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Vol.60 僕自身も新しい取り組みを考えています。

  • 2010年11月4日

 

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

種火  前回までの2回にわたって、16年目活動に向かうタイミングでゴスペラーズを長く続けるために僕なりに考えたことをご紹介しましたが、そもそも僕がゴスペラーズを長く続けたいと思っている理由のひとつは“ゴスペラーズは種火である”と思っているということがあります。ゴスペラーズはボーカル・ハーモニーを基本にした音楽をやっているグループであるわけですが、そうしたハーモニー、アカペラあるいは合唱というスタイルは盛り上がる時期もあればそうでもない時期もあるし、時期に関係なく好きな人もいれば否定的に捉える人もいるんだろうと思います。それでも、ゴスペラーズという種火が消えなければ世の中がどういう状況になっても、より多くの皆の中にアカペラやハーモニーが生き残って行くんじゃないかと思うんです。

 じつは少し前から音楽と社会貢献を結びつけるプロジェクトをスタートさせようと考えているんですが、この団体も何かの“種火”として機能するようなものになるのかもしれません。いまは“何を活動のメインにするのか?”とか“どういうロードマップでこれからの作業を進めていくのか?”といったことに詰めている段階で、まだまだこれからなんですけど。

 ただ、ひとつはっきりしているのは、僕がそのプロジェクトの先頭に立って旗を振るということはしません。というか、それは不可能です。なぜかと言えば、僕にはゴスペラーズの活動があって、それが僕のなかではいちばん大事なことなので。加えて、コンスタントにその事柄に取り組める状況にないと旗は振ってはいけないと僕は思ってるんです。僕が思った通りに決めて、それをやっていくことに100%注力できるのであれば、それは明日からでも始めればいいと思ってるし、もし駄目でも僕が責任とればいい話です。それなら、話はすごくシンプルです。でも、このプロジェクトについては、仲間みんなで集まって話し合って、みんなで決めて、みんなでやる、と。ある意味では、敢えて難しい形をとろうとしていると言えるかもしれません。でも、ゴスペラーズの一員としての僕のいまの考え方は前回ご紹介しましたが、それと同じように、メンバーがみんなコミットしてグループの活動を進めていくんだというふうに思ってもらえるといいなと思っているわけです。

 そのなかで、僕の役割というのは“ゴスペラーズの北山がやってるから”ということでつながらないネットワークがつながったり広がったりということがあるわけで、そういう部分で僕を使ってもらえばいいと思っています。日本では何か社会的な活動に取り組む場合に“自分のためにやると言うのは恥ずかしい”というメンタリティがはたらくことも多いですよね。誰かを助けたいと思ってやることでも「オレの考えだ!」という形でやるのはちょっと恥ずかしいっていう。でも、僕はそういうのは全然恥ずかしくないので(笑)、活動がスタートしたら「僕がやりたいことなので、ぜひみなさん協力してください」とアピールしていくつもりです。メンバーのなかには、組織作りやその運営に関して僕なんかよりもずっと意識の高い連中もいっぱいいますから、いろいろ教えてもらいつつ進めることになりますが、そこで得た知識のなかでゴスペラーズにフィットしそうなことがあれば、そっちにフィードバックさせることもあるだろうと思います。

 ところで、こういうプロジェクトを思い立ったひとつの理由として、ソロ活動をやったことは大きかったですね。自分が中心になって組織やプロジェクトを立ち上げるというのはソロでライブをやるのと重なる部分が多いんです。ライブをやるのには、もちろん僕一人だけでやれるはずもなくて事務所はじめいろんな人のサポートがあって実現するわけですが、その結果というのは僕のソロ・ライブですから、やっぱり僕に跳ね返ってくるわけです。そういう経験をして、改めて考えてみると、僕の責任で世の中に何かを問うということがなかったなと思うんです。例えばこれまで僕が書いた曲が多少ヒットしたようなことがあっても、それはあくまでゴスペラーズの土俵でやってることですから。逆に悪い結果が出たとして、それはもちろん僕も受け止めますが、やっぱりそれはゴスペラーズが出した結果ということなんですよね。だから、ソロ活動は僕が個人として何かを問うた初めての出来事だったわけですが、このプロジェクトはその第二弾ということになるでしょうか。このプロジェクトが具体化したら、この連載でもご紹介しますので、ぜひお楽しみに。

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