準備すべきマイホーム自己資金は? / (C)TATSU/PIXTA(ピクスタ)
「マネーDr.」ルーシーと、将来に不安を抱える人々の物語。
東京・銀座のあるビルの5階。エレベーターを降りると、そこにはルーシー先生のオフィス「ルーシー・マネークリニック」があります。独立系ファイナンシャル・プランナーとして活躍するルーシー先生は、結婚や出産、住宅ローン、子どもの教育費、そして老後の資金計画まで、ライフプランに応じて必要となるお金について、丁寧かつ分かりやすくアドバイスしてくれます。
「お金の相談に来たのに、人生相談もしてもらった感じです」これは、相談者たちがよく口にする言葉。そんなルーシー先生に会いたくて、今日もまた新たな相談者がオフィスを訪れます。
※本記事はチーム★ライフプラン研究会(著)、花田敬(監修)の書籍『誰か教えて! 一生にかかるお金の話 改訂版』から一部抜粋・編集しました。
この記事に登場する人たち
北欧スタイルのオフィスの一番奥に座る女性。それがルーシー先生。年齢は40代前半。出産を機に金融機関を退職。独立系のファイナンシャル・プランナーとして、この銀座のオフィスをオープンさせました。
中学生の子どもを持つワーキングマザーでもあります。
朝倉のぞみさんは、現在40歳。7歳の娘さんと5歳の息子さんがいます。
ご主人との最近の話題は、「家を買うかどうか」。でも、「住宅ローン」が気になり、なかなか決断できません。
「住宅購入OK!」のタイミングとは?
余力を持って買うことが幸せなマイホーム生活につながる。
■「返せる金額」から「借りられる額」を計算する
(朝倉さん)わが家は、いくらの借金ができるのでしょうか?
(ルーシー先生)それには、金融機関がインターネットで提供しているローンシミュレーションのサービスを活用するといいですよ。月々の返済額を入力すれば、簡単に借入可能な金額を算出できます。
(朝倉さん)そんな便利なものがあるんですか?
(ルーシー先生)たとえば、「住宅金融支援機構」のホームページにアクセスすると、シミュレーションが簡単にできますよ。「毎月の返済額から借入可能金額を計算」というところで算出するんです。
◆「住宅金融支援機構」のローンシミュレーション例
(同機構ホームページ「住宅ローンシミュレーション」より)
「住宅金融支援機構」のローンシミュレーション例 / (C)チーム★ライフプラン研究会、花田敬/KADOKAWA
(朝倉さん)これなら、私でも簡単に計算できそう。
(ルーシー先生)こういったシミュレーションで住宅ローンで借りられる金額がわかるでしょう。そうしたらそれに、現状で準備できる「自己資金」、つまり頭金を足します。その数字が、のぞみさんのご家庭が購入できるだいたいの金額になります。
■準備すべき自己資金は、購入価格の3割
(朝倉さん)「頭金」はどれくらい用意すればいいかの目安ってありますか?
(ルーシー先生)頭金は、購入価格の2割を準備すると妥当だと言われています。3000万円の物件なら、600万円ね。
(朝倉さん)「頭金ゼロ」なんて、くれぐれも厳禁ってことですね。
(ルーシー先生)そうなの。たとえば、新築を買った場合、その価格には広告費とか不動産業者の人件費も含まれているから、買ってすぐ売却しても2割減だったっていう物件もあるんですよ。
(朝倉さん)その場合、3000万円の新築を買ってすぐに売却したら、高く売れても2割減の2400万円ってことですよね。
(ルーシー先生)ええ。そのとき、頭金ゼロで3000万円のローンを組んでしまえば、売っても600万円の借金が残ってしまうわけです。
(朝倉さん)借金600万円!! 怖すぎる!!!
(ルーシー先生)これが頭金ゼロの怖さです。
(朝倉さん)そうした事態を避けるためにも、せめて購入価格の2割分の頭金を用意しておく必要があるんですね。
(ルーシー先生)それと、住宅を購入する際には、「諸費用」がかかります。それは聞いたことあります?
(朝倉さん)はい。税金とか登記費用などで、いろいろかかるんですよね。
◆住宅購入でかかる諸費用
住宅購入でかかる諸費用 / (C)チーム★ライフプラン研究会、花田敬/KADOKAWA
(ルーシー先生)そうです。それはだいたい住宅の購入価格の1割といわれています。3000万円の物件だったら300万円。それもあらかじめ準備しておいたほうが安心ですよね。
(朝倉さん)ということは、購入価格の3割は手元に用意しておくってことですね。家中のお金をかき集めればなんとかなるかな~。
(ルーシー先生)ちょっと待ってください!この3割を準備するためにお金を全部使ってしまってはダメですよ。この先、何が起こるかわからないのだから。
(朝倉さん)たしかに、そうですね。ほかにもいろいろお金がいりますからね。
(ルーシー先生)ある程度のお金はかならず残しておくこと!これは決して忘れないでくださいね。
■賢い住宅購入は「身の丈に合ったものを買う」!
(朝倉さん)ここまでしっかり考えて購入できる価格を検討すれば、「これなら返済できる」という自信が持てますね。
(ルーシー先生)そうそう。あとは、その価格の範囲内で、自分が納得できる家を探していけばいいってわけです。私がもっとも言いたいのは、住宅ローンに振りまわされてほしくないってこと。身の丈以上の家を買ってしまい、その返済に追われて、いまの生活を楽しめないのは悲しいじゃない。
(朝倉さん)住宅ローンのために、子どもの教育費を削る、なんていうのも本末転倒ですしね。
(ルーシー先生)「家」も人生においては大切な要素です。でも、自分の「家」を持つことが、人生の「主」ではないと思うんです。自分や自分の家族が、いまも、そしてこの先も、ハッピーな人生を送っていける。それがもっとも重要なのではないでしょうか。その意味で、住宅を購入するなら、無理せず、身の丈に合ったものを探していく。そうしたスタンスが、とても大切だと思います。
(朝倉さん)今回のお話でそれはすごくよく理解できました。家を買うって、とても夢のあることなんですね。ワクワクしてきました。ありがとうございます!! さっそく夫とじっくり話し合ってみます。
(ルーシー先生)おふたりの話し合いが進んだら、今度はご主人といらしてください。 具体的な数字を出していきながら、無理のない返済計画を考えていきましょう。
(朝倉さん)はい。よろしくお願いいたします!
【監修者紹介】
花田 敬(はなだ たかし)
チーム★ライフプラン研究会代表。イーエフピー株式会社代表取締役、(一社)法人クレジットカード相談士協会代表理事。1996年にソニー生命保険から独立。以降、「金銭教育は社会貢献」をテーマに、マネーセミナー講師の育成に努め、多くの門下生を輩出している。また、2010年から2025年までの15年間、関東学園大学の非常勤講師として培った知識と経験を武器に、講師として活躍中。大手銀行、生命保険会社、損害保険会社、証券会社、大手住宅メーカーなど、幅広い企業のコンサルティングや社員研修、セミナー、講演活動を積極的に展開。著書も多数刊行し、業界内外で高い信頼を得ている。
【編著者紹介】
チーム★ライフプラン研究会
全国のファイナンシャル・プランナーの有志が集い、ライフプランとマネープランの重要性を広く啓発・普及するために活動する研究会。各地で開催されるマネーセミナーにおいて、講師として実績を積みながら、未来の豊かな生活設計をサポートする取り組みを展開している。
※本記事に掲載している情報は2025年3月時点のもので、変更になる場合があります。
著=チーム★ライフプラン研究会、花田敬/『誰か教えて! 一生にかかるお金の話 改訂版』