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コンプレックスだったアトランタ五輪“マイアミの奇跡”が感謝へ、前園真聖からアスリートへのエール

  • 2021年7月28日
  • Walkerplus

東京2020が開幕。25年前、1996年のアトランタ・オリンピックでブラジルを破り、“マイアミの奇跡”と呼ばれる快挙を成し遂げた日本だが、続くグループリーグ第2戦ナイジェリア(同大会で金メダルを獲得)戦に0-2で敗れ、第3戦のハンガリー戦で3-2で逆転勝利を収めて2勝1敗の成績を残したものの、得失点差で3位となりグループリーグ敗退となった。当時のサッカー五輪代表チームをキャプテンとして牽引した前園真聖さんに話を聞いた。

――東京2020が開幕しました。1年延期となり、さまざまな意見のあった中で迎えた開幕、どう感じていますか?
【前園真聖】無観客になったことで、僕自信もそうですが、逆にテレビで見る機会が増えた方も多いと思います。選手の活躍もあって、SNSなども含めて、いろいろな場面でスポーツのポジティブな面が伝えられているところを目にします。ちょっと心配な部分もありましたが、思った以上に皆さんが盛り上げて、楽しんでくれているんじゃないかなと感じています。

――注目している競技、選手は?
【前園真聖】せっかくの機会ですから、いろいろなスポーツ、競技を見るようにしています。もちろんサッカーには注目していますし、自分はバスケにもかかわっていたので、バスケは強化試合からずっと見ていました。開幕直前の強化試合では、世界ランク7位のフランスに勝利するなど、八村塁選手、渡辺裕太選手、馬場雄大選手といった海外で活躍する選手が加わり、チーム力もアップしているので、格上ばかりですが期待しています。

――サッカー男子、日本は2連勝スタートですね。どう見ていますか?
【前園真聖】初戦は硬さも見られましたが、難しい初戦で勝ち点3をしっかりと獲得。グループ初戦は勝つことが一番大事なのでこれは大きかったですし、2戦目で強豪のメキシコにもしっかり勝てているので、自信を持ってプレーできているなと思います。久保建英選手、堂安律選手と、決めるべき選手が決めて、チームの状態もすごくいいなと感じています。グループ3戦目はフランスが相手。負けるとグループ突破できない可能性があるため油断はできないですが、持っている力を出し切れば、決勝トーナメントに進出し、メダルも十分に狙えるチームだと思います。

――前園さんご自身はアトランタ・オリンピックでブラジルに勝利、“マイアミの奇跡”と呼ばれる快挙をエース、そしてキャプテンとして成し遂げました。あらためて、25年前のオリンピックはどんなものでしたか?
【前園真聖】今とは全く状況が違っていて、サッカーでは28年ぶりの出場。試合への準備、相手チームの分析、やれることをやったなかで戦いましたが、海外で活躍する選手も僕らのころはいなかったですし、経験値など、今の選手たちとは大きく違いました。今は多くの選手が海外で活躍し、オリンピック世代にもそうした選手がそろっているので、選手としての経験値や、世界で戦うときのメンタリティーも全く違うと思うし、それは試合を見ていても感じますね。僕らのときは、自分たちが持っているものをぶつける、自分たちが世界にどれくらい通用するのかを試す場でしたが、今はメダルを目指してやっている。そこは大きく違いますね。

【前園真聖】それから、実はアトランタ・オリンピックがコンプレックスだった時期もありました。僕の現役生活を振り返るとき、今でも“マイアミの奇跡”のことを言われます。大会は1996年で、僕自身が現役を引退したのは2005年。現役生活はアトランタ・オリンピックのあとも続いているわけですが、僕の一番大きい実績としては、あのブラジル戦の勝利ということになります。当初は、それが自分の中ではすごくいやというか、コンプレックスでもありました。ただ、逆に言えば、あれがなければ今の自分もないと思うし、メダルを取ることはできなかったけれど、オリンピックという舞台を経験させてもらったこと、ブラジルに勝てたこと、そのおかげで自分があるんだなと時間とともに消化できて、感謝に変わりました。今の自分があるのは、あのオリンピックのおかげだなと感じています。

――当時、今のような立ち位置でいるご自身の姿は想像できていましたか?現在のサッカーとの距離感について思うところを教えてください。
【前園真聖】想像してなかったですね(笑)。現役を引退してだいぶ経っているので、(サッカーを)外から俯瞰して見ることが多いし、選手のインタビューなども含めて、今の選手たちとの距離も当然あります。でも、サッカーはずっと見ているので、自分なりの楽しみ方、伝え方については考えてやっています。ワールドカップもオリンピックもそうですが、サッカーが注目されて、その結果によって、サッカー人気も日本では左右されていくので、選手たちにはがんばってほしいし、自分はそれを伝えていく役目なのかなと考えています。

――日本サッカーの世界との距離について思うことは?
【前園真聖】オリンピックが終わったときにその結果も踏まえてだと思いますが、ワールドカップでも、ある程度、グループリーグを突破できるようになっていて、ただ、やっぱり決勝トーナメントに進んでベスト16、ベスト8になると、当然、強豪国と当たってくるので、難しさもあります。今回、フル代表ではなく、24歳以下の世代で、結果も含めて、どれくらいやれるのかというところ、それが次のワールドカップにもつながると思うので、そういう意味でも大切な舞台。僕はこの2試合を見て、十分やれるんじゃないかなと感じています。

――アスリートにとって4年に一度の舞台、オリンピックとは?
【前園真聖】他の競技とは違う部分もあるかと思いますが、サッカーでは年齢制限があって、このタイミングでしか出られない選手たちがいるので、久保選手や堂安選手らにとってもフル代表とは違う形で日の丸を背負って戦える特別な大会だと思います。これを経験するのとしないのでは全く違う。ワールドカップもそうですが、選手たちにとって目指すべき大きな舞台だと思います。

【前園真聖】サッカーでは、メキシコ・オリンピックを最後にメダルを取っていないので、それだけ難しいもの。ブラジルが自国開催のときに本気でメダルを取りにいったように、今回は本気で、オーバーエイジも含めて、オリンピックのメダルを取りにいくチームになっているのではないかと思います。

――オリンピックの楽しみ方は?
【前園真聖】無観客になった分、テレビでいろいろなスポーツを見られると思うし、これだけの競技を一斉に開催する大会はオリンピックしかないと思います。僕自身も初めて見る競技があるし、それこそスケートボードの堀米雄斗選手のように、ストリートでやっていたものがオリンピックの競技になって、彼が金メダルを取ることで注目されて、子供たちの目標になって、そういういい循環になっていると思うので、いろいろなスポーツをたくさんの人にみてほしいと思います。それはパラリンピックもそう。自分の好きなスポーツもいいですが、なんでもいいから見てみて、興味を持ってたくさんの人がその魅力を広げていってもらえればなと思います。

――最後に参加アスリートへのエールをお願いします。
【前園真聖】メディアやテレビではどうしても、注目されている選手や競技、メダルを取った選手がクローズアップされますが、オリンピックに出るということがすごく大変なこと。しかも今回は1年延期されて、その1年を選手たちはいろいろな思いで過ごしてこの舞台に立っています。コロナ禍の中で、思うような練習ができず、思うようなことも言えない中で開催された大会なので、選手たちには純粋にこのオリンピックを一生懸命、楽しんで、全力を出してほしいし、結果はそれぞれあると思うけど、自分がいままでやってきたこと、この1年大変な思いをしたことをとにかく競技にぶつけて、とにかく楽しんで、一生懸命、全力を出してもらえれば、それが見ている方にも伝わると思います。

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