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“ポスト鬼滅”に賛否?「呪術廻戦」の人気爆発ぶりをデータと現場の声で紐解く

  • 2021年1月31日
  • Walkerplus

「週刊少年ジャンプ」連載中のマンガ「呪術廻戦」(著:芥見下々/集英社)の人気が爆発している。放映中のアニメは毎話関連ワードがTwitterトレンド入りするほどの人気で、原作を購入するファンが続出し、累計発行部数は2500万部を突破(※)。昨日30日、著者の芥見下々先生が「漫道コバヤシ」にてテレビ初出演を飾ったことでも話題になった。そのブームの過熱ぶりが、社会現象化した「鬼滅の刃」(著:吾峠呼世晴/集英社)を想起させることから、最近ではメディアが“ポスト鬼滅”として取り上げる例が多発。一方で、「どちらに対しても失礼」「比べる必要がない」といった批判の声も高まっている。なぜこのように賛否の声が噴出することになったのか、「呪術廻戦」の人気を示すデータや現場の声をまとめつつ分析した。

※以下、部数はいずれも電子版を含む

■原作の歴史と発行部数の変遷 アニメ化決定時の約10倍に!
「呪術廻戦」の連載がスタートしたのは、2018年3月。初連載ながら“編集部が満場一致で連載決定”という鳴り物入りのデビューだった。当初から人気が高く、1巻は発売後即“大重版”。2巻との累計発行部数が早々に25万部を超え、「デジタル版でも新人作家としては異例の売れ行き」と編集部にいわしめた。

翌年2019年には、早くも受賞ラッシュ。書店員1100人の投票による「全国書店員が選んだおすすめコミック2019」1位獲得に続き、「みんなが選ぶ TSUTAYAコミック大賞2019」でも大賞の座に輝いた。

アニメ化決定当時は250万部(既刊7巻)だった累計発行部数は、放送直前の2020年10月2日には850万部(既刊13巻)を突破。その後、放映中の約4カ月の間に大きくジャンプアップし、先日26日には2500万部に到達(既刊14巻)。アニメ化決定時の10倍となる驚異的な伸びを示した。

SHIBUYA TSUTAYA広報担当者は、「アニメ化が決まった際、『鬼滅の刃』に次ぐ大ヒット作になるのではないかと考え、通常の映像化作品の4倍のスペースで棚を展開することを決めました。そのおかげもあってか、若い女性を中心に多くのお客様に購入いただき、アニメ放送前後比で販売数が4000%を超える異例の状況になっています」と語る。

1月18日~24日の週間コミックランキングでは、1位から8位までを「呪術廻戦」が独占。20位までに既刊14巻すべてがランクインした(「ほんのひきだし」ランキング記事より、日販 オープンネットワーク WIN調べ)。日販が運営するWebメディア「ほんのひきだし」の担当者は、その購入層について「もともと10~20代男性、次いで20代女性が多かったのですが、アニメ放送を機に、特に女性読者が増加しました。2019年からの累計データでは、10~20代の購入者は男女ほぼ同数となっています」と話す(日販 WIN調べ)。

■アニメ、グッズ、食玩…さまざまな分野でSNSの話題をさらう
1月から第2クール「京都姉妹校交流会編」に突入したアニメも快調だ。アニメ雑誌「月刊ニュータイプ」2021年2月号では、表紙&巻頭特集に登場。国内No.1アニメ配信サイト「dアニメストア」で行われた「今期何見てる?2020秋アニメ人気投票」では、9381票を獲得して1位となった。

Netflixが発表した「2020年、日本で最も勢いのあったアニメTOP10」では、配信オリジナル作品に次ぐ2位にランクイン(配信直後から視聴数に伸びがあったアニメをランキング化)。2021年1月度のdTV視聴ランキングでも1位を飾るなど、その他の配信サイトでも人気を博している。

何より、その人気の高さを証明するのはSNSでの盛り上がりだ。アニメ最新話が放映されると、毎回のように複数の関連ワードがTwitterトレンド入りし、番組公式ハッシュタグはたびたび1位に。特に、人気キャラクターの五条悟の素顔が明かされた第7話などでは、1~2位をはじめトレンド20位までのうち7つを関連ワードが占める“祭状態”となった。

グッズもすさまじい人気ぶり。アニメイト新宿ハルク グッズ担当の古賀さんは、「以前からコミックスは売れ筋でしたが、アニメ化されるとグッズも大人気となり、特に第7話の放送後は、店頭でのお問い合わせが一気に増えるなど大きな反響がありました。女性の方を中心に、男性や親子連れの方など、性別・年齢を問わず幅広い層にご購入いただいています。現在開催中の『「呪術廻戦」京都交流会編 放送記念フェアin アニメイト』も好評です」と話す。

量販店でも関連商品の取り扱いが始まっている。食玩「呪術廻戦ウエハース」(バンダイ)は、1月18日に一部のコンビニで先行発売が開始されると、こちらもSNS上で話題となり、完売を嘆く声が相次いだ。

■「鬼滅の刃」の“次にくる”と評されて炎上したワケ
「呪術廻戦」は近日の人気ぶりから、たびたび“ポスト鬼滅”として取り上げてられてきた。その最たる例が、2020年12月に放映された「サンデージャポン」だ。紹介された“ネクスト鬼滅”というワードがTwitterトレンド1位になりつつも、反響の中には、双方のファンからの“ネクスト鬼滅”という言葉への疑問の声が目立った。

