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「コイツの背中を見てくれ」ガンプラ電飾職人が“魂込めた”至極のバックショット

  • 2020年11月26日
  • Walkerplus

ウォーカープラスの新企画「ウォーカービズ」では、さまざまな分野で活躍する“トップランナー”たちにインタビューを行い、人生の明暗を分けた決断の舞台裏や、成長の分岐点となったエピソードを紹介していく。

今回紹介するのは、バンダイ公式のガンプラ世界大会でファイナリストの実績を持つ、トップモデラー・せんざきさん(@senzakipetao)。代表作のひとつ、ガンダム3号機・プロトハミングバードの製作秘話や、こだわり抜いた“バックショット”への思いを聞いた。

■あえて人間型を外し、異形な形状とすることで“バランスの危うさ”を表現

――コンセプトやテーマがあれば教えてください。

「このZガンダム3号機は、ガンダムセンチネルに登場するハミングバードの先行試作機という設定で、高機動かつ高火力、ニュータイプ専用機がテーマです。“僕の持つ技術をすべて詰め込む”というコンセプトで製作しました。得意なマスキング塗装による幾何学パターン表現と、全身に施された電飾が見せ場です」

――本作で設定したストーリーを教えてください。

「アムロ専用といわれるZガンダム3号機に対し、長距離一撃必殺を行うための高機動、高火力バリエーション機として開発された機体、という設定です。全身の幾何学パターンの紋様はサイコフレームの技術を応用したサイコシートという素材であり、特定パターンの形状で貼ることで機動性と運動性を極限まで高めることができる反面、パイロットの精神負荷もとても大きくなるというデメリットがあります。当時最高のニュータイプのひとりであるアムロ・レイも使いこなすことができないと判断され、設計段階でお蔵入りしたプランです」

――使用したキットは?

「実はZガンダムは顔と上胸部分しか使っておらず、フレームや腕と腰回りはリゼル、ブースターはディープストライカーとEx-Sガンダム、プロペラントはフルアーマーユニコーンガンダムからと、かなり贅沢なミキシングになっています。どれも箱が大きいキットばかりなので、製作中は部屋の中が大変なことになっていました」

――見せ場である「電飾」について教えてください。

「塗装と電飾による“アートデザインコーディネート”です。当時誰もやっていなかった幾何学パターンのピンク塗装に、青い光の差し色を入れることでアーティスティックなデザインに仕上げました。あえて人間型を外し、異形な形状とすることで“バランスの危うさ”も感じとれると思います。あと、本当に皆さんに見てほしいのは、電飾がもっとも“映える”バックショットです」

■「光らせる」ことは塗装や改造工作と同じく重要な工程のひとつ

――そのバックショットへのこだわりは?

「バックショットは、アートではなく武骨で工業的なデザインを出せるような改造や塗装を施しました。スプリングによるパイピングやメタルパーツによるディテールを入れたり、バーニアの内側は電飾を灯すことで光が反射して見栄えがよくなるよう、外側とは塗装の質感を変えています」

――せんざきさんの代名詞でもある「電飾」へのこだわりが生まれた経緯は?

「人間の目と脳は、動くものと光るものを識別して自然に追うようにできています。ガンプラを動かすことは今の技術では難しいので、光らせてみるとどうだろうか?という考えと、各模型専門誌で電飾作例を製作されているモデラ―の方々と出会うきっかけがあり、光らせる楽しさを共有できたことが大きいと思います」

――電飾技術について、せんざきさんの“強み”は何ですか?

「ガンプラ界ではまだ光らせることが“目的”となっている場合が多いと思います。僕は光らせることは塗装や改造工作と同じく重要な工程のひとつであり、ゆえに目的ではなく“手段”だと考えています。作品のテーマやコンセプトに合わせて、どのように光らせるのかを最初に考え、その通りに光らせるためにどのような素材をどう配置するのか?と考えながら電飾を行っています。通常、モノアイやバーニアだけを光らせることが多いのですが、設定は自由に変えて、本来兵器としては光っていないような部分を光らせていくという発想と、どこでも好きな場所を光らせることができる技術が、自分の強みだと思います」

――作品を公開した際、SNSの反響はどうでしたか?

「発表した当時、フォロワーが少ない状態ながらかなりの反響がありました。特に電飾やアート的な表現をするモデラ―の方から評価していただき、一気に交流が広がりました。同時に感じたのが、電飾作品は素人には写真撮影が本当に難しいということです」

――具体的にどのような苦労があるのでしょうか。

「電飾作品としての魅力が伝わる撮影、特に一眼レフでの設定や光源などはいつも試行錯誤の状態です。光っているものを撮影した絵にすぎず、光そのものを表現できないのが悩みですね」

――ガンプラにおける写真の重要性は?

「展示会やコンテストを除き、作品を他の方に見てもらえる唯一の手段なので、本当に重要だと思います。単なる画像ではなく、作品のテーマやコンセプトを“写真だけ”で伝えられることが理想だと思います」

取材協力:せんざき(@senzakipetao) 撮影:佐々木薫
(C)創通・サンライズ

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