これはリスクが高いといえます / (C)チーム★ライフプラン研究会、花田敬/KADOKAWA
「マネーDr.」ルーシーと、将来に不安を抱える人々の物語。
東京・銀座のあるビルの5階。エレベーターを降りると、そこにはルーシー先生のオフィス「ルーシー・マネークリニック」があります。独立系ファイナンシャル・プランナーとして活躍するルーシー先生は、結婚や出産、住宅ローン、子どもの教育費、そして老後の資金計画まで、ライフプランに応じて必要となるお金について、丁寧かつ分かりやすくアドバイスしてくれます。
「お金の相談に来たのに、人生相談もしてもらった感じです」これは、相談者たちがよく口にする言葉。そんなルーシー先生に会いたくて、今日もまた新たな相談者がオフィスを訪れます。
※本記事はチーム★ライフプラン研究会(著)、花田敬(監修)、ヒラマツオ(漫画)の書籍『誰か教えて! 一生にかかるお金の話 改訂版』から一部抜粋・編集しました。
この記事に登場する人たち
北欧スタイルのオフィスの一番奥に座る女性。それがルーシー先生。年齢は40代前半。出産を機に金融機関を退職。独立系のファイナンシャル・プランナーとして、この銀座のオフィスをオープンさせました。
中学生の子どもを持つワーキングマザーでもあります。
吉沢京子さん(53歳)は中小企業の社長さんの奥様。老後に向けて「資産運用」を考えているのですが、ちょっと自信がありません。
【吉沢京子さんの場合】「資産運用」を、初歩から教えてもらいたくって……
ある程度お金が貯まったら、今度はそれを目減りさせないこと。吉沢さんは資産運用をスタートすべく、ルーシー先生に教えを乞います。
資産運用についてのご相談でしたよね / (C)チーム★ライフプラン研究会、花田敬/KADOKAWA
預貯金って目減りするんですか!? / (C)チーム★ライフプラン研究会、花田敬/KADOKAWA
※ 預金者保護法のひとつで、金融機関が破綻した場合、預金保険機構が破綻した金融機関に代わって一定額まで払い戻しをすること。現行制度では、1金融機関につき預金者1人あたり元本1000万円までとその利息は全額保護される。
「何もしない」には、目減りリスクあり!
資産の目減りリスクを回避するには、「運用」という発想が必要になる。
■インフレが進めば、せっかく貯めたお金も……
(ルーシー先生)まず、インフレというのはご存知ですか?
(吉沢さん)えっと……、物価がどんどん上昇していく状況ですよね。
(ルーシー先生)その通りです。そして、物価が上昇すると、相対的にお金の「価値」は下がっていきます。
◆インフレになると……
インフレになると…… / (C)チーム★ライフプラン研究会、花田敬/KADOKAWA
(吉沢さん)同じモノを買うのにも、インフレになると、よりたくさんの「お金」が必要になるんですね。
(ルーシー先生)そういうことです。このことを、吉沢さんの預貯金で考えてみましょう。たとえば、ブランドのバッグを買うために100万円を銀行口座で積み立てることにしました。2年近くかけてようやく貯まり、さっそく買いに行くことにしました。ところが、世の中ではインフレが進んでいて、2年前は100万円だったのが130万円になっていました。
(吉沢さん)せっかく貯めても買えないじゃないですか!
(ルーシー先生)吉沢さんの持っている「100万円」の価値は、2年前より下がってしまったのだから、仕方ないですよね、残念ながら。
(吉沢さん)ルーシー先生が先ほどおっしゃった「資産が目減りする」ってそういうことですね。「これだけあればOK」と思っていても、銀行に寝かせておけば、老後に「足りない!」となりかねない。
(ルーシー先生)そうなんです。こんな具合に、預貯金というのはインフレになると、とても弱いのです。
(吉沢さん)最近、物価が上がっていますよね。10年後、わが家がリタイア生活に入る頃には、もっと物価が高くなっているかも……。考えると不安です。その頃には、貯金の価値が目減りしている可能性もありますよね?
(ルーシー先生)そうですね。インフレが進むと、いまの預貯金だけでは将来の生活費をまかなうのが難しくなるかもしれません。特に金利が低いままだと、預貯金の価値は時間とともに目減りしてしまう可能性があります。
(吉沢さん)それを防ぐために、何か対策をしたほうがいいですよね。でも、何をしたらいいのでしょう?
■基本がわかれば、「金融商品」も怖くない!
(ルーシー先生)まず大切なのは、「お金をすべて預貯金だけに頼る」という状況から抜け出すことです。そのためには、資産を預貯金以外にも分散して「運用する」ことを検討してみましょう。
(吉沢さん)運用って言葉を聞くと、なんだか難しそうに思えてしまいます。
(ルーシー先生)そんなに難しく考える必要はありません。預貯金だけでなく、「株」や「債券」「外貨」などいくつかの運用方法を組み合わせてバランスよく資産を持つようにするのがポイントです。このように、さまざまな金融商品を組み合わせて資産を持つことを、「ポートフォリオを組む」といいます。
◆ポートフォリオとは?
ポートフォリオとは? / (C)チーム★ライフプラン研究会、花田敬/KADOKAWA
(吉沢さん)いろいろな方法があるんですね。でも、これら全部をやるのは無理そうです……。どれかひとつに絞ったほうがいいですか?
(ルーシー先生)全部をやる必要はありませんよ。大切なのは、いくつかを組み合わせてバランスよく資産を持つことです。
(吉沢さん)なるほど! ポートフォリオを組むように意識することが大事なんですね。
(ルーシー先生)このように金融商品をいくつか組み合わせておけば、いざインフレという局面が来たときにも、資産が減っていくのを抑えることができるわけです。
(吉沢さん)実際、金融機関の方からも、いろいろな商品を勧められているんですよね。外貨預金とか投資信託とか。銀行だけに預けておくよりずっと良さそうと思いつつ、行動に移せないんですよ。
(ルーシー先生)あら、それはどうしてですか?
(吉沢さん)なにしろ私、金融に関する知識は皆無で、商品の説明をうかがってもチンプンカンプンなんですよ。勉強しようと思いつつ、時間がなくってやらずじまいで。
(ルーシー先生)よくわからないものに、「大切な財産」を預けられないですからね。でも、吉沢さんもたぶんお気づきのように、「知識」があれば、そうした金融商品へもアクセスがしやすくなりますよね。
(吉沢さん)そうなんですよ。「知識」があれば、即「やってみよう!」って気持ちになれるんですが。
(ルーシー先生)では、この機会に金融の「知識」を増やしていきましょう。私がお手伝いします。実際に「運用」に取り組んでみると、「こんなに簡単なことだったの!」とビックリするかもしれませんよ。
(吉沢さん)ぜひともそういう状態になってみたいものです。
(ルーシー先生)ええ。でも「知識」といっても、最初から、詳しくなる必要はなく、基本的な部分を押さえておけば大丈夫です! あとは、実践しながら、より深く勉強していくって感じですね。
【監修者紹介】
花田 敬(はなだ たかし)
チーム★ライフプラン研究会代表。イーエフピー株式会社代表取締役、(一社)法人クレジットカード相談士協会代表理事。1996年にソニー生命保険から独立。以降、「金銭教育は社会貢献」をテーマに、マネーセミナー講師の育成に努め、多くの門下生を輩出している。また、2010年から2025年までの15年間、関東学園大学の非常勤講師として培った知識と経験を武器に、講師として活躍中。大手銀行、生命保険会社、損害保険会社、証券会社、大手住宅メーカーなど、幅広い企業のコンサルティングや社員研修、セミナー、講演活動を積極的に展開。著書も多数刊行し、業界内外で高い信頼を得ている。
【編著者紹介】
チーム★ライフプラン研究会
全国のファイナンシャル・プランナーの有志が集い、ライフプランとマネープランの重要性を広く啓発・普及するために活動する研究会。各地で開催されるマネーセミナーにおいて、講師として実績を積みながら、未来の豊かな生活設計をサポートする取り組みを展開している。
※本記事に掲載している情報は2025年3月時点のもので、変更になる場合があります。
著=チーム★ライフプラン研究会、花田敬/『誰か教えて! 一生にかかるお金の話 改訂版』