「急ぎの仕事より、おもしろい仕事を優先してしまう」「締め切りを守れない」。これがいつものこととなると、発達障害の傾向がありそうです。
Hさん(40歳)は仕事の進め方に極端なところがあります。自分がおもしろいと思うことをまず優先してやってしまい、その他のやるべき作業をバランスよく進行させることができませんでした。徹夜続きでなんとか仕上げようとしましたが、納期に間に合わなくなってしまったのです。
このように、やらねばならないことをあと回しにしてしまうのは、ADHDの人の脳の特性「あと回しグセ」のためです。こうしたことは定型発達の人にはなかなか理解してもらえず、周囲からはだらしがないと思われたり、あきれられたりしてしまうこともあります。
「やる気スイッチ」は脳内にあり、そのスイッチを押すのはドーパミンなどの神経伝達物質が関係します。ところがADHDの人はこの働きが気まぐれ。自分がやりたいことや、目先のことにはスイッチが入りますが、やるべきことには、本人はわかってはいても、なかなかスイッチが入らず、行動に移すことができません。
締め切りに間に合わないのは、始めるのが遅いことが原因。「やらなければいけない」ことがあるのはわかっているのに、自分の「やりたいこと」を優先してあと回しにしがちなためです。
いざ、やるとなるとめんどうに感じたり、何から手をつければいいかわからなかったりで、「やる気スイッチ」がなかなか入りません。自分なりの「やる気スイッチ」を入れる方法を見つけましょう。
モチベーションを上げるためには、この仕事が終わったらおやつを食べようとか、ライブに行こうとか、ごほうびを決めましょう。
また、締め切りから逆算してスケジュール表を作りましょう。やることをすべて書き出し、ひとつひとつの所要時間を見積もり、優先順位をつけて作るのです。
スケジュール表は見やすいところに貼り、確認しながら進めます。「私はできる」と自分に言いきかせることも大切です。
教えてくれたのは…司馬理英子先生●司馬クリニック院長。医学博士。岡山大学医学部卒。1983年渡米。アメリカで4人の子どもを育てるなか、ADHDについての研鑽を深める。1997年に帰国し、東京都武蔵野市に発達障害の専門クリニックである司馬クリニックを開院。以来、子どもから大人までの治療を行っている。