュニケーションになってしまうかもしれませんが、質問に答えたり近況報告や考えを共有して、客席も舞台も一体となって作り上げていけたらと思います。今回は最後にトークコーナーがあるので、こちらも緊張が抜けていますし、ざっくばらんに話が出来ればいいなと思っています」(七之助)

【これまでに印象に残った質問は】
「3、4年前までは『七之助さんいつ結婚するんですか』という質問が大変多かったですが、2年ほど前ぐらいからパタっとなくなったのはお客様もあきらめたのかな(笑)」(勘九郎)

「3年前ぐらいは各地各地で絶対質問されて。ほんっとに結婚のことしか言われなかったんですけど、最近ゼロです(笑)。それまで特に言っていなかったのですが、僕がメディアで『結婚しない』って何度も言っているから、言っても無駄だとあきらめられたのかなと(笑)」(七之助)

【メッセージ】
「お客様にほんとに安心安全にご覧いただくということが私たちの思いでございます。感染対策にはスタッフも含めて厳しく徹底的に管理はいたしますから、こういう状況の中、少しでも現実を忘れて非現実の歌舞伎の世界に飛び込んでいただけたらうれしいです。お客様に楽しんでいただくために、私たちも全力を出して共演者と力を合わせてやりますので。

今はなかなか大手を振って観に来てほしいと言いづらい状況が続いているので悔しいですけれども、ほんとに心の栄養になればいいなと思います。また今回は大雨の被害にあわれた方々がたくさんいらっしゃる土地にもうかがいます。演劇、歌舞伎によって心のケアというか、少しでも癒やすことができればいいなと思っております」(勘九郎)

「兄が申した通りでございます。まだまだ歌舞伎を観たことのないお客様がたくさんいらっしゃいますので、そういう方々に歌舞伎の魅力を少しでも伝えられたら。今、こういう状況下で来てくださるお客様は、私たち役者にとりましては、ほんとにありがたいの一言でございます。巡業で各地を回ることについては賛否両論あるかもしれませんけれども、来てくださったお客様お一人お一人に私たちが一生懸命舞台を届けて、明日の希望につなげていただければ幸いです」(七之助)

STAGE
「中村勘九郎 中村七之助 錦秋特別公演2021」

日時:10/19(火) 11:30/15:30開演
会場:東大阪市文化創造館 Dream House 大ホール

日時:10/20(水) 11:30/15:30開演
会場:神戸国際会館 こくさいホール

出演:中村勘九郎、中村七之助、中村鶴松ほか
料金:S席9000円 A席8000円 B席6500円 錦秋グッズ付きチケット9500円(前売のみ。錦秋特別公演2021特製グッズを当日会場で手渡し)
問:キョードーインフォメーション 電話:0570・200・888
公式HP:http://kinshu2021.com/

取材・文=高橋晴代

※新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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