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地方芸人の“都落ち”イメージは間違い?「一戸建て」の夢を叶えた“よしもと住みます芸人”の大転換

  • 2021年3月17日
  • Walkerplus

仕事やメディア露出の機会が多いことから、活動の拠点を東京や大阪に置くことの多いお笑い芸人。そうしたなか、あえて地方に住み、地域に根差して活動するプロジェクトが吉本興業の「よしもと住みます芸人」だ。“のりを”と“たく”によるお笑いコンビ「もっこすファイヤー」は、2011年のプロジェクト開始当初から熊本県を拠点に「住みます芸人」として活動中。芸歴の半分以上となる約10年間を熊本で過ごし、現在では熊本のローカルタレントとして定着した二人に、東京時代からの仕事や生活の変化、住みます芸人として活動を続ける思いを聞いた。

■早朝のバス停で営業、東京とは一味違う“住みます芸人”の活動

――まず、よしもと住みます芸人プロジェクトはどんな活動なのか教えてください。

のりを「47都道府県に芸人が実際に住んで、地元の魅力を全国に発信する仕事をやっています」

――お二人が、熊本の住みます芸人になったきっかけは?

たく「もともと二人とも熊本県出身で、高校の同級生だったんです。住みます芸人になる前は東京で活動していて、このプロジェクトが発足する際に熊本出身ということで声がかかりました。基本的にその土地出身の芸人が就任することが多いですが、なかには『自分からやりたい』と手を挙げる芸人もいます」

――住みます芸人の活動の中身は?

たく「たとえば、小学校での漫才ワークショップですね。何度か授業に足を運んで小学生に漫才をレクチャーして、最後は小学生に漫才を発表してもらうところまでやっています。今もまた別のワークショップでちびっ子たちに漫才を教えています」

のりを「小学校ごとの生徒数って少なくて、複数の小学校からひとつの大きな中学校に進むんです。なので新しい環境でコミュニケーションが円滑にできるよう、『漫才から学ぼう』という意味合いもあって、教える側としてもやりがいがあります」

――熊本住みます芸人となって約10年、印象に残っているエピソードはありますか?

のりを「いろいろなお仕事をさせていただいていますが、思い出と言えば朝市での営業ですね。朝の8時からの営業だったんですが、担当の方にステージとして案内されたのが、道路の歩道に用意された一畳ほどのスペース。道路を渡った反対側にパイプ椅子が並んでいて、ステージと客席の間の道路は通勤ラッシュの車がブンブン通っている(笑)」

たく「しかも、ステージの目の前がバス停だったんですよ。ネタのオチのところでバスが停まって、乗客は漫才をやっているとはわかってないから目と目が合うだけ(笑)。東京や大阪では味わえないような体験でした」

■“住みます芸人御殿”が建った……仕事量は東京時代の3倍以上に

――住みます芸人として活動するなかで、熊本での認知度の変化は感じますか?

のりを「住みます芸人としての仕事も増えてきて、地元のTV番組に出させていただくようになって、街でお声がけいただくことはやっぱり多くなりました」

――仕事量は東京を拠点にしていた頃と比べてどのぐらい変化したのでしょうか。

たく「東京で一番多いときと比べても3、4倍にはなります。お笑いの仕事でこんなにスケジュールが埋まるってことは東京ではなかったですし。東京時代はアルバイトもしていましたが、ありがたいことに熊本に戻ってからは二人とも芸人の仕事一本でやれています」

のりを「二人とも家を建てましたからね。“住みます芸人御殿”を(笑)」

たく「悪いようには捉えないでくださいよ(笑)!熊本の戸建ては東京に比べたらリーズナブルなお値段ですから!」

――お笑い1本で食べられて、しかも家まで建っちゃうなんて、住みます芸人には夢がありますね!お二人とも地元に戻ってきたことで、コンビの関係性への影響はありましたか。

のりを「かなり違いますね。東京時代は芸人仲間と遊ぶことが多くて、相方とは仕事のときだけ会うような感じだったんですよ。それでいて仕事では二人きりのことが多い分、喧嘩になることもあったんです。でも熊本に帰ってからは遊ぶときもずっと一緒で、いろいろ話すなかで改めて仲良くなりました。高校の同級生にまた戻ったような感じがありますね」

――興味深いです。それは住みます芸人に共通する変化なのでしょうか?

