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Vol.71 精神が先か、身体が先か、それが問題だ。

  • 2011年4月21日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 前回は、僕自身の筋肉の使い方についての「解像度」が上がっているという話でしたが、その結果として自分にできることが増えているという感覚があります。ただ、その感覚をもう少し細かく見てみると、いままで考えていなかった精神と身体の関係性が見えてきました。

 まず、自分が良いコンディションになるように自分をコントロールします。そのコントロールがうまく作用したおかげで、身体が良いコンディションになった、と。すると、その「身体の良いコンディション」によって、良いコンディションの精神が作られる気がするんです。身体によって頭がコントロールされる、と言えばいいでしょうか。これって、にわとりと卵の話みたいな感じもするんですが(笑)。

 というのも、これまでは、例えば「病は気から」と言われるように、頭が先だと僕も思っていました。イメージできないことはやれないし、逆にイメージできることは実行可能なことだと思っていたんです。でも、じつはその逆方向のフィードバックも同じくらい重要なんじゃないかと思い始めています。つまり、身体が精神を作っているということですね。いま自分が考えていることは身体のコンディションに左右されている。もっと言えば、身体全体が考えている、ということかもしれない。いまはまだ上手く説明できないんですが、僕をコントロールしているのは僕の頭じゃない、と言えばいいんでしょうか(笑)。身体と意識は別のものじゃないということですかね。

 そういうふうに考えていくと、この連載(Vol.53)で「自分にとっての最初の“環境”とは自分の身体である」と書きましたが、それは脳と身体との関係で言えばその通りだと思うものの、それでは足りないというか十分に説明しきれていないなと最近思い始めています。もうちょっと相互的なんじゃないかなっていうか。自分の身体が感じる実感の話で言えば、身体的に解像度が増していると感じることが多くなってきたときに、“人間としての余裕が生まれているな”と感じるんです。

 今回のツアーでもあらためて実感したことですが、身体的に充実していると、緊張したり“どうしよう…”ってメンタル的に弱くなったりしないんですよね。“絶対できる!”という気分になるんです。「何事にもメンタルが大事」とよく言われますが、そのメンタルのコンディションを維持するためのいちばんの基本はフィジカル・コンディションを高い状態に保つ事がなんじゃないかと今は思っています。

ジョギング  フィジカル・コンディションがメンタルに与えるポジティブな影響を一度実感してしまったら、これはもう楽しいですよ。だって、自分のことなのに自分がコントロールできないというのが人間にとっていちばんのストレスだと思うんですが、フィジカル・コンディションを整えることでそのストレスを取り除くことができたりするんですから。初期の僕は、歌おうと思っても緊張で吐き気がして息ができない、なんていうことがありました。その原因をいま考えてみると、胃腸が弱かったこと、それに対するケアを、咀嚼不足も含め、していなかったこと、そして自分で自分に自信を持てるだけの練習ができていなかったということだと思うんですが、それは“歌手とは、かっこよく言えばアスリート、僕の実感で言えば肉体労働者である”ということに当時は気づいていなかったんですよね。あの時点でも、強い身体を作るということをやっていれば、もうちょっと苦労せずに済んだろうなと思うんです。だから、自分が上がり症だと思う人も、メンタル面の対処ばかり考えないで、身体を強くすることを考えてみるのもいいんじゃないかと思うんですけど…。

 まあ、どっちが先なのかは難しいところですね。強い身体が強い精神を作るのか、あるいは強い身体を作るには強い精神が必要ということなのか。いずれにしても、“強い”という言い方をするとみんなちょっと構えてしまうところがあると思うし、実際のところ僕自身は強いとは思ってないですから、それを考えれば、言い方としては自分が楽しいと思うことのなかに自分の身体を作っていくような要素をみつけられるかどうかがポイント、ということになるでしょうか。みなさんも、身体と精神の関係性について、自分なりの感覚を探ってみてはいかがでしょうか。

 

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