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Vol.68 エネルギー供給の流れをちょっと見直してみると、その向こうに社会全体の仕組みまで見えてくるかも

  • 2011年3月10日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。
 前回は、徳島県上勝町の取り組みを参考にして、なんでも一律に考えるのではなく、地域ごとの規模や環境からできることをやって対処していくという発想の必要性について書きました。正直に言って、真面目にエコの問題に取り組んでいる人のなかにも、なんでも一律の発想で臨み、結果としてある種の思考停止状態になっているように感じられることもあるように思います。ただ、そういうふうに真面目に問題を解決しようとしている人でさえなんでも一律でやろうする背景には、この国の人たちのなかに自立的に物事を考えようとする自立心が芽生えることを警戒している勢力があるのかな、なんていううがったこともちょっと考えてしまいます。
太陽光発電  でも、その一方で、やはり人々は本当の意味で自分たちの生活を自立させることに、無意識にではあっても、向かっているのかもしれません。例えば、この連載のスタッフによると、昨年末に開催された「エコプロダクツ展2010」の目玉展示というか、注目されたトレンドのひとつはHome Energy Management System(HEMS)だったそうです。「スマートハウス構想」などとも呼ばれるようですが、要は自分の家でエネルギーを生み出して、それを自分で管理/運営するシステムを備えた住宅環境を整えるということですね。イメージとしては、太陽光発電システムや、電力会社やガス会社が販売している、家庭用の小規模発電システムおよび蓄電システムをよりハイブリッドに組み合わせたものを考えればいいでしょう。もちろん、こうした流れは新しい商品開発に取り組む企業の努力が生み出したものと言うべきでしょうが、でもその背景に人々の無意識の流れが作用していると考えるのも、そう的外れではないような気がします。
 プリウスが売れた理由は、いわゆるハイブリッド仕様であったことはもちろんなんですが、回生ブレーキであるということも大きかったと僕は考えています。これも、人々が無意識に新しいエネルギーの使い方を選択していた例じゃないかと思うわけです。普通は、自らの目的のために何かの燃料からエネルギーを得るというシステムであるわけですが、回生ブレーキは自分がやっている行為からエネルギーを得るというシステムです。それは、いままで捨てていた熱を回収して、またエネルギーとして使うということですよね。一方、電力会社やガス会社など従来のエネルギー供給企業というのは、大雑把に言えば、「必要なら提供しますので料金をいただきます」というスタンスですよね。で、「これを使えば、もっとエネルギーはつかいますが、より便利になります」というものを商品としてわれわれにどんどん勧めてきました。ところが、エコがより意識されるようになるなかでそういう流れを抑制していきましょうというふうになってきて、とすると、これからは人間の生活サイクルのなかにエネルギーが供給されて最後は熱になって捨てられるという道筋の途中にいくつもエネルギーを回収していくフィードバック・ポイントみたいなものが設けられていく形になっていくと思うんです。そういう意味では、以前見学させていただいた品川のゴミ回収工場でゴミを燃やすシステムを火力発電システムとして使って年間1億円くらい売電しているというのはすでにその流れの中にあるものを先取りしたものと言えると思いますが、こういうふうに人間が人間のためにやっていることの過程で生じるものがまた人間のためになるように設計されたシステムがこれから増えていくだろうと僕は思います。と同時に、そういうシステムが求められ、生み出されていく過程で、人々がいまは気づかないで暮らしている『自分がどれだけのエネルギーを必要としていて、それを得るためにどれだけのコストがかかっていて、それをどういうふうにクリアしているか、それを自分でやろうとするとどうなるのか』というようなことについて、みんながより自覚的になっていけばいいなと思います。
その意味でも、やはり教育ということの重要性を実感することが多いのですが、これについてはまた機会を改めて書いてみたいと思います。

 

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