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Vol.57 「人間って意外と自分のからだをコントロールしてるよ」というお話

  • 2010年9月24日

 

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 前回、僕が食事制限を続けているのは、自分のからだとの対話のひとつの手段なんですという話をしました。じゃあ、その制限の枠にひっかからないものについてはどんなふうに選んでいるのか?というと、それはすごく月並みですが、できるだけからだにいいものを選ぶということになります。もっとも、「からだにいいもの」を選ぶというのも基準が難しいですよね。僕なりの言い方で言えば「からだにいいもの」とは「より自然の力に近いところにあるもの」ということになるでしょうか。言い換えれば、「欲のために濃縮されていないもの」というふうにも言えるかもしれません。

 いわゆる化学調味料の類いというのは、記号化された“おいしい”というイメージ、言い換えればだいたい誰もが“まあ、おいしいね”と感じるおいしさ成分を凝縮したものですよね。だから、それを摂取した人間のからだのデザインということをいちばんに考えてつくられているわけではありません。そういうものがジャンジャン使われた料理を無頓着に食べて過ごしていると、きっと記号化された“おいしい”というイメージに慣らされたからだになってしまうんだろうと思います。
でも、本来“おいしい”とか“まずい”という感覚は、からだが必要としているものを食べたときに“おいしい”と感じるし、からだに良くないものを食べればすぐに“ちょっと嫌だなあ”と感じるといった具合に、自分のからだをいい状態に保つために機能するはずのものです。
ところが、われわれの味覚というものも現代社会の情報の氾濫にさらされていますから、ある場面で“おいしい”と感じても、それは自分のからだがそれを求めているのか、あるいは“おいしい”という記号がプログラムとして組み込まれた食べ物だからなのか、よくわからないというのが実際のところだと思います。特に、ここを押すといつでもどこでも“おいしい”と感じるスイッチみたいなものとしての“おいしい”成分が追求されて、実際にそれに近いようなものが発見されたりもしているから、その結果として生物として人間の機能は低下するか、少なくとも変化してきていて、“環境”としての自分のからだをモニターする感覚が後退しているのは間違いないと思います。

 いわゆる数字のマジック、数字で表されているととりあえず納得してしまうということもありますよね。例えばカロリーの話。“「カロリーが高い」と書いてあるけれど、その「カロリー」って何?”という疑問を投げかける人はほとんどいません。実際、ある食品のカロリー量が1000キロカロリーと書いてあっても、それを体内に取り入れるために体温が上がったり消化するためのコストが高かったりすると、結果としてそれを食べても1000キロカロリー分の熱量を摂取できないということも可能性としてはあるわけです。だから、重要なのは数字で表されている量ではなく、エネルギーになりやすいもの、取り入れやすいものを摂ること、つまり質を考えるということなんですよね。

 さて、カロリーの話になったところで、女性読者にとっては食の話とダイエットはセットになっていると思うので、最後にそれに関するひとつ考え方を紹介しましょう。

メロンパン  あるタレントさんの話で、彼女はメロンパン好きで有名らしいですが、メロンパンは1個だいたい300キロカロリーくらいあります。だから、ダイエットするならそんなものを食べてはいけないわけですが、彼女はどうしても食べたくなる。そういうときにどうするかというと、“オマエは300カロリーしかない”と説得して、それでメロンパンが納得したら食べる。そうすれば太らないというのが彼女の主張です。“オマエはオレを素通りする”と思い込んで食べれば、からだはそういうふうに対処するということなんでしょう。僕は、この主張にはかなり妥当性があると思っています。
彼女は、“メロンパンが好きだから食べたい”という大脳の欲に従って食べるのであって、それをからだの中に摂り入れられるかどうかは問題じゃないんですよね。こういう考え方のほうがむしろ科学的だと思うし、少なくとも十分に示唆的だと思います。
同じような話で、太る人は“これ食べると太るかなあ”と思いながら食べるし、太らない人は“オレ、何食べても太らないんだよね”と思いながら食べるというデータもあるようです。つまり、「人間って意外と自分のからだをコントロールしてるよ」ということなんだろうと思うんです。そのことをもっと自覚すれば、病は気からの話じゃないですが、ダイエットも含め、からだに関するいろんな問題がクリアになってくるんじゃないかと思います。


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