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Vol.73 具体的にできることがあれば、それはやっておくべきだろうと考えました。

  • 2011年5月26日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 さて、大震災から2ヶ月以上経ちましたが、みなさんはどんなふうに毎日を過ごしていますか。被災された方々は相変わらず大変な状況のなかでがんばっていらっしゃると思いますが、それ以外の地域の人たちは今回の出来事をどんなふうに受けとめているでしょうか。ひとつの流れとして、ライフ・スタイルを変えていこうということが言われていますよね。それについては僕も、以前から話していた、食べ物はもちろんエネルギーまで含めた小規模な自給自足の形というものを考えてしかるべき状況なのかなという気がします。で、この連載では、そういう自給自足生活を実現するためにどういうことが必要か知るための作業現場として“まず畑を買おう!”と考えている、というところまではお伝えしていました。その取り組みは、スケジュールが当初考えていたよりもだいぶ後ろにずれ込みますが、今年中にしかるべき土地を見つけられれば来シーズンからは実際の作業に入れるかもしれないとは思っています。

 ただ僕自身の現状は、それどころではないというのが正直なところです。ゴスペラーズとしての時間以外はほとんど音楽家として被災地とどう向き合うかというところに費やしていることもあって、やっぱり難しいんですよね。自分のエネルギーをどう配分するかというバランスが。

 そういう状況ではあるんですが、とりあえずの報告として、3月31日に福島市に、それから5月1日に宮城県の石巻、翌2日に宮城県の女川と名取に行ってきました。そこでまず感じたのは、“そろそろ復興へ”というようなことが報道されているけれども、僕から見ると何も改善しているようには見えなかったということです。「道が通っているだけまし」とか、「ヘドロだらけだったけど、掃除して床が見えるようになりました」とか、現地の人たちから言われると、“なるほど、そういうことか”と思うんですが。だからと言って、みんなが普通に生活できるようになって復興段階に入ったというふうには、僕にはまったく思えませんでした。マスコミはおそらくポジティブな報道を心がけているんだろうと解釈しているんですが、ただその報道の量もだんだん減ってきています。だから、“瓦礫なんて、もうないんだ”というふうに思ってる人だっているかもしれません。

 でも、現実はそんなにうまくは進んでいないです。実際、400人の生徒のうち300人に家がない、という学校があるわけですから。それは、その街を見れば、一目瞭然です。で、その状況が一朝一夕に良くなるはずはないんですよね。実際に見るとやっぱり衝撃は強かったです。こちらが暗くなっていても仕方ないんだけど、でもその状況を無視するわけにはいかないですよね。そういう意味でも、これからのことを考えていくうえで何か具体的にできることがあれば、それはやっておいたほうがいいだろうなと思ったんです。ただ、ゴスペラーズに注ぐエネルギーを削ってまでやるのは本末転倒なので、「今出来ることから」をテーマに個人的な人間のつながりのなかでバタバタと計画を立て、出かけてきました。

音楽  簡単に説明すると、「ハタチ基金」という、いま生まれた子どもが二十歳になるまでの20年間、子供たちをサポートしましょうという基金での取り組みがベースになっています。その基金が学習支援などをする一環として、音楽のような娯楽を必要としている子どもたちのところに出かけていって一緒に音楽をつくりましょうというのが、僕が提案したプロジェクトです。じつは、その「ハタチ基金」の提唱者のひとりがこの連載でも何度か紹介した「カタリバ」の今村さんで、そのカタリバの取り組みを進めるなかで石巻のお母さん方と信頼関係ができ、音楽に対するニーズが生まれたので、そのプロジェクトの第1回目として僕らが石巻に出かけたというわけです。

 やっぱり、現場に行くと、本当にいろんなことを考えさせられました。次回は、そのレポートをお伝えします。


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