そもそも、“ポスト〇〇”といった表現は、広く一般に対してわかりやすくアピールするために用いられるもの。内実を理解しない安易なラベリングのようにも感じられることから、ファンには敬遠されがちだ。それを踏まえたうえで、「呪術廻戦」を“ポスト鬼滅”と評することにファンが特に違和感を覚えたワケを探る。

「呪術廻戦」は前述の通り、連載開始当初から期待値が高く、売上でもそれに応えてきた。アニメ放送開始時点の累計発行部数を比較すると、「鬼滅の刃」の500万部(既刊15巻)に対し、「呪術廻戦」は850万部(既刊13巻)と、単巻平均では実に倍近くだ。

また、「呪術廻戦」では、3巻発売に合わせ、人気キャラクターが作品を紹介するアニメーションPVが配信され、告知ツイートが1.7万いいねを獲得。6巻発売を記念したクラウドファウンディングでは2000万円以上の支援金(※オリジナルグッズの受注・制作に使用)を集めるなど、初期から積極的なPRが行われ、話題を集めてきた。

以上から、アニメ放送開始前からの「呪術廻戦」の注目の高さがわかり、同じ時点での人気や話題性は「鬼滅の刃」を上回っていたという可能性が浮上する。多くのファンを抱えてはいたものの、比較的遅咲きの大ヒットとなった「鬼滅の刃」よりも“先”に「呪術廻戦」のファンになっていた人も多いと予想されることから、“ポスト鬼滅”というワードへの反発が強かったことがうかがえる。

ただ、SHIBUYA TSUTAYA広報担当者が、「呪術廻戦」のブレイクについて「『鬼滅の刃』をきっかけに、アニメを入口にコミックへ興味を持たれる方がさらに増えてきた印象です」と話すように、その現在の急成長の裏には「鬼滅の刃」のヒットの影響もあることは間違いないだろう。

■違いを理解したうえで、「鬼滅の刃」と共通する点を挙げると…
また、ファンの声として大きいのは、2つの作品の内容が「全然違う」というもっともな意見だ。「“和”の世界観」「残酷描写を含むダークファンタジー」「呪い、鬼という伝統的モチーフとのバトル」などの共通点がありつつも、舞台となる時代設定をはじめ、ストーリーやキャラクター、作風は大きく異なる。

別の魅力的な作品であることを理解したうえで、あえて「呪術廻戦」が「鬼滅の刃」と類似する点として、著者とジャンプマンガの関わりを挙げたい。

「呪術廻戦」の芥見先生は1992年生まれで、「どこかで見たような作風」を自称。担当編集者は「冨樫義博先生の影響が垣間見えると言われますが、創作の初期衝動としては、『BLEACH』にすごく影響を受けたと聞いたことがあります」「ジャンプ漫画にはひときわの愛着があるんだろうと思います」と語る(「JUMP j BOOKS」公式note記事より)。また、連載中の作品では「ワールドトリガー」の大ファンとして知られている。

「鬼滅の刃」の吾峠先生は1989年生まれで、「ジャンプに漫画を送るきっかけは銀魂でした」と告白。元担当編集者は「『ジャンプ』漫画は全般的に読んでいて、何かしら影響を受けていると思いますが、特に『ジョジョの奇妙な冒険』のファンだとおっしゃっていました」と説明する(「ライブドアニュース」インタビュー記事より)。また、「このマンガがすごい!2019」のインタビューでは、「ジョジョ」のほか「BLEACH」「NARUTO -ナルト-」などの作品を挙げ連ねた。

このように、いずれの著者もほぼ同世代で、自らが読者として親しんだジャンプマンガの影響を強く受けながら創作していると考えられる。ちなみに、実は上記の担当編集者は、いずれも同じ片山達彦氏。「鬼滅の刃」には連載立ち上げから関わっており、ある著名な作家のSNSでの発言によれば、「呪術廻戦」の立ち上げも同氏によるものだという。

■ストーリーはまだまだこれから?アニメ&原作の気になる今後
アニメ「呪術廻戦」は現在16話まで放映されており、3月末に25話前後で終了する見込み。ストーリーの区切りを考えると、放映中の「交流会編」に加え、新たな任務を描く「起首雷同編」まで(原作8巻64話まで)を映像化すると予測できる。

原作15巻は3月4日(木)に発売予定のため、単純計算では、6月には1期と同じ2クール分のアニメを放映できるストックが溜まることになるが、現実的に考えれば、2期のスタートは2022年が濃厚だろう。

一方、本誌では、10巻から続く「渋谷事変編」が終結の赴き。連載中の話数は16巻に収録される予定なので、アニメ2期が2クールだった場合、「渋谷事変編」の完結までを映像化すると考えられる。しかし、「渋谷事変編」がこのまま終了してもなお、メインストーリーや主要キャラクターに関わる謎や伏線、課題は山積みだ。人気はともかく物語としては“まだまだこれから”の作品といえる。

連載3周年を控え、「女子大生が選んだ“2021年トレンド予測”」など数多のトレンド予測でも1位を獲得し、今後さらにヒット街道を駆け上がっていくであろう「呪術廻戦」。昨年、「鬼滅の刃」「ハイキュー!!」「約束のネバーランド」といった作品が完結し、年明けすぐに「進撃の巨人」の次巻での完結が発表されるなど、マンガ界では大人気シリーズの終幕が続く。“〇〇ロス”を抱えているならば、「呪術廻戦」にどっぷりハマってみるのもいいかもしれない。

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