たく「基本的に住みます芸人はコンビ仲がいいですね。自分のやりたいことを地元でのびのびできる分、あまり関わらなくなったコンビのパターンもあるかもですが(笑)。僕の勝手な分析ですが、地方では相方しか仲間がいないなかで戦うしかないので、仕事の環境として“喧嘩している場合じゃない”のかもしれません」

■「東京で売れたい」から「地元に根付いて」、芸人像の大転換

――とはいえ、お笑い芸人の多くは東京や大阪で活動しているなか、地元に戻ることへの葛藤はありませんでしたか?

たく「“東京で売れたい”と思って芸人をはじめました。なので、最初はこのプロジェクトがどんなものになるか把握しておらず、正直なところ“躊躇”はしました」

のりを「僕の場合も『いつか東京に戻りたいな』って気持ちが最初はありました」

――地元で活動するなかで心境はどう変わってきたのでしょうか。

たく「東京で一発当てたいという、今まであった芸人像とはやっぱり違ってきていますね」

のりを「今は“地元に根付いていきたい”なっていう思いが強いです。全国、全世界に熊本のよさを発信していけるような活動をやっていきたいなと」

――住みます芸人となって、いつ頃から“地元志向”にシフトしていったのですか?

たく「僕は最初こそ躊躇う気持ちもありましたが、住みます芸人として熊本に帰ると決めてからは、“故郷に骨を埋めよう”と思ったんです。もしM-1グランプリをとったとしても、東京での仕事は熊本から通いでやるつもりでした」

のりを「僕はプロジェクトがはじまって3、4年目ぐらいです。こっちでレギュラーの仕事も増えてくると、やっぱり楽しくなってきてやりがいも出てきたんですよ。そこが自分の中で心境が変わったターニングポイントかもしれないですね」

■目標は「熊本芸人のおもちゃになりたい」

――現在では熊本の芸人として定着したお二人ですが、地元に根差せたカギはどこにあると思いますか?

たく「やっぱり地元愛ですかね。住みます芸人は実際に住んでいるからこそ、その土地のおすすめしたいお店や名所なんかもポンと出てくる。そういう我々にしかできない発信が強みじゃないかと思います。そういう話だけでちょっと旅行した気分になれますよね」

――ちなみに、お二人がおすすめする熊本の観光スポットは?

たく「僕は地元の上天草で見る夕日をおすすめしたいです。天草の島々を天草松島と呼びますが、松島というだけあって松が多くて雰囲気もよく、島と島を結ぶ天草五橋も観光スポットになっています。松と橋と海とを全部セットにして見られるここの夕日は、『日本一の絶景ポイント』だと思っています」

のりを「海のスポットが出ましたけど、熊本は山もすごくいいんですよ。阿蘇山では昔から野焼きをしてきたので、カルデラには大草原が広がっているんです。そのなかを車やバイクで走ると、見渡す限り別世界みたいな景色です。めちゃくちゃキレイなのでおすすめです!」

――住みます芸人として、今後挑戦したいことを教えてください。

たく「今はコロナ禍で難しいですけど、たくさん人が来てもらえるように魅力を発信できる活動をしていきたいです。全国はもちろん、熊本には中国や韓国からのクルーズ船も泊まります。海外の方にも熊本城やくまモンは人気で、海外客が伸びる下地ができているので、海外に向けてもアピールしていきたいですね」

――では、お笑い芸人としてのそれぞれの目標は?

のりを「僕の場合は『熊本の方に愛される“おもちゃのような存在”になりたい』です。(笑福亭)鶴瓶師匠のような、一般の方とも壁がない気さくな芸人になりたいですね。県民の皆さんにぜひ遊んでいただければなと」

たく「熊本の皆さんには、のりをのキャラを知ってもらえているので、行く先々でいじっていただけています(笑)。相方としても、こんな風に盛り上がるのはとてもありがたいですし、僕も“場を明るくする存在”でいたいですね」